霊能力者への道 血の儀式を決意する武術家

第28話 後日談1

　事件からもう一週間が経ちました。

　私は不思議な夢を見ました。

　夢の私には、光源ひとつないが、不思議と自分の体が見え、確かに平坦な床に立っているような、純粋な暗闇に包まれた空間にいたのです。遠くを見渡しても、地平線は見えないし、暗闇の空間と床はまるで融合しているかのようでした。

　変わっていることに、私の右手側の五メートル先に、建物とは繋がっていないドアが立っていました。木製で深茶色のドア板には、銀灰色のL字型のドアノブが付いていました。どこかの民家の玄関ドアのような、ありふれたものでした。

　このドア板は知っているのですが、なぜここに存在するのか不思議です。でも、ここは夢の世界だから、納得しました。

　そうです。私は自分が夢を见ていることを知っていました。これがいわゆる「清醒夢」（セイコウム）です。

　そして、私はドアを押して中に入りました。

　ドアの向こうには暗闇の空間ではなく、テレビとソファーがあるリビングルームが広がっていました。幼い頃の私だとわかり、かつての私の姿をした子供がソファーに座ってテレビ番組を観ていました。同じ「私」ですが、ここでは「彼」と呼ぶことにします。彼の容姿はさほど重要ではありませんが、黒い短髪、黒い瞳、幼気な顔立ちで、多少可愛らしいと言えるでしょうが、真剣な顔をしているので、それほど可愛らしいとは言えませんでした。

　テレビにはアニメが流れており、熱血的な戦闘モノで、主人公たちが地球を破壊しようとする悪者組織を阻止するために冒険を続けています。前世に見ていたアニメですが、あまり見なかったので、どういう結末になったのかは分かりません。

　子供の隣に座り、「気に入っているの？」と尋ねました。

「うん」と、幼い声で答えます。

「ヒーローになりたい？」

「はい」

「アニメのよう？」

「いいえ」

「なぜ？」

　アニメは、自信に満ちた悪者に対して、主人公が怒鸣り散らしているシーンを映していました。彼はそのシーンを指さして、「马鹿みたいだ」と言いました。

　私も見た後、頷きました。「確かに」

「私は悪者を嫌いだ。悪事をしている人を見ると、倒したい」と彼は言いました。「しかし、多くの物語では、ヒーローは常に怒って、時には涙を流し、時には揺れる。一方、悪者は常に自信に満ち、笑顔で計画を進めている。そんなヒーローは、どう考えても理不尽だと思う？」

「そうだね」と言いました。

「だから、ヒーローになりたいが、そんな馬鹿なヒーローになりたくない」と彼は言いました。「笑う必要はなく、自信と定まることが必要です。感情的になるべきではないし、自分の力で行動すべきだ。時には自分に厳しくて、犠牲を承知で行動しなければならない」と。

「見識があるな」

「時には自分に厳しくて、犠牲を承知で行動しなければならない」と。

「それは同意できない」

　そう言われると、彼は突然私を睨み、「ばか！」と叫び、ソファーから飛び降り、ドアをくぐって行きました。

　私もその後について行きましたが、今回も暗闇の空間に戻ることはなく、かつての私の中学時代の教室に来ました。生徒たちが整然と座って、講師が講義を行っていました。

　そして、彼は中学生の姿に変わって、最後の列に座って、首を下げてノートを取っているかのように見せかけています。

　私は彼の後ろに行き、首を下げて見ると、彼はノートをとっていなかったのです。彼は個人の小説を書いていました。そう、中学生の頃の私は、授業を聞くよりも物語に夢中になり、小説を書く考えを持ち始めましたが、どこかに投稿する場所が見つからず、自分自身のために書きました。

