魔王様は病気です!
田中健太
第1話 My Master, You Fool !
「皆さん集まりましたね。それでは、魔王軍最高指導会議をはじめます」
魔王城の地下深くに位置する、日光など遠く届かない部屋に集められた十二人の魔王軍幹部たち。
円卓に並べられた十三の椅子に、それぞれが座っている。
「おい、待て」
魔王軍幹部の一人である『
「魔王様はどこだ」
確かに
「どーせ、いつもみたいに自分の部屋にいるんでしょ?この百年、会議にすら出てないじゃん」
調子良く返答したのは、椅子の上であぐらをかいている美少女、『
しかし、その答えに
「そういうことを聞いているのではない!
「さあ?魔王様のことだからなにか考えがあるんじゃない?」
ウールはレオニダスに対してそっけない
「それだけ理由を知りたいなら、自分で魔王様に聞いたらいいじゃん。『どうして百年間も引きこもりニートしてるんですか~?』ってさ」
だが、それはできるはずのない
『魔王の部屋は誰であっても入ることを
魔王がそう言って百年がたった。
魔物は飲まず食わずでも千年以上は生きることができるため、部屋から出ずに百年過ごすことくらいは
「魔王軍は人類の恐怖そのものだったはずではないか!なのに、この百年間で魔王軍は弱体化してしまった!魔王様がいなくなってからというもの……」
「それはぁ、あなたが弱いだけなんじゃないの?『獣人の王』さん?」
ウールがレオニダスを逆なでするように横から口を
――ギィ……
張り詰めた空気の中、不意に
ふと音の正体を探ると、部屋の
魔王軍幹部以外にこの扉を開くことができるものは、ただ一人。つまり――
「――魔王様の入室です」
突然の明るさに目を細めるレオニダス。
目を慣らし、扉の外を見る。
「――諸君、待たせたな」
そこには、全身を黒い
「――
少年は
「――さて、初めようか。終末への
「いや、誰だ貴様」
レオニダスは、たまらずに扉をしめた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、どういうわけか説明してもらいますよ。魔王様」
なんとか場を落ち着かせ、『魔王』を
「
「別にいいだろ!かっこいいじゃん、眼帯!」
しかし、眼帯だけに限った話ではない。真っ黒の装束も、右腕に巻いた眼帯も、どれも百年前の魔王では考えられないほどイタい。
「ま、別にいいんじゃないですか?百年前の魔王様って、使えない部下は皆殺しだし、勇者が来た
ウールがまた適当なことを言ってケラケラ笑っている。
「この百年間、何をしていたんです?見た感じ、百年間で魔王様が弱くなっちゃったように感じたんですけど」
魔王は調子を取り戻したように右腕に巻かれた包帯を左手で抑え、眼帯をしていない右目をギラリと
「――よく聞いてくれた。まず、右手に特別な魔力を込めて
「……それを聞けて、安心しましたよ」
ここまで
同時に、魔王の椅子にこっそり
「……!!」
魔王は必死に体を動かそうとするが、体が思うように動かない。
「……俺に何をした」
「私があなたにしたことは、簡単な
魔王は何が起きているのかわからないまま、座っている椅子だけが白い光に包まれる。
「眼帯も包帯も、すべて私の言う通りに受け入れましたね。
レイがつけている
「長引かせても仕方がないので、最後に一つ、言っておきます」
レイはそう言ってニヤリと気味の悪い笑顔を浮かべた。
「魔王様は、病気です。『
次の瞬間、魔王は魔王城から姿を消した。
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