僕の処女が勃起したら御嬢様が死ぬ
🔰ドロミーズ☆魚住
メス豚先輩は変態だけど百合豚じゃない
「結婚しましょう。妊娠してくれませんか、
4月の春風が桜の花びらをはらはらと躍らせて、目の前に佇む美少女の黒髪にスカートに、彼女が片手で持っている女性の下着であるブラジャーを揺らす。
鮮やかな薄桃色の桜の葉の隙間から木漏れ日が差し、歴史と伝統ある
「一目惚れした。大好き。お姉様の銀髪紅眼を見るだけで私の女性器がそれはもうグチュグチュのグチュ! 大変にエッチね貴女。いいわ、すっごくイイ! まるで私を興奮させる為に産まれてきたかのようなそんな貴女の見た目がすっごく性癖にストライク! そのまま妊娠してもいいのよ? ねぇ妊娠しなさい? いいからさっさと妊娠して? さぁさぁ私の子供を孕めオラ! そしてお姉様の顔面にそっくりな女の子を産んで近親相姦させて3Pするわよ、唯お姉様! ███しましょ! ███!」
ここは百合園女学園。
日本の近代化に合わせて、女性にも男性相応の教養を学ぶ必要があるという理念に基づかれて、大正時代に創立された歴史のある私立の女子校であり、世間で言うところのお嬢様学校であり、変態養成機関では無い。
そんな百合園女学園の敷地内に女子寮は存在し、寮を利用できる人間も訪問する人間もこの学園に所属するお嬢様であることが多い……とはいえ、基本的に形骸化してしまったこの女子寮を利用する人間はとても少ない筈なのだけれども。
「フ。あらやだ沈黙? そんな……! 私からの愛の告白がドチャクソぶっ刺さった余りに言葉が出ないのね! さながら女性器にぶっ刺さる男性器の如く! つまりは肯定! これで! 唯お姉様は! 私の! ブヒィ! あらやだ嬉しすぎて鼻から血を流す豚になってしまったブヒね。私をメス豚にした責任、取って貰うブヒよ」
濡れた
透き通るような白い肌に、遠目から見ても分かるぐらいの大きな
モデルのように細身ですらりと伸びた細い手足に、細く整った鼻梁と、芸術品を思わせる顔の輪郭線。
上品さと初々しさを連想させ、宙を舞う桜の花弁よりも鮮やかな薄い桃色の唇。
色白なことも相まって、いかにもな深窓の令嬢といった雰囲気。
鈴を鳴らしたかのように可憐で美麗極まりない声。
そして、どんな嘘すらも見透かされそうになってしまいそうなほどに深く、夜を思わせるような深い色をした黒色の瞳。
女性であれば誰しもが嫉妬するような、男性であれば誰しもを焚きつけるような、そんな究極の美貌を携えた相手が僕の目の前にいて、どんな両性でもドン引きするような下ネタ発言を機関銃で乱射するかのように繰り返していた。
驚くべき事に顔と身体だけは滅茶苦茶にいいのだ、この鼻血ドバドバ出す女。
「お願い……! 少しでもいいから私の告白に反応して……! でないと……! 私……! 放置プレイされた挙句に興奮して死んじゃうわよ⁉ ありがとうございますッ! あっ、唯お姉様の銀髪が地面に落ちた! いけない! 地面に落ちる前に舐めないと!」
「…………うわぁ」
「フ。日本に3秒ルールがあって良かった。こんな事をしても合法的に許される日本人に産まれてこれて幸せ。海外にいると日本人には変態が多いとよく耳にするけれど頷ける話ね。だからそんな変態を見るかのような目で私を見ないで唯お姉様。興奮してきちゃうじゃない」
「……あの、その……どちら様ですか……?」
因みに名前は知らない。
知る筈も無かったし、知りたいとも思わなかったし、こんな知り合いがいて欲しくないとも思った。
何せ、私は今日初めてこの女子学園にやってきて、この女子寮を利用する寮生としてこの場にやってきた挙句の果てに、地面に落ちた私の髪を四つん這いになってペロペロ舐めるような変態お嬢様に求愛されていたのだから。
何なら、30秒ぐらい目の前の美少女の奇行で頭がフリーズしていた。
「え? 私よ私。……嘘。もしかして、忘れた、の?」
「そんなオレオレ詐欺みたいに言われても、こんな知り合い、いて欲しくないんですけど」
「フ。残念。唯お姉様が私という悪人に騙されてくれなくて実に残念。今から騙されてもいいのよ? 善人でしょ? なら騙されてAV女優になりましょう?」
