第12話 遊園地

 そして、当日。俺たちは遊園地の前に来た。

 朱里おれと理恵子と修平の三人だ。


「しかし、あいつ集まり悪いな。奏は」


 修平が愚痴をこぼした。

 良いのか? 俺が来たら朱里は姉ちゃんになるんだぞ。違和感感じることになるぞ。


「私も、彼が来てくれた方が楽しいのだけど」


 俺も悲しむふりをする。


「でも、三人なんだから三人で楽しまないと」

「そうね」

「ああ」


 そして意気揚々と遊園地の中に入っていく。

 俺にとって遊園地は楽しい場所だ。だって、絶叫マシンなんて大好物だしな。


 そして俺たちは早速ジェットコースターに向かう。


「どうしたの? 修平君」

「やっぱり怖い」


 ははーん。こいつおびえているな。


「心配しなくても大丈夫よ。怖いのは一瞬で、あとは楽しいだけだから」

「……ああ」


 そして修平は俺に続いて歩き出す。

 これ、絶対誘ったのが奏だったら絶対ジェットコースターなんて乗らないだろうな。

 まあ、いいことではあるが。少しだけ屈辱だ。


 そしてジェットコースターの列に並ぶ。その際に修平が怖いというので、手を貸してあげた。

 修平の顔が分かりやすく赤くなる。

 本当にこいつ朱里好きすぎだな。


「ねえ、私とも手を繫いでいよ。修平君だけずるい」

「この位置じゃあ繫げないと思うのだけれども……」


 そう、この列は二人ずつで並んでいて、俺と修平は一緒に、理恵子は一つ後ろに並ぶという形になっている。


 この状況じゃあ、俺と理恵子で手を繫ぐのは無理がある。

 だが、理恵子は俺の言葉を無視して無理やり手を繫いだ。

 いや、繫いだじゃ、語弊がありすぎる。正確には俺の手が理恵子に後ろに引っ張られているという形だ。

 手が後ろに引っ張られて少しだけ痛い。我慢できない程ではないけど。


「もう、理恵子ったら」


 そう、呟き、理恵子の行動を許す。

 そして、俺たちが並ぶこと十分。

 遂に俺たちの順番が来た。


 ジェットコースターに乗る。俺と修平が隣に座り、理恵子が一つ後ろに座っている形だ。


「……怖い……」


 修平が俺の隣で呟く。恐怖でも舞い戻ってきたのか。


「大丈夫よ。走り出したらすぐにでもなれるわ」

「ああ」


 とりあえず修平はああと言ったものの、まだおびえているようだった。

 手をばってんの形にして、防御態勢を取っている。

 そんな修平に対し、とりあえず、


「大丈夫よ」


 そう、言って頭をなでる。


 修平はうれしそうな顔をする。

 朱里に頭をなでられてうれしいのだろうか。

 まあ、その手はしんゆうの手なんだがな。

 そしていよいよ、ジェットコースターが走り出し、

 グググっと上に上がって行く。

 ゆっくりゆっくりと、この後の興奮を予感させるかのように。


 そしていよいよ頂上に来て、一気に下に落ちていく。


「うわああああああああああ」



 隣にいる修平が思い切り叫ぶ恐怖でパニックにでもなってそうな声だ。

 正直うるさい。

 ものすごいスピードで下に下がって行っているのだ。

 そのスピードには修平も朱里のよしよしだけじゃあ耐えられなかったようだ。


 かく言う俺は俺は今興奮している。

 ジェットコースターの速さにより引き起こされる風によって、心地良い。

 隣の修平ばかはこれを気持ちよく感じないなんて、本当にかわいそうに。

 そして、どんどんとスピードが上がって行く。

 一番下に来た後、カーブを交えながら上昇下降しながら走っていて全てが気持ちいい。

 ああ、良いなあ。

 やっぱりジェットコースターは、最高だ。


「はあ……楽しかったわ」


 降りた後、すぐにそう口にした。まだわくわくが止まらず、最高の気分だ。

 もう興奮が止まらな過ぎて、幸せ過ぎる。

 もう来た目的の五割は達成できているような気がする。


「俺は……もう……」


 修平はそう口に出し、手で口を抑え、下を向く。

 修平、哀れなり。このジェットコースターという楽しむべきアトラクションが、地獄と感じるとは。


「理恵子はどうだったの?」

「最高だった!」

「そう……」


 じろっと修平の方を見る。


「すまん」


 大人しく修平は謝った。


「これで、修平君だけね、ジェットコースターを楽しめないのは」

「……面目ねえ」

「ふふふ」


 やべえ、楽しい。

 修平と理恵子と一緒に遊園地に行くことがこんなに楽しいとは。

 思えば、この三人で遊びに行ったことはなかった。強いて言うならば勉強会くらいだ。

 一応姉ちゃんを含めて四人でお出かけした時もあるが、それはあくまで奏としての俺だ。

 朱里ではない。


「じゃあ、次行こっか」


 興奮が止まらない。この調子で次のアトラクションにもいきたい。


「待ってくれ、まだ回復してない」

