優しい光にさようなら

sui

優しい光にさようなら


疲れていた。

眠りたかった。

頭がとても重たくて、首はいつでも絞められているようで、胸は辛くて、視界はどこか不自然で。


存在する誤りを、誤りだと示したいだけで人に作用したい訳ではなかった。

正義なんて要らなかった。

理解されたいという気持ちがない訳ではない、けれども完璧な理解なんてものはこの世に存在していないと知っている。

だからこそどうしていいのか分からなくなる。

拒絶される事の辛さを知っているからこそ拒絶したくないという気持ちはあって、けれどもこのまま飲み込まれてしまう不快感もまた耐え難かった。

選んでも選んでも、答えにならない。解決しない。もどかしくて仕方がない。

いっそそのまま声を出せば良いと言う。けれどもその声はどういう風に反響していくのか。そしてそれを誰が聞くのか。どんな耳に届いてしまうのか。そんな想像を広げていくのは恐怖に近い。

戻る山彦はもっと恐ろしい。


こんな風になってしまう己がきっといけないのだろう。

無力な己。愚かな己。それなのに全てを抱え込もうとして。答えを得ようとして。出来もしない完璧を望もうとして。嗚呼、なんて恥ずかしい。


時間は当たり前のように過ぎ去っていく。世間は何を気にする様子もなく普段通りに笑っている。

誰も何も気にしていない。

気にしてはくれない。


己とは一体何だろう。



苛立ちは辛い。悲しみは辛い。恥ずかしさは痛い。惨めさに耐えられない。寂しくなんてなりたくない。

何故人には感情があるのかと思ってしまう位、乱れる心に疲弊する。


耳を塞ぎたい。目を瞑りたい。

口を閉じたい、心を止めたい。

嗚呼、いっそ心臓まで凍り付いてしまえば。





寝よう、眠ろう。目を瞑って?

お休みなさい。

どうかまた明日、太陽と共に。



あなた。

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