　彼は小説のページに挿絵を描いていました。主人公のイメージです。前世の私は、主人公を自分の小説での投影として書いていたと思い、これは幻想上の自分のイメージです。

　イラストの人物は黒いマントを着て、短い鳥のくちばしのようなマスクをかけて、右手には錆びた大剣を持ち、疫病に満ちた中世の絵画から出てきたような変わった医者であり、また変わった格好をした連続殺人者であり、誰かを殺そうとしているか、あるいは人を殺んでから戻っている途中です。

　私はそれを眺めながら、「そうだね。数年前の私が、短い鳥のくちばしのようなマスクを選ぶ理由は、前世にそんな自分を幻想していたからだ。そして、実際に黒いマントを着たことがあったが、恥ずかしさのあまり、黒いマントを隠した。どこに隠したのだろう？」

「ヒーローになりたいと言っていたが、これはヒーローの姿ではない」と私は言いました。

「こんな格好をすると、悪者も怖がる。だから、これの方がいい」と彼は答えます。

「あなた自身が好きだろう」と私は言いました。

　彼は顔を赤くしてうなずきました。私は続けました。「ただし、小説を書くことや絵を描くことだけでは、ヒーローにはなれません。」

「勉強を頑張って、トレーニングを頑張って、それでいいの？」と彼は反論しました。

「超自然の力を期待するわけではない」と私は言いました。

　彼はまた首を下げて、声を低くしました。「でも、本当に存在するかもしれない」と。

「それで、授業の最後の鐘が鳴り、教師が教室を出て、生徒たちがゆっくりと席を立って行きました。彼も首を下げて立ち上がり、教室を出ました。

　私も彼の後について教室を出ようとしたが、廊下には来ずに、以前私が働いていた出版社の編集部に来ました。複数のデスクが並ぶオフィススペースで、彼は青年として、疲れて草稿を書いていました。合格の原稿が少ないため、編集者が直接原稿を書く必要があることがあります。

　私は彼のそばに行き、「超自然の力は見つかったか？」と尋ねました。

「そんなものがどこにある。すべてが嘘だ」と彼は不機嫌そうに言いましたが、長い間経つと、「でも、あったらいいな」と付け加えました。

「こんなに大きくても、そんなことを言うの？まだ結婚もしていないし、24歳で老けたとは言えない」と言いました。

「まだ24歳で、平凡に暮らすのは悔しい」と彼は言いました。「私はこの世界が実はとても素晴らしいと知っており、そして、その素晴らしい世界に当然のように住んでいる人々がいることも知っています。そして、その人々は非常に少なく、なぜそれが私になれないか？」と彼は私を見つめました。

　彼は立ち上がり、オフィススペースを出ました。

　私は彼の後について地下駐車場に来ましたが、さらに成長した姿ではなく、24歳の姿のまま、何発か銃弾を受けて地面に倒れていました。遠くで犯罪組織が慌てて撤退しており、駐車場の外から警笛が聞こえてきました。ここは私の前世の最期のシーンで、私は犯罪組織の取引現場を目撃しましたが、逃げずに警察に通報しました。すぐに身を引く代わりに、何かできるかもしれないと思い、悲惨な結末を迎えました。

　私は息の絶える彼のそばに行き、しゃがみ込んだ。「不是说好要‘量力而行’吗？」と言いました。

　彼は渋滞をかけて目を動かし、私の方に向けましたが、焦点は遠くにあるかのようです。彼は尋ねました。「私は死ぬの？」

「死ぬ」と言いました。

「死んだら、来世はあるの？」

「分からない」と言いました。「しかし、新しい世界に行く可能性がある」と。

「新しい世界には、物語のような不思議な力があるの？」

「ある」と言いました。

「私も持てるの？」

「できない」と言いました。

「それは不公平すぎる」と彼は悔しそうに言いました、続いて咳き込みました。地面には血の滴がまた増えました。

「この世界は不公平だ」と私は言いました。「しかし、私はまだ努力できる」と私は彼を見て言いました。

「努力……」彼は複雑な笑みを浮かべ、その後言葉を失いました。

　警察官が地下駐車場に駆け込み、犯罪者と交戦しました。すぐに犯罪者たちは倒れ、警察官が現場を片付け、一人がヘルメットを脱ぎ、若い徐盛星のような顔を現しました。

　これは夢の中の架空のシーンでしょう。私が死ぬ直前に、警察官と犯罪者たちの戦いを見たわけではありませんし、徐盛星のような警察官を見たこともありません。心理学の教授がこのような夢を見ると、どう解釈するか分かりません。