「そう……残念ね」


 くそー修平め、早く次行きたいってのに。


「朱里ちゃんはどんどん次のアトラクションに乗りたいの?」

「ええ、勿論。私遊園地……好きだから」


 そして修平の回復を待つこと十分。ようやく修平が回復した。

 そして修平を連れて、今度は激流下りのアトラクションに来た、いかだに乗って人口の川を下っていくというものだ。

 修平も、これなら……と思い、ここにした。

 流石にそこまで怖がってはないようだ。実際そこまで怖そうではなかったしな。

 修平もジェットコースターを耐えれたら何も怖くないよな。

 そして、いかだに乗る。そして、下へ向かって行く。

 基本いかだから落ちることはないが、水が大量に飛んで来る。


 その水しぶきがまた気持ちいい。

 隣をふと見ると、修平が水を軽く怖がっているようだった。

 おいおい、気持ちがいいぞ。それに、イルカショー楽しんでたくせに。


 だが、これは少しまずいかもな。思ったよりも濡れてしまっている。

 し油断していたかもしれない。

 この程度の水ならばれないとは思うが、少し厄介だな。


「はあ、楽しかったわ」


 そう、いかだから降りて言う。


「俺は……嫌だったが」

「修平君、確かイルカショーの時水を浴びてこそって言ってなかったかしら」

「時と場合によるんだ」


 へー、変なやつ。


「ちょっと体拭きたいわね」


 そう言ってカバンからタオルを取り出し、髪の毛と服を拭く。

 幸いそこまで濡れてはいないようだったので簡単に拭き取れた。

 髪の毛はウィッグの関係で、完全にはぬぐい切れなかったが


 その際には俺の胸元を見る。だが、ラッキースケベなどありえない。

 何しろ、胸パットを付けているだけだし、濡れても透けない服にしてるし。

 次は、修平が楽なやつがいいと言ったので、コーヒーカップに乗ることにした。


 コーヒーカップ……そこそこ動くが、遊園地の中では比較的楽な方なアトラクションだ。

 コーヒーカップに乗って少し経つと、ぐるぐると移動しながら回転し始める。

 修平を見ると、楽しそうだった。

 俺にとっては少し物足りないが、二人が楽しそうだからいいか、と向こうにある絶叫系アトラクションを見ながら思った。

 コーヒーカップに乗った後、俺たちは昼ご飯を食べに行った。


 そのレストランはイタリアンのお店で、色々なメニューがあった。

 その中で修平が一つのメニューを指さして「あ」と言った。


「何かしら」


 そして見る。するとそこにはカップル限定パフェと書いてあった。

 おいおい、修平。俺たちカップルじゃねえぞ。

 それに普通に親友とカップルパフェを食べるなんて冗談じゃねえ。


 そのことに理恵子も気づいているのか、ツッコみを入れる。


「朱里ちゃんと修平君はカップルじゃないでしょ」

「う」


 修平もそのことに気づいたのか、顔の色を赤くさせる。


「まあとりあえずそのことは忘れて、頼みましょうか」


 修平に助け舟を出す。


 そして、しっかりと料理を頼む。勿論カップルパフェなんて言う意味わからんものは頼んではいない。


 俺はカルボナーラのドリンクセット、アイスミルクティー、

 理恵子はハンバーグのカフェラテセット、

 修平はカツカレーのコーヒーセットを頼んだ。


 修平、普段コーヒーなんて飲まないのに、朱里がいるからカッコつけやがったな。


 そしてすぐにご飯がやってきた。


 忙しそうなのに、料理が届くのが思ったよりも早くてびっくりした。


 カルボナーラを一口すする。

 美味しい!

 カルボナーラの味が濃くもなくうざくもなくちょうどいい感じだった。

 これだったら満足だなっと、もう一口すする。

 やっぱり美味しい。


 そして何口か食べたところで、


「ねえ、朱里ちゃん。一口交換しよ」


 そう理恵子が言った。もちろんかまわない。ハンバーグも食べたいところだしな。


「いいわよ」

「分かった、じゃあ」


 そう理恵子が言うと、早速ハンバーグをナイフで切り取り、フォークで刺して、


「はい、あーん」


 そう言って俺の方にフォークを向けてきた。

 何をしているんだ、こいつは。


「え? あーん」

「うん。こういうのしたいなって」


 こういうのしたいなって……

 まあ、いいんだけど。


「じゃあ、分かった」


 そして俺は理恵子のフォークをパクっと加える。


 別に間接キスに関しては気にしない。

 理恵子に少しだけ申し訳ないなと思うけど。


「じゃあ、俺のカレーも」


 そう言ってカレーをスプーンに入れる修平。


「ちょっと、それは違うんじゃないの?」


 そう理恵子から突っ込みが入る。


「女同士はいいけど、男と女だったら間接キスになるじゃない」


 別に女同士でも間接キスだよ?


