第34話 北極星の過去
……街を出たポラリスとレプスは、その街の惨状を見ながら、宿舎へと向かっていた。
工作機械を人間が操作し、被害にあった建物たちを直していた。
「……すごいですね、もう復興がここまで……」
「……ま、僕たちの技術があれば、このくらいさ」
「技術……ですか」
……レプスは、街中でせわしなく動く機械を見て、ふと気になったことをポラリスに聞いた。
「あの……ポーちゃんさん」
「……なんだ?」
「その……答え辛かったら答えなくてもいいのですが……ポーちゃんさんは、何故機械に興味を?」
「……」
レプスの気になった事、それは、ポラリスに関することだった。
作業員の中で、女性はポラリス1人だけ、しかも現場の指揮も担当している。
ポラリスの指示は的確で、作業員たちも喜んで指示を聞き、行動を起こしていた……傍目でそれを見ていたレプスは、疑問に思っていた。
レプスにとっては素朴な疑問だったのだが……彼女の質問に、ポラリスは顔を顰め、黙ってしまった。
その様子を見たレプスは慌てて訂正をした。
「あ、あの! べ、別に答えたくないのであれば……」
「……いや、少し嫌なことを思い出しただけだ」
「……嫌なこと……ですか」
「……少し長くなるぞ」
ポラリスは息を整え、語りだした。
「僕の家はそこそこ大きな商会だった、それこそ色んなところで商売を展開させていたんだ……恐らく、その辺の下級貴族よりかは稼いでいたな」
「へー……」
「僕が生まれたころにはもう母親は亡くなっていた……父親は商会の経営で忙しくて、代わりに10歳も年の離れた兄が面倒を見てくれた……兄は魔法機械の技術学校を卒業していてな、自然と僕も機械に興味を持ち出して、気が付いていた時には、僕の周りには機械しかなかったんだ……そんなんだから、初等学校の頃は、色んな奴らからいじめられたんだ」
「まぁ……それは、なんと言えばいいのか……」
「同情なら不要だ……もう終わったことだしな」
レプスは顔を曇らせるも、ポラリスの表情は、どこか清々しかった。
「この国じゃ、女は10代で嫁ぎに行くのが普通だ、当然僕もそうだろうと思ったのだが……初等学校の教師が『お前は成績優秀だから高等教育に進め』と僕を推薦してくれた」
「す、すごいじゃないですか!」
「まぁな、馬鹿にしている奴らを見返そうと必死だったからな……だが、問題はまだ続いた……高等教育に進む女なんて数人……尚且つ魔法科学が得意な奴なんて僕しかいなかった……周りの男は、僕を白い目で見ていたよ」
「……」
この国において、女が高等教育に行くというのは、すなわち「期待されていない」と同じだった。
しかし、ポラリスの父親は、喜んで彼女を高等教育の進めた……教育を受けることで、将来的に一人で商売ができるかもしれないと考えていたからだった。
「だから僕は、周りに馴染もうと……兄を参考にして、髪を短くしたり、男物の服を着るようにしたのさ、最初は少し恥ずかしかったが、慣れてしまってな……今もそのままさ」
「なるほど……だからポーちゃんさんはそんなにかっこいいのですね!」
「か、かっこ……当然だ! ぼ、僕は……か、かっこ……」
レプスの突然の誉め言葉に、ポラリスの顔は真っ赤になるも……必死で恥ずかしさを抑え、話を続けた。
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