第11話 リベンジ

 その後康生の指示のもと、優香ちゃんの家に向かった俺たち。

 優香ちゃんに普通に部屋へと迎えられる。


「それで、今日はだな。こっちの昭が佐々木さんに告白したんだ」

「ええ!?」


 優香ちゃんは驚きの表情を見せる。


「初めて見たときから好きだっ会って」

「それで……?」

「断られた」


 それに対して優香ちゃんは複数回首を振る。


「そりゃ、断られるよー」


 優香ちゃんにもダメ判定された。


「私もね、やっぱり男の人は怖くなってるの。変なことはされなかったけど、でもやっぱり手足が拘束されたままトランクに入れられるっていう体験は恐怖でしかないの。だからさ、お姉ちゃんに安易な告白はしてほしくないんだよ」


 その言葉に思わずうなだれる。

 そうだよな。


「昭、優香ちゃんの言うとおりだ。これは昭の失態だ」

「告白しろって言ったのは康生だろうが」


 何言い逃れしtるんだよ。


「ただ、それは俺もわかる。佐々木さんはつらい体験をしたんだ名tぅてことも。だから俺は彼氏として佐々木さんを支えたい。その気持ちに嘘はないんだ」

「それは分かってるよ。でもだったら、言い方が良くなかったと思うの。だから」


 そして優香ちゃんは、俺の手を取り、


「一緒に行こう。謝りに」


 優香ちゃんが優しく俺に言う。

 その言葉に「ああ」と頷く。


 本当にこの子は大人だ。

 この子の言葉を受け、俺も頑張らないと。


 そして、歩いて佐々木さんの家に行く・


「今回は失敗は許されないからお延がいだよ」

「ああ、分かってる」

「私もお姉ちゃんが寄り添える相手が必要だと思うから……」


 そしてインターフォンを押す。まず、声を発すのは優香ちゃんだ。

「お姉ちゃん、少しいい?」

「ええ」


 そして佐々木さんが出てきた。その瞬間に俺は「その、佐々木さん」声を発した。その瞬間佐々木さんの顔色が変わる。


「一体何のようですか?」


 あちゃ、キレてる。


「俺は誤解を訂正するために来たんだ。俺は、佐々木さんのことが好きだった。だけど、だから佐々木さんに近づいたのもそう。でも、それは性欲じゃなく、佐々木さんを助けたかったからなんだ。佐々木さんは、人を信用できなくなってから長い。それが嫌だったんだろ。だからこそオレは一番そばで佐々木さんを支えていたい。佐々木さんの笑顔を取り戻したい。確かに佐々木さんは最近笑えるようになってきたと思う。でも、今の佐々木さんには、寄り添ってくれる人が必要だと思うんだ。だからこそ言いたい。俺と付き合って、一緒に人生を、青春を楽しんでいかないか?」


 俺にはこうとしか言えない。俺に言える全部を振り絞った。

 お願いだ、頼む!


「私はやっぱり怖い。人が怖いの」


 だめか。


「でも、私はあなたに逃げられたらどうしたらいいのか分からない。だから告白なんてしないでほしかった。だって、付き合うか、友達を辞めるかの2択になるんだもん。でも、保留にしたらいけないのは分かってる。私は最近人と話すようになってだいぶ喋るのが上手くなってきた。それは感謝してるの。でもね、やっぱり付き合うとかはまだよくわからない。……私は昭君に感謝してるから、付き合ってくれと言われたら断ることはできないけど、でもやっぱりわからない」


 言葉がまとまっていないようで、言ってることがばらばらだ。これは無理に付き合いたいと言うべきじゃない。……それはちゃんとわかっている。だが、譲れないものがある。


「じゃ、言い方を変える。俺は君のことが好きだ。だけどそれ以上に今感じている感情があるんだ。それは嫉妬だ。君が俺意外と楽しく話している姿を見て俺は嫉妬しちゃっているんだ。でも、それは嫉妬するべきじゃない。だからこそ、俺は君の一番になりたいんだ。……答えは今じゃなくていい。答えがまとまってからでもいい。それに無理強いはしない」

「私は……」そう呟き、固まる佐々木さん。「少し考えたい」


 その佐々木さんの言葉を受け、俺たちは一旦退散する。


「ああ、これでどうだ?」


 そう、康生に訊く。


「ああ、百点とは言えないが、前よりはよくなったと思うな」

「なんだよその意味の分からない評価は」

「ま、でも後は待つだけだよ。辛抱強く待て」

「はいはい」



 そして、三日後、佐々木さんから呼び出された。


「私は、答えがしっかりと纏まtぅ他とは言えないと思う。でも、一つだけ言いたいことがある。私にとって昭君は大事な人だと分かったの。だから、仮カップルを提案したい」

「仮カップル?」


 なんだそれは。


「私はまだ付き合うっていうのがまだよくわからない。でも、私は付き合うという行為を捨てたくない。まだ、付き合うって言ったら怖いけど、今はそうとしか言えないけど。私と仮カップル契約を結びましょう」


 仮カップル契約か。よくわからないが、要するに付き合うという行為を簡単な感じにしたものだろう。


「分かった。それで行こう」

「ええ、ありがとう」


 そう、俺たちは固い握手を結んだ。


 こうして俺たちは仮だが、付き合う事となった。

 とはいえ、まだ表立ってじゃない。

 真に佐々木さんのトラウマを消し飛ばすことが出来たとき、俺たちは真のカップルになるんだろうなと、思った。

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俺が好きになった人は誘拐された人 有原優 @yurihara12

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