「だから、それはやめときなさい」


 そう言われ、修平はショックそうな顔を見せる。仕方ねえ。


「ここにスプーンとフォークの替えがあるから、これで一口交換しましょうぁ」


 そう、テーブルに置いてある、引き出しを引きながら言った。


「分かった」


 まあ、修平と間接キスはなんか嫌だしな。


 そしてそのまま修平とも一口交換した。

 ちなみにその後、カフェラテも一口いると言われたから飲んだ。

 今度はストローでの一口交換だ。


 別に俺は女子との間接キスなんて気にしない。何しろ、俺には女子がかわいいとかいう感情はあまりないからだ。

 可愛いと思うのは、異性としての感情ではない。単純な可愛さという面だ。だからそれで赤面するようなことはない。

 周平みたいに。


 そして、店を出て、午後は午後のアトラクションを楽しむ。

 まず最初に俺はとある絶叫マシンを指さした。

 急降下や急上昇を楽しめるアトラクションだ。


「私、乗らないよ」


 見た瞬間、理恵子はそう呟く。


「もしかしてこれに乗りたいの、私だけなの?」


 まさか修平だけじゃなく、理恵子も嫌がるとは。ジェットコースター楽しんでたくせに。


「じゃあ、仕方ないわね」


 そう言って、一人歩いて向かう。

 一人でなのは寂しい。

 乗る直前に理恵子たちの方をちらっと見たが、やっぱり考えが変わらないみたいで、


「ごめん、朱里ちゃん」


 と言われてしまった。

 仕方がない。誰かと乗るのは諦めるか。


 一人で急下降と急上昇を楽しむ。本当に急下降する際に死ぬかと思うくらいの恐怖が来てそれがまた楽しい。

 いくら怖くても、これで死ぬなんてことはまずないのだ。


 ああ、楽しいな。

 本当、理恵子と修平も乗ればいいのに。

 理恵子はともかく修平は無理か。……あのジェットコースターていどで死にかけてるんだもん。


「はあ、楽しかったわ!」


 そう笑顔ではにかみながら二人の前に行く。


「朱里ちゃん。よく平気だよね、あんな鬼のような乗り物に乗って」

「ああ、あれに乗れる人間っているんだな」


 二人とも俺を不思議がっているようだ。


「私にとっては、何であんな楽しい乗り物に乗らないのか、不思議だわ」

「「それは、朱里ちゃんが(さん)がおかしいだけよ(だ)」」


 ハモるように言われてしまった。


「まあ、いいわ。次はどこに行く?」

「えっと、怖くないところで……お願いします」


 理恵子まで絶叫マシンビビるようになってしまった。

 これは選択の幅が狭まってしまうな。


 そして次はメリーゴーランドに乗った。

 これは修平も理恵子も楽しめたようだった。

 そして次は、ある種のジェットコースターに行く。

 これは、早いスピードで水面を走り、水しぶきが飛ぶものだった。

 ウィッグに水がかかるが、これくらいなら拭けば何とかなるだろうという安直な考えだ。

 それにさっきのいかだでも濡れてたし。


 そして、これにも修平も理恵子も乗らなかった。

 何でだよ!

