第11話 狙われたゴールドクリスタル

「さあ、僕は記憶きおくがなくて、ピエール王国も知らないなぁ。

ところで、さっき僕の腰巻こしまきのポケットに丸い光る石が3つあったのですが、何でしょう?」

キューが不思議そうに尋ねた。

「石ころかなんかじゃないか」コングは気にもとめなかった。

キューが光る石を3つテーブルに出した。

コングはそれを見たとたん、血相を変えて、がたっと立ち上がり光る石をかくした。

「し、信じられん・・・こ、これは・・・」

コングは小声で(これはお金の中で1番高価なゴールドクリスタルだ。

3つあれば大きな城が建てられるぞ)

キューは(そうなの?じゃあ、これを換金かんきんすればしばらく僕らは楽できる)

「たくさんのお金なら、銀行に預ければいいじゃない」ちいが言った。コングは、

「銀行?はてなんだ」

「この世界にはないのね」ちいはあきらめた。

「今夜は祝杯しゅくはいだな。ちょっと用を足してくる」コングは席を立った。

「わたしもトイレ」ちいも席を立った。キューはアイスコーヒーをストローで吸った。

しばらく飲んでいると、ぶつかって来た人がいた。

キューは椅子からころがり、アイスコーヒーのグラスが床に落ち、割れてしまった。

「フゴ!痛い」キューは悲鳴ひめいをあげた。

「すまん。怪我はないか?」ホビットはキューにわびた。

「だ、大丈夫」キューは立ち上がった。ホビットは一礼すると立ち去った。

「何事だ。割れる音がしたぞ」コングとちいが戻ってきた。

「ちょっと人とぶつかってしまって。

さあ、このお金の使いみちを・・・あれ、あれ、ないぞ!

ゴールドクリスタルがない!空っぽだ!」キューはポケットを探したがなくなっていた。

「ないだと!どういう事だ」コングは血相けっそうを変えた。隣の客が、

「さっきのホビットじゃないか?あいつは盗賊とうぞくだよ」キューは、

「さっき、ホビットとぶつかったんだ」

「追いかけるぞ」コングが立ち上がった。

店の外に出たが、盗賊のホビットはもういなかった。


「逃げ足が早いな」コングはキョロキョロとした。

そこへ羽をはばたせて、鳥が降りた。アーリーだ。

「向こうの道に走って行ったよ」アーリーが教えてくれた。

コングは馬が止めてあったので、またがった。馬の持ち主が、

「おいらの馬をどうするだ」

「すぐに返す。しばらく借りるぞ」コングはキューも馬にせた。

「ちいはしばらく待っていろ。どこかへ行ったらだめだぞ」

コングはホビットを追いかけ、馬で駆けた。「きっと捕まえてね!」ちいが言った。

コングが全速力で追いかけると、ホビットらしき者が走って逃げていた。

「あいつだ!コングさん捕まえて」

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