因みに初対面の変態は『私、何も変態行為とかしてませんが?』と言わんばかりの余裕たっぷりな不敵な笑みを浮かべながら鼻血をこぼし、四つん這いの状態から両足で優雅に立ってみせる。
遠目から見れば彼女は大変に美しい女性ではあるのだけれども、中身がちょっとアレだった。
「フ。という訳で、改めて自己紹介。私の名前は
「その自己紹介の仕方自体が間違いそのものだと私は思うのですが」
「フ。自己紹介に正解なんてものは無い。という訳で早速
話が通じない。
いや、本当に話が通じない。
何だろう。
この人は間違いなく愉快な人なのだろうけれど、話をしているだけでもごっそりと体力を奪っていく類の愉快な変人であり、遠目から眺めるべき危険人物であった。
例えるのであれば、そう。
レールから外れたトロッコに外付けされたロケットを取り付けて勝手に大暴走をしているような、そういう感じの人だった。
というか、何でこの人は自分の下の名前を知っているのか……そう考えて、この学園に所属する人間であるのならば、それも当然の事かと思い、色々と諦める。
「フ。どうしたの理事長先生様? 体調不良? それは大変。ならこうして悠長に話せないわね。由々しき事態だから今すぐに性行為しましょう」
「……理事長代理です。それに私はまだ高等部2年生ですからそんな呼称で呼ばなくて結構ですよ」
「フ。あらやだ私の方が学年が上なのね。素敵ね。今日あった入学式で堂々と新入生歓迎の言葉を送った素敵な女性が年下ってだけで性的興奮を抑えられない私がいる。そういう訳で性行為しましょう?」
「私は今日からお世話になる学園の先輩にこんなのがいるって思うだけでもため息が抑えられませんよ……そういう訳でお姉様呼びもしなくて結構です」
「フ。フフ。フフフのフ。無の理。諦めて性行為されなさい」
「高校3年ならもっとお淑やかに振る舞ってくださいよ。と言いますか、どうして私の事をお姉様と呼ぶのでしょうか? 話を聞く限り、私は先輩よりも年下の筈ですけれど」
「フ。私の大和魂が貴女をお姉様と呼べと叫んでるの。つまりは直感だから理由は特にない。強いて言うのであれば虐められたいし、虐めたいと思っている程度。そういう素敵な関係になれると思うの、私たち。そういう訳で性行為しましょうか」
「なれると思いませんね」
「フ? マのジ? 噓でしょ、肉体関係も望んでもいい……ってコト⁉
「望まないでくれませんかね」
どうやら彼女は本能に従って生きているタイプの人間であらせられるようであるらしく、彼女にとってのお姉様とはどうにも概念的な存在であるらしい。
良く言えば感情的、悪く言えば動物的。
要するに彼女は典型的な変態であった。
「……それで? 下冷泉先輩は私の事が性的に好きなんですか?」
「フ。それはもう大好き。好きすぎて豚になっちゃうぐらいに大好きだし、貴女の為なら世界の全てを敵に回してもいいぐらい大好き。性行為がしたいぐらい滅茶苦茶に大大大、大好き」
「見て分かる通り、私は女ですけど」
「フ。恋の障害と男性器に女性器は大きければ大きいほど
「……はぁ……」
入学早々、私は何だってこんな目に遭ってしまうのだろうかと自分を呪いそうになる。
普通の人間であるのであれば、目の前でセクハラ発言を繰り返す彼女を『意味が分からない。頭がおかしいのか。気持ち悪いよこのメス豚』と貶す事が出来るのだろうけれど、生憎と私は普通の人間ではなかった。
何故なら、私――いいや僕、
男なのに、この百合園女学園に、女性として偽って編入しただけに留まらず、ここ百合園女学園の理事長代理になってしまったのだ。
何なら目の前にいる変態お嬢様よりもヤバい変態な事をしでかしてしまっているんだよね、僕。
つい先日まで、僕は普通の男子として何とか生きてきた筈だったのに、本当にどうしてこんな事になってしまったのか。
「フ。まるで目の前にいきなり変態が現れて困ったかのような表情ね。とてもエッチで
再び四つん這いになっては荒い息を何度も吐き出す変態メス豚お嬢様からの求愛行動の全てを無視しつつ、僕は現実逃避をするように、過去の記憶を思い出す事にした――。
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