 ジェットコースター行けるのに、これも無理なのかよ。

 そして俺だけが乗る。


 水しぶきが激しく楽しかった。

 イルカショーで最前列嫌がったのとこれは違うんだ。


「やっぱり朱里ちゃん凄すぎ」

「私はただ楽しいと思うやつをやってるだけよ」

「それでもすごいと思うぜ」


 そして、次はゴーカートと思ったのだが、二人乗りの関係上、誰かハブられることになる。そのことに気づいた俺たちは、ゴーカートに乗ることはやめることにした。

 正直軽く乗りたいという気持ちはあったが、そういう事なら仕方がないか。

 結局、近くに会ったトロッコに乗ることにした。

 これは、そこまで速くもなく、むしろ周りの景色を楽しむものらしい。


 動く観覧車的な物と思った方がいいらしい。

 トンネル内も通るらしく、正直わくわくする。

 これにはさすがの二人も嫌がることなく乗る。



「はあ、楽しみね」


 乗り込み、そう言った。


「朱里さんがそう言うと、途端に不安になるんだが」


 そう言って理恵子の顔を見る修平。理恵子もそれに頷いた。


「なんでよ」

「だって、絶叫マシンかなって思ってしまうし」

「私だって、普通のやつも好きだわ。あのコーヒーカップとかメリーゴーランドとか」


 失礼しちゃうわと言った感じで言う。

 本当に、俺が好きなやつは絶叫系とかいう変な先入観はやめて欲しい。


 そしてそんな話をしている間に走りそうな雰囲気だ。

 楽しみ。



 そして、いよいよとばかりに動き出す。


 トンネルの中に入り、レールの上をがたがたと動く。

 怖いはずがないのに、修平は俺の隣でビビっているようなそぶりを見せている。

 こんなの怖いはずがないのに。


 そして地下に深く潜ってから上にどんどん上がって行く。だが、スピードはのろのろとしている。

 ゆっくり過ぎて不快感を感じる。もう少し速くいけと。

 そしてグググと上に出て、そのまま外に出た。


 そのまま敷かれているレールの上を回っていく。下の景色を気持ちよく見れている。

 楽しいなと思う。

 そして一周して地下に入っていく。まだまだ終わりではないようで、地下をぐんぐんと進む。

 これは、ダンジョン感があって楽しいな。


 そして、二十分にも及ぶアトラクションが終わった。


「修平君、どうだった?」


 ふと訊く。修平の顔は死んではいないことを考えると、しんどかったという答えはないはずだ。


「楽しかったな」


 そうあっけからんに言う修平。あんなに怖がっていたのは何だったんだ。


「でしょ。修平君は私を疑っていたみたいだけど」

「それはすまん」


 修平相変わらず素直だな。


「理恵子も楽しかったでしょ」

「うん!」



 そして、次が最後だろうという事で、観覧車に乗る。


 俺と修平が常に隣にいたという事もあり、理恵子が嫉妬してしまったという事で、俺の隣には理恵子が座った。


 観覧車がどんどんと上に上がって行く。

 俺たちが上に上がって行くのと相対的に地上が下に向かって行く。


 地上が遠くなっていくにつれ、段々わくわくが増えてくる。


「今日楽しかったね」


 理恵子がふと口を振らいた。


「そうよね」

「俺はジェットコースターに乗せられた時、死んだと思ったけど」

「ふふ、あの時の修平君の顔、面白かったわ」

「それは。忘れてくれ」

「それよりも、朱里ちゃんよくあれ兵器だったよね。あの、上昇下降を繰り返すやつ」

