第3章―会社発展編 第31話 起業後初の年末と海外旅行       【1999年12月】



 年明けには、自分の確定申告が待っている。そのため12月にお爺ちゃんの紹介で、実家で営業していた店舗の確定申告でお世話になっていた税理士さんに来て頂いた。


ちなみに実家は、自分が生まれる前から喫茶店を営んでいた。おばあちゃんと母さんが二人で切り盛りをしていた小さな喫茶店であるが確定申告をしていた時からの付き合いである。


「おじいさんに会社を立ち上げたと以前聞いていたのですが、本当だったのですね。」

税理士の方もおじいさんの知り合いだけあって年配の味のある方が来て話してくれた。


「会社の決算は3月なので、今回は個人の確定申告でアドバイスをもらいたく、忙しい中お呼びだてしてすみません。」


「年寄りになってから、毎日そんなに仕事がないから、呼んでくれたら喜んで、お邪魔しますよ。で、今回の件ですが、梅田さんが使った経費は領収書をちゃんと持っているので、会社の経費として精算をして問題ないのですが、今後に関しては会社規模として大きくなっており、従業員も多くいるので、経費としての切り分けが難しくなると思います。来年のためにプライベートカンパニーを立てる必要があると思いますが、如何しますか?」


「プライベートカンパニー??」

俺は、プライベートカンパニー?聞きなれない言葉にかなり疑問符が浮かんだ。

税理士の方は、わかってないであろう私に丁寧に説明をしてくれた。


年収800万を超える見込の方には、資産管理会社を立ち上げたほうが効率よく資産を管理できるということだ。自分の資産を管理するために設立するのがプライベートカンパニーと呼ばれている。と説明をしてくれた。


個人の所得というのは、国に納める必要のある税率は累進課税となり儲ければ儲けるほど税率が上がるという大きな壁がある。一方法人の所得に関しては、税率は一定となっている。その分岐点が約800万と言われている。使い方や節税の方法によって大きく異なるので一概に同じとは言えない。



話を聞いて、当初は株を購入するだけの会社と考えていたが、いつの間にか従業員まで増えて、会社としての体を成してきた。会社を別に立ち上げる必要を感じていたが、今回おじいさんが紹介してくれた税理士に改めて指摘を受けた。


プライベートカンパニーだって、横文字だから連呼しておこう。


資産管理会社であれば、食事などの自分の身の回りの費用を経費として落とせるだろう。食費も誰かと一緒に食べて打ち合わせみたいにしないと指摘を受けかねないけど、立ち上げていた会社では従業員が増えてきた時点で社長とはいえ、公私混同と指摘を受けるので資産管理会社として別会社を立ち上げて、来年は新しい資産管理会社で自分の発生した経費を落とすことにした。



話が飛び過ぎたが今回の確定申告は、今の会社の経費で処理しているので大きな問題とはならないが、今後のために資産管理会社と今の会社の切り分けができるようマネージャの役割の人を雇う必要を感じてきた。新しい会社を設立するときに考えておこう。



今年発生した費用は、とりあえず可能な部分は投資会社に領収書の処理をしてもらおう。来年は新しく立ち上げる予定の資産管理会社に任せよう。確定申告はとりえず済ませておいた。


資産管理会社となるプライベートカンパニーには、一族の資産を管理してもらう役割を担う目的として、一郎さんの名字と次郎さんの名字と私の名字から取った“松田”“竹田”“梅田”から株式会社松竹梅と会社を設立する事にした。投資会社とは税理士や弁護士は別々として相互で資産管理を切り分けて管理できるようにした。





