第16話 剣ミンクーの決闘所

あくる朝に、皆はピエール王国を目指し、出発した。回復を目的に、魔女のミンクーを一匹連れて行った。ジルは地図を広げ、ピエール王国の場所をコンパスで確認していた。ちいも地図をのぞき込んだ。ピエール王国の途中、地図の3分の1が何も書かれていなかった。

「どうして、ここは何も書かれてないの?」

「ここはね、入れないのさ。不思議な魔法で、誰も入った人はいないんだ」とジル。

「魔女さんの水晶でも中が映せないの?」ちいは聞いた。

「あそこは見えないよ。黒の国とあそこだけは見えない」

「ふ~ん。何があるのかしら」

しばらく歩いて、足が疲れた頃、村に到着した。地図によると、トーゴという村だった。

「今日はここに滞在しよう。宿泊施設も見える」とコング。

「俺は情報収集をするため、村の人に話しを聞いてくる」とジル。

「私は少し疲れたから、先に宿で休んでいるよ」と魔女。

「ブヒー。ちょっとそこら辺を探索たんさくしない?ちいたん」

「いいよ。行こう」

皆はそれぞれに分かれた。コングはのどが乾いたので、何か飲もうとしていると、酒屋のおやじが話しかけてきた。

「おい。そこの人。おいしい酒が入荷したよ。席もある。飲んでいかないか?」

「いや・・俺は酒はやめているんだ・・」

「ウイスキーがいいのがあるよ。ワインも新鮮しんせんだよ。おいしいよ」

「う~ん。美味しそうだな・・」コングは店に入った。陳列ちんれつしてある酒を眺めた。

「ほら、ぐっといきな」店主はウイスキーを差し出した。

「一杯だけ・・ちょっとだけなら・・」コングはウイスキーを口にした。

キューとちいは村のはずれの森で遊んでいた。

「ちいたん、リスがたくさんいるよ」

「ほんとね。うさぎもいる!」二人が森の奥に入ると、木で出来た高い塀がある所に来た。塀のむこうで何か剣がぶつかる音がする。キューが、

「塀の向こうを見てみたいなぁ」

裏口が開いていた。そこからキューとちいは覗いた。妖精ようせいの剣ミンクーが決闘所けっとうじょで戦っていた。大勢の人間が興奮こうふんして見ていた。

「何かしら。なんで剣ミンクーが・・」

2匹の剣ミンクーは互いに剣を振り、切り合っていた。1匹の大きい剣ミンクーは下から突上げ、切られた剣ミンクーは血を出し倒れた。

「こわい。剣ミンクーが切り合っているわ」

「お金をもらっている。賭けをしているんだ。賭博場とばくじょうだ。ここは」

そこにいた男がこっちに気づいた。

「なんだ。お前達は。子供とブタじゃないか」

ちいとキューは見つかってしまいあわてた。

「ブヒ!道に迷ったんだ」

「剣ミンクーたちがかわいそうじゃない!」

ちいは文句を言った。キューはタジタジした。

「お前たち見たな。どこから入ってきた」

そこへもうひとりの男が寄ってきた。

「まだ子供じゃないか。許してやったら」

「ハンス。しかし・・」

ハンスという男は賭けをしていた者だった。

「ブヒ!あなたは誰?」

「俺はミンクー使い。みんなミンクー使いさ。ミンクーをどれだけ操れるかを競い合っているんだ。やられたミンクーは回復させているしね。きみもやってみると良いよ。ミンクーを操るんだ。俺の剣ミンクーとしよう。きみが勝ったら、賞金しょうきんをくれてやる」皆はザワザワした。

「ハンスが面白い賭けをはじめたぞ」

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