「ああ、あれね。慣れれば楽しいわよ。後で乗ってみる?」

「絶対嫌!」

「ふふ、でしょうね」


 まあ、あれは本当に楽しいのだが。


「見て、きれいだよ」


 理恵子がそう言うので、窓の外を見る。するときれいな空が見えた。下を見ると、様々なアトラクションが小さく映っている。

 見ろ、アトラクションがゴミのようだとでも言いたくなるような景色だ。


「確かにきれいね」

「ああ」


 そこから会話が亡くなった。俺たち皆この景色を楽しみながら。

 観覧車が下に下に下がっていく。


「なあ、朱里さん好きだ」


 修平がふとそう言った。


「ええ、知ってる」


 そう返すと、修平はもちろん、理恵子も顔が赤くなっていた。



 そして下に着くと、すぐに閉園三十分前の鐘がなった。

 夢の世界はもう終わりという事で少し寂しい気分になる。


 最近思う事がある。今までも奏でいるときと朱里でいるとき、同じくらい楽しかった、いや、朱里の方が楽しかった。だが、今は朱里でいる方が断然楽しい。

 修平をだましている罪悪感はもちろんあるが、それを踏まえたとしても、こちらでいる方が俺をやってる気がする。

 これも、こっちの姿で修平に合うようになったからに他ならない。


 今、思ってはいけないことを考えているかもしれない。この姿でこれからも過ごしたいと。

 だが、それは出来ない。それは俺が一番分かっている事なんだ。

 俺はどんなに自分を飾ったとしても、所詮男。


 それが現実なんだ。


 そう思った瞬間、心の中に穴があいたような気分になった。


 ああ、そうだったんだな。

 俺は朱里になりたかったんだ。

 奏ではなく、朱里に、なりたかったんだ。


 俺は唐突に不安になった。


 この関係はいつまで続けられるのか分からない。

 今ならできるが、俺が老人になった時にまだこの関係でいられるかどうかと言われれば、それはNOだ。

 その時には俺は老けて女装なんて不可能になってくる。


 俺はいつまでこの関係を続けられるのかな。いつまで朱里でいられるのかな。


「あれ、朱里ちゃん、暗い顔してない?」


 そう、隣を歩いていた理恵子が言う。

 しまったな。暗い顔をしていたことに気づかれてしまった。


「今日、楽しくなかったのか?」

「いえ、そんなことはないわよ」


 楽しかったのは事実だ。ただ、変なことを考え、不安になっただけだ。


「ならなんで?」

「ちょっとね、色々と考えちゃってね。楽しいからこそ、終わるのが怖いのよ」

「大丈夫よ。私はずっと朱里ちゃんの友達だから」


 理恵子ならそう言うと思ったが、それはあくまでも俺が本当に男の場合だ。

 もしも俺が男だと言ったら理恵子はどうするのだろうか……。


 怒るだろうな。

 俺だって同じ立場なら怒るだろう。

 いつまでも続かないとは知りながら、この関係を望む俺は一体何なのだろうか。


「ええ、ありがとう」


 とりあえずそう理恵子には返しといた。

 いつか終わると知りながら、それまでは楽しもう。

 俺は……ばれた時には全力で謝ろう。そう思うのであった。


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クラスの孤高の狼がなついているのは女装した俺 有原優 @yurihara12

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