　私は考えながら、彼がしゃがみ込んで、若い徐盛星のような男性がため息をつく表情を浮かべ、私の死んだ目を閉じる手を伸ばしました。

　目が閉じられると、周りの景色は墨を洗ったように薄れて、最初の暗闇の空間に戻りました。

　しかし、目覚めることはなく、暗闇の空間を歩き回りました。出口があるかどうか探しましたが、いつの間にか、ジャズミュージックが流れているバーに来てしまいました。「暗闇の空間」と「ジャズのバー」の間の過程がはっきりしていませんでしたが、夢ですから、受け入れます。周りを見渡して「私」は見つけられませんでしたが、バーカウンター前に別の見覚えのある姿を見つけました。

　それは私の元の相棒です。私は思い出しました。ここは以前何度か彼と来たバーです。

　私は彼の右側に座り、彼は顎を支えて左を向いていて、顔が見えませんでしたが、私に向かって話していました。「今回は本当に大きな仕事をした！思ってもみて、一级霊能力者まで殺すことができた」と喜んで言いました。

　そう言われると、私の記憶も蘇ります。これはまた私の記憶をもとにした夢のシーンです。以前のように返答しました。「小さなものです。」

「私が情報支援をして、あなたは前線に向かってください。私たちは天作の相棒だとは思わない？」と彼は笑いました。

「そうだね」と言いました。

「でも、私はあなたよりもはるかに劣ります。戦うこともできず、あなたのように精神攻撃にも耐性があります。」彼はため息をつき、また何かを思い出したように言いました。「もし、私たちが互いに殺し合う必要が生じた場合、どうすればよいでしょうか？」

「例えば？」

　彼は考えました。「たとえば、私たちの中の誰かの心が操作された場合...'

「その状況はあなただけだろう」と私は言いました。

「では、別の仮定にしましょう。私たちの中の誰かの家族が拉致され、陰謀家が私たちに互いに殺し合うしかない状況を作り出して、あなたは状況を解決する方法を見つけることができない。どうしますか？」

「互いに殺し合う」と断じて言いました。

「そんなに決断力がある？」と彼は驚きました。

「そんなに決断力があるべきです。迷いや情熱的でいることなく、チャンスがあるときに相手の首を切るべきです。そして生き残った者が、死んだ者の仇を取るべきです。」

「とにかく私のあなたを殺した状況を考えると、あなたは私を恨まないの？」と彼は疑って尋ねました。

「時には自分に厳しくて、犠牲を承知で行動しなければならない」と私は言いました。

　彼は考えさせられるように酒を飲み始めました。

　その時、別の声が入り、「冷酷な男ですね！」と言いました。

　振り向くと、声をかけたのは黒髪で、精緻な顔をした少女で、ジャズのバーの入り口に寄りかかって笑って挨拶をしました。「こんにちは、無面の人」

「こんにちは、無面の人」と私も言いました。この夢の登場人物を観察しました。彼女はかつて「アダム」と呼ばれ、また「クロエ・ディカプリオ」と呼ばれていました。そして、彼女は私よりも「無面の人」という名前の本来の意味にふさわしい存在でした。私は彼女を殺したいと考えていますが、彼女にも少しの敬意を抱いています。従って、彼女に名前を名乗らせる意欲がない彼女に自分のニックネームを名づけました。

　今考えると、これは非常に自己満足的な行為だと分かります。もし私が他の誰かであれば、私がそうするのを見て、「あなたは自分がどんな立派な役割を果たしていると思っているのですか？そんなに自己愛想よく、恥ずかしいとは思いませんか？」と思うかもしれません。

