第35話 「今、幸せですか?」

「……んん! それで、僕は男どもを見返そうと必死になり、そこら辺の奴らよりも成績が良く、高等教育も次席で卒業したんだ」

「おお……それで、商会に?」

「ああ、だがそこまでの道も長くてな……僕は次席で卒業したというのに就職が決まらなかったんだ、僕より成績が下の連中は皆就職が決まっていたり、貴族の奴の場合は既に家の仕事を継ぎ始めている中でな……」

「それは……女性だからですか?」

「あぁそうさ、まだまだこの国での女の地位は低い、僕は父親の商会を手伝いながら、就職先を探し続けていた……そんな時に訪問したピクシス商会で、ヴェラと出会ったんだ」

「ヴェラさんとですか?」

「あぁ、商会に入るや否や『かいちょーとふくかいちょーは不在なので私が面接しますね!』とか言って、僕を迎え入れてくれたんだ、こいつは本当にいい加減な奴でな、商会の面接なのに好きな食べ物やら趣味やら……だが、その時のヴェラったら仕草がいちいちかわいくてな! いやぁ、思い出すなぁ……背が低いながらも自分よりも高い椅子に座るところとか、受け答えするたびに笑顔になったりとか……」

「あ、あの……」


 ポラリスは饒舌になり、嬉々として当時の事を振り返った。

 今まで見たことのないポラリスの姿に、レプスは困惑を隠せなかった……。


「……とまぁそんなこんなで、僕の面接の内容は会長と副会長にも知れわたり……2人と接見した時に『この子なら大丈夫だろう』という会長の判断で、僕は商会に入ることができたんだ、それで、なんやかんやあって、今は現場を指揮している」

「おお……かっこいいですね!」

「か、かっこ……ま、まぁ! ここまで来るのに結構苦労したからな! ……ほら! もう着いたぞ!」


 時間はあっという間、2人は商会の寮に到着していた。


「ヴェラ! 大丈夫か!?」

「ん~……ポーちゃん? ここどこ……?」

「宿舎の前だ!」

「しゅくしゃー……?」

「あぁ、今から部屋に運ぶからな! レプス、来い!」


 ポラリスはヴェラを部屋まで運び、ヴェラをベッドに寝かせた。


「さ、僕ももう疲れた……休んだら商会へ戻るぞ」

「はい! ……あの、ポーちゃんさん」

「……なんだ?」

「その……ポーちゃんさんは今、幸せですか?」

「……」


 今、幸せか、一見すると哲学的な内容だった。

 しかし、ポラリスは、自信満々の表情で、口を開いた。


「……当然だ」

「……ですよね! すみません、変な質問して」

「……全くだ」


 ……2人は笑い合い、その場は春の陽気のように暖かくなった。


「……じゃ、僕は戻るからな……おやすみ」

「はい! おやすみなさい!」


 ……レプスは、ポラリスを見送った

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