時間を操れる女の子に、操られる話

第0話

☆

　高校の教科書だったか、中学の教科書だったか忘れてしまったけれども、、、

　とにかく。なにかで読んだことがある、一つの物語があった。

　それは町一番の美しい女性――たしか名前はソフィアだったはずだ――が交通事故に逢い、醜い姿に変貌してしまうという物語だった。

　ソフィアは初めこそ自分の容姿に絶望をしてしまい、生きる気力を失ってしまう。しかしそこから、様々な人との出会いを通して希望を見出し、再び前へ向かって歩き出す……といった話だ。

　そんな＂様々な人＂の中の一人に、エイブラハムと名乗るキリスト教徒がいた。彼が心を病んでしまったソフィアに対して、ある言葉を捧げた。

「5秒で500秒悩みなさい。決して時の流れに惑わされてはなりません」

　結局ソフィアはその言葉を「早く元気になって」という意味で解釈をしていた。物語はそのようにして進んでいった。

　――読者である僕だけがあの言葉の意味を解釈できないまま取り残されたのだった。