「私に「無面の人」と呼ばないでください」と彼女は言いました。「それはあなたのニックネームであり、厚かましさでそれを占めようとは思いません。しかし、私はこのニックネームが本当に好きですから、またチャンスがあれば、あなたを殺してそのニックネームを奪い取る方法を見つけます。」

「あなたは自分自身が死んでいないかのように言っています」と私は言いました。

「しかし、あなたも私を死体で見つけられなかったのではありませんか？」と彼女は微笑んで言いました。

　彼女の言う通りです。

　当時の彼女は多くの幻影を持っていたように見えて、勝利を手に入れそうでしたが、実際には私に対して非常に高く評価していました。私が追いかけてくる瞬間に、自分が私に攻撃されるのは避けられないと気づき、「活死人の符印」を発動しました。そして、会話を通じて符印が有効になるまでの時間を稼ぎました。そのため、私が彼女に当てた後も、すぐに死なずに、活死人の状態で入り口の幻影と位置を交換し、ドアを開けて逃げ出しました。

　一度、霊能を遮断する部屋を出ると、私は彼女を追いつけなくなりますし、その後も彼女の足跡を見つけられませんでした。分身の証を持つ彼女は、どこかに隠れても簡単にできます。

　しかし、それは決して彼女が命拾いできたという意味ではありません。

　活死人の符印は彼女の致命傷を治療することはできませんが、せいぜい彼女の命を10分延ばすだけです。10分経過後、彼女はすぐに死ぬでしょう。私が彼女の死体を見つけられないのは、彼女が深く隠れたからです。死期を知った猫が見えない場所に行って一人で死ぬのと同じです。彼女が死ぬ確率が絶対的に優位です。

「しかし、私の死体を見つけられない限り、あなたは完全に安心できない」と彼女は私の心の声を言いました。

　私はこの問題を置いて、「では、私にはどう呼びますか？」と尋ねました。

「とりあえず「無面の影」と呼んでくれる？」と彼女は言いました。「「人」になれなくなれば、「影」でなければならない。

「わかりました、無面の影」と私は言いました。「生きている本当のあなたには聞こえないかもしれないが、私はあなたに対して、また自分自身に対して言うべきです。もしあなたまだ生きているなら、私に知られるべきではありません。そうでない場合は、あなたは死ぬことになる」と。

「私がクロエ・ディカプリオを殺し、それ以前に禁忌の知識を井上仁太に渡し、大量の人体実験を行わせてしまったことを理解していますか？」と彼女は反論しました。

「はい」と私は言いました。「あなたはヒーローコンプレックスがあると理解できます。あなたはあなたのようなクズを殺すことで、自分を道徳的な高潔さに置くことができ、精神的な快感を得ることができます。」

「そんなに自分を語るなら、私はあなたを責めることはできません」と彼女は言葉を失いながら私を見て言いました。「でも、あなたも心の準備をしておく必要があります。あなたは最後の

　瞬間に私にそんなことをしたので、私は決してあなたを許さない」と。

　突然、そのシーンが揺れ始めました。

　彼女は頭を上げて見て、私に笑って、「そろそろ目覚める時間です。またいつか会いましょう」と言いました。

　そう言って、彼女は振り向いて、去ろうとする姿をしました。私も自分の五感がこのシーンから迅速に引き剥がされ、ここは私にとって、次第に現実から幻想に変わり、すべてのものが薄れていく感じがしました。

　最後に、私は彼女に一つ尋ねました。

「平凡に暮らすことにそんなに悔しいの？」

　無面の影は振り返って、私を見てから頷いて笑いました。「もちろんです。」

　目覚めると、仕事用の携帯電話の着信音が耳元で騒いでいました。

　私はベッドで体を翻し、携帯電話を取り、着信表示を見て、見知らぬ番号でした。

　通話中につながると、「誰ですか？」と尋ねました。

「私です」と、長谷川、または井上直人という声が聞こえました。