友達が周りからいじめられてるらしい。なら、ボコボコにするしかないよな!?!

不定形

第1話

 千年前、魔王が魔族を率いて現れた。当時の国々は争いが絶えなかったそうだけど、強大な、一国や二国程度じゃどうにもならない共通の敵が現れた事で手を取り合った。魔王は何度倒しても現れ、気がついたら各国の因縁やらも消えた。今や、一つの国の様になってる。

 魔族との争いに勝利するため、人類圏の中心にあるアスティ王国に教育機関を作った。その名もアレス学園。各国の王侯貴族や優秀な者、才能がある者が通う人類最大の学園だ。

 16歳から20歳までの四年間で卒業、もしくはとびきり優秀な者なら16歳より若く入れたり、飛び級で一年、二年で卒業することができる。

 で。私はそんなほぼ実力主義的な学園の二年生、平民のルナ。勉学は全体の真ん中くらいで、実技は中の下、くらいにいる。サボったりしてたらこうなってた。


 今日もいつも通り、授業をサボってぶらぶらしてると、学園内にある闘技場から大歓声が響いてきた。


「あれ、今日って何かのイベントだったっけ?」


 そういえば、エレンが何か言ってた気がするな。


「んー……いってみよ〜」


 魔法でふわりと浮いて闘技場に向かう。

 エレンって言うのは、私と同室の女の子。アレス学園は全寮制なんだ。エレンは、物凄い美少女だ。金髪のサラサラストレート、澄んだ青い瞳に、思わず『神の自信作?』って言いたくなるほど可愛らしい顔、小さいながらも確かに主張した体付き…これだけで正直何しても許されるレベルなのに、それを鼻にも掛けず、聖女や聖人すら霞むほど優しい良い子なんだ。……正直、私はエレンのことをこの世にやって来た女神だと思ってる。というか、あの子が女神じゃなかったら訳わかんないよ。


「あれ?エレンと第二王子性欲モンスターが向かい合ってる」


 上から闘技場の中を覗いたら、中心でそこそこボロボロになった第二王子と、汚れ一つない綺麗なエレンがいた。

 第二王子は、エレンの婚約者であり、脳が頭じゃなくて下半身にある様なゴミ男だ。エレンと言う、この世で最も綺麗で可愛い、優しい婚約者がいながら無駄に付けられた脂肪の塊を持って、それを下品な服で見せびらかす最低女に現を抜かしているのだ。その他にも、メイドが全員胸部装甲が御立派だったりする。名前は、脳の容量が勿体無いから覚えてない。


「何してんだろ?」


 闘技場を囲んでいる壁の上に立って眺める。少し経ったら、第二王子が魔法を使った。拡声の魔法だ。


《エレン!貴様との婚約を破棄する!》

「は?」


 あいつの愚行は、この場にいる人間を止めるのに充分な効果があった。


《エミリーをイジメ、それを愉しみ、あまつさえ殺そうとした貴様と、婚約なんぞ結んでいられるか!》

《ええと…記憶にないのですが…》


「殺す…」


 魔法で氷の槍を作り、手に持って投げようとした瞬間、契約してる精霊から止められた。


『お待ちくださいルナ様!そんな事をすればエレン様に迷惑がかかってしまいます!』

「ん…確かに」


 エレンに迷惑をかけるわけにはいかないし、止めてやる。命拾いしたなゴミ。


『今考えるべきは、どの様にしてエレン様を助けるか、ではありませんか?』

「そうだね。ありがとう」

『いえいえ』


 ホッと安堵の息を吐いて消えて行く、私と契約した精霊王。わざわざ出てくるなんて、大変だね。

 なんてしているうちに、話も佳境に入ったみたい。


《ひっとらえよ!》

《しょ、正気ですか!?》


 どちらかと言うと、実際に動き出した兵に対して放たれたエレンの一言。これは、流石に介入しないわけにはいかないよね。

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