第13話 燃えた竜骨
フィッツジェラルド工場長は、翌朝、工員たちを集めて、今後のことを相談していた。
「明るくなって改めて見てみると、そこそこ、燃えているな」
「はい、いずれにしてもこの竜骨は使えません。新しいものを用意するしかないと思います。工場長」
「……う、うーん」
そこに、若い工員が目配せをして、発言をするようだ。
「工場長、80メートルの竜骨が簡単に見つかるのでしょうか。それと、今回の費用もです。作り直すとなると二隻分の代金が欲しい」
確かに、工場サイドからすると、そうなる。
だが、アインス商会からすると、一隻も完成していないのに二隻分支払わされることになる。
無論、どちらも間違ってはいない。
「しかし、解体費用も時間もかかる」
「一度、作ったものは移せないのか。そうすれば時間も費用も浮くのじゃないか」
「でもよぉ。レースに間に合うのか?」
そういう誰かの声に、皆黙り込んでしまった。
工場長は言った。
「いずれにせよ、竜骨は探さないといけない。今から、商人と話してみる」と。
この言葉を合図に解散となった。
そして、工場長は、確かに間に合うのだろうかと思ったのだった。
一方、アインス商会は、会長の元に急いで掛け合うようだ。
夜の見張はアインス商会も協力するために、一部の社員を残して、一度、ロッテルダム支店に戻り、会長のいるラインラントへ行くようだ。
「二日とあれば、何とかなる」
そして、フィリップス支店長は工場長に、そのことを告げた。
「ロッテルダム支店から、武器外商部の社員をこちらに派遣します。夜の警備に当たらせます。ですので、夜は休んでください。昼、働くことが出来なくなりますので」
「それは、ありがたい。こちらは警備はプロではありませんから。それと、竜骨は手に入りませんでした……」
「そうですか、工場長……」
「ですが、今のまま、使えるように一計を講じてみたい。一か八かです」と、言う工場長は殺気染みていた。
「あの燃えた竜骨を、そのまま使います」
「工場長、あの黒焦げの竜骨でアジアまで行けと」
「大丈夫、使えるようにしてみせます」
そういう工場長は、自信をもって回答したのでした。
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