戦慄の公共交通機関
廻路ねず
系統1 遅れてきたバス
系統1‐1 車内の私以外の人物…運転手だった
ぴんぽーん
つぎ とまります
ご乗車ありがとうございます
―これじゃなかった…!!
恐怖で無意識に止めていた呼吸を思い出し、大きく息を吐き出した。
電気が消えた薄暗いバス車内に、停車ボタンの赤い光が一斉に
乗客は私、一人だけ。
僅かな
「…残念。それではありませんでしたね。」
そう声を発したのは、車内の私以外の人物…運転手だった。
「さあ、ご
「な、なんで…!? こんな事…しなきゃいけないんですか…!?」
「はは…お客様は運が悪かったとしか。」
やたら
だけどその言葉
*
それは何の
部活を終えて、学校を出て、
そして
部活で遅くなったため時刻はもう18時を過ぎていて、すっかり陽は沈んでいる。歩道のわきに点々と立つ街灯の光が、雪に反射して闇の中でぼんやりと明るい。
―今思えばこのバスは、時刻表に無い時間に到着していた。
だけどそんなの、予定時刻より遅れて来たのかとしか思わなかった。雪が積もると、バスは
車内に足を踏み入れると、誰も乗っていない事に気付く。
そこで少し不安になったけれど、運転手がいつも通りに「
―これは予定時刻よりも遅れて来た、車内が貸切状態の、
私はそう納得して、
そしていつも通りにコートのポケットからスマートフォンを取り出し、駅に着くまでの間、しょうもない情報が表示される画面を時間潰しにぼんやりと眺めていた。
高校生になってから始まったバス通学にもすっかり慣れ、顔を上げなくても時間経過と感覚で、今どの辺りをバスが走っているのか、大体分かる。
だから少しの後、いつもと異なる何かを覚え…私は顔を上げ、流れる窓の外を見た。
―……違う。いつもの見慣れた景色と違う…! やっぱりこのバス、
私はどっと変な汗が出て、一気に
このまま私の知らない場所に連れて行かれてしまう前に、
それと同時に、この疑問を解決しようと情報を脳内でフル回転させる。
運転手は確かに「
私の知らない間に運行ルートが変わった?
確かに、私はバス路線とかあまり詳しくないから…こういう遠回りみたいなルートを走って、最終的に
私の中で《このまま乗る》と《今すぐ降りる》がぐるぐるとせめぎ合う。
引っ込み
そして私は、手元でしょうもない情報を表示していたスマートフォンの画面を検索画面に切り替えた。
このバス会社は、確か…
【
そう手早く入力して、検索を押す。しかし私の意に反して、スマートフォンの画面は検索中となったまま欲しい情報を表示してくれない。
…その間にも、バスはどんどん知らない道を走り抜けてゆく。
―
私は座席から立ち上がり、運転手へ歩み寄りながら声を掛けた。
「すみません! これ、
思っていたより大きな声が出た。
しかし、運転手から反応は無い。
私は混雑しているファミレスでいくら店員を呼んでも気付いてもらえない声量の持ち主であるから、当然と言えば当然の結果だ。手すりを
バスの走行中は危険だから移動してはいけない常識と、運転中の運転手に話しかけてはいけない常識を知っているので、二重にいけない事をしている後ろめたさがある。
運転席の後ろまで近寄ると、運転手の姿があった。
「すみません!!」
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