 ある日の取締役会議にて終わりかけに唐突に発言をした。

「最後に中国に旅行行きたいんだけど、よろしいですか。」


「こんな年度末に何しに行くんだ。」

おじいちゃんが呆れた声で聞いてきた。


「今行かないと後悔しかしないんですよ。」


「はぁーぁ、社長のまたわがままが始まったな。」

おじいちゃんに続いて、一郎さんも苦笑しながら小声でつぶやいた。つぶやいたつもりかもしれないが十分に私に聞こえた。


「社長って言うのは、わがままになる人種です。それをただのわがままで終えるのか。会社の発展につなげるのかは、社長の実行力です。」

私は、自信を持ってわがままぶりを発揮してみた。


「聞こえてしまいましたか。社長、あなたは株とにらめっこしないといけないって仕事があるでしょう。」

ため息を吐きながら一郎さんは、話を続けた。


「だって眼が疲れるんだもん。休憩がてら、中国に行きたいんですよ。」


「はぁーぁ、分かりました。なら週末に行ってきてください。」


「私の土日を潰すのですか。はぁー、殺生関白なぁー。」


「だれも親父ギャグを求めていません。土日いってくれるなら中国旅行は認めます。」

一郎さんがさめた声で話したが、納得してくれたので旅行に行けると判断した。


「で、何しに行くのですか?」


「中国に行って、有望な中国の会社に投資しに行きます。」

どや顔で私は答えた。


「わざわざ現地まで行って、時間を割いて中国の会社に投資?国内の会社に投資すればいいでしょう。」


「中国は、有望な市場なんですよ。先に手を付ける必要があるんですよ。」


「で、中国語できるのですか。」


「中国語なんてできませんよ。当たり前の質問をしないでください。」


「じゃぁ、本当に何しに行くのですか?どうやって投資先を決めるのですか。」


「誰か中国語できる人いませんか?」


「たしか会長できませんでしたっけ?」

ここで今まで黙っていた父さんがおじいちゃんに話を振った。


「まぁ、確かに県庁時代に何度か中国行ったし、会話程度なら中国語はできる。中国本土を案内してくれる現地ガイドも確かにいるが、最近連絡取ってないから、案内までできるか知らんぞ。まぁ、一度聞いてみるが。ついでにどんな企業を求めている?」

おじいちゃんは、疲れた表情を見せながら話しかけてくれた。


「えっと、アルボボって会社です。飛騨のさるぼぼとは違いますよ。」


「ぇ、会社名も決まっているのか。まぁ決まっているなら聞きやすいな。分かった。現地ガイドさんに聞いておく。仕方ないわしも行くか。」


「よし、おじいちゃん。おっと会長だった。会長と今週末に中国旅行ね。」


「はぁー、行動が早いな。で、社長はパスポート持っているのか?」

ため息がてら、頭に手を当てながら話しかけてくれた。


「もちろん、昨年取得済だから大丈夫だよ。だったら宜しくね。」


「それって、投資先決まってるから行く必要なくない。」

誰ともなく発言された言葉を私は聞こえないふりをして、この話題を終わらせた。



翌年の2000年にハードバンクの社長が初対面の相手にいきなり20億の投資を決める前に、とりあえず1億円でもいいので投資しておいて、株の1%でも買い取っておけば20年後には大金持ちになるな。イヒヒ


1億円ぐらいでは、アルボボの会社の将来に影響ないから、後日ハードバンクからお金を融資されるだろうし。うちの会社は、ネット販売の専門ではないから、アドバイスもできないし、まぁ未公開株を1憶で買うってぐらいで大人しくしておこう。


ハードバンクの社長は、この投資で20億円を投資し、株式の32.59%を取得。2014年にニューヨークに上場した際の時価総額が約25兆円規模となり、そこから試算し8兆円に達する含み益になっている。



ちなみにこの会議にて、無事に「スーパードラッグ」の商標を手に入れたため、スーパードラッグAtoBに会社の名称を変更した。



 投資会社を立ち上げて初めての年末になった。せっかくなので記念になる忘年会社員旅行を企画する事にした。

会社もこの一年間で不動産会社を買収し、薬局から病院、専門学校、スーパーなどにも手を出したことにより、一気に従業員が増加していた。おそらく社員旅行を企画したとして最初で最後の社員旅行となるであろう。会った事もないメンバーだらけなので、少しでも連帯感を持ってくれればと思う。


そして熱海の旅館を借り切った。東京・大阪など全国各地から熱海を向かうため現地集合・現地解散の1泊2日とした。参加できない社員には一律2万円の商品券を渡す事にした。


お母さんの実家の親族も含めて家族孝行ができたので、満足である。ちなみに一族のみんなは泥酔するほど飲んだらしい。ちなみに私は未成年のためオレンジジュースを飲んで、早々に退散した。


スーパードラッグの大杉さんと伯父の一郎さんでどっちが先に酔っぱらうか対決をして、最後なぜか宴会場で二人仲良く一緒に寝てしまったのは、後日笑い話として語り継がれるだろうと思った。



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1999.3  投資会社立ち上げ

1999.3  高校卒業

1999.4  投資会社 名古屋駅前に本社移転

1999.5-7 親族や佐藤さんなど即戦力入社  

1999.8  不動産会社買収  

1999.9  システム部門立上 システム開発開始

1999.10  薬局/病院資本参入    

1999.11  病院/専門学校買収

1999.12  管理会社設立





第3章完となります。ここまでお付き合いして頂きありがとうございます。

また感想もありがとうございます。


2000年に入る第4章執筆中です。少しだけお時間を頂きます。

1週間ぐらいを予定してますので、開始まで少々お待ちください。

尚、次の更新は3章に出た人物と組織を記載します。

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