曇の終わりと晴れの始まり

@hikawa_soyo

曇の終わりと晴れの始まり (上)

 「ちょっとこれ どういうこと?」

私 立石陽菜はリビングにて母親にある一枚の写真を見せられている。

 「説明してくれるかしら?」

向かい合って座ったテーブルの中央に置かれたその写真は私が手をつないで歩いている写真だった。

女の子と手をつないでいる写真。

こうなることは最初から分かっていたのかもしれない。私の母親は「こういう事」に対して理解はない。そして自分の娘をなんでも言う通りにしないと気が済まない性分なのだ。そんな人が自分の娘が同性と付き合っているとなればこういう場を設けるのは自然である。

 「何か問題ある?」

私は制服のポケットに入れていたスマホを取り出し何も気にしていないように装い質問に答えた。昔から口答えすれば怒髪天をついたような怒りをぶつけてきた。正直怖い。しかし、私にも味方がいる。もう私も高校生だ。この家庭だけが居場所じゃないのはわかっている。だから大丈夫と自分に言い聞かせながら母親との対話に臨んだ。

 「問題?問題だらけでしょう!!気持ち悪い」

 「それはあなたの感情でしょ?私たち誰にも迷惑かけてないでしょ」

どうやらこれが少し効いたようで間ができた。

 「学校いかなきゃいけない時間だから  それじゃあ」

私はすぐに準備をしてリビングを後にする

 「待ちなさい!まだ話は終わっていないわ!!」

 「話すことなんて  何もない」

私ははっきりと言い残し、自宅を後にした。


 私が通う高校には徒歩30分程度で到着する。いつもの通学路。新鮮味がない故に私の頭の中は思考が永遠と巡る時間になる。

そもそも大事な話と言ってきたのが学校に行く直前の時間。比較的時間の取れる帰宅後ではなく、朝の時間だった。母親は夜は自分の好きなドラマを見るのに忙しくこの話は後回しになったのだ。この優先順位の立て方で彼女の中での私の存在がどれほどのものが簡単に測れる。結局母親にとって私はその程度なのだ。

もうこんなこと考えたくない。考えたくないがずっと頭をぐるぐる回って離れない。

誰か助けてほしい。誰か


 「陽菜~」

いつもの見慣れた横断歩道の先から声が聞こえた。どうやら誰かが私を呼んだらしい

よく見るといつも見慣れているが特別なものが目に入った。

 「!凛!!」

間違いない。凛だ。彼女だ。

私は今まで考えていたことなどすべて吹き飛び、今私たちを遮っているこの赤信号が早く青信号に変わってほしいことしか考えなくなっていた。

青になった瞬間私は彼女の元へ駆け出した。

 「陽菜 一緒にいこ!」

そう言って少し茶色がかったボブの髪を揺らしながら私に微笑みかける彼女は私がこれまで見てきた誰よりも美しかった。私は彼女に会うとそれだけで胸がいっぱいになるのだ。


 私 立石陽菜は青木凛を付き合っている。

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