第3章―会社発展編 第29話 初のIPO参加 【1999.11】 【1999年11月】
11月中旬、かなり寒くなってきた日に、証券会社の法人担当営業より電話を頂いた。
「社長、I社が12月14日に株式上場に向けてIPOを行うのですが、如何でしょうか。おそらく人気のコンピュータ関連銘柄の会社ですので、抽選になると思います。社長はIPOに申し込まれますか。もし申し込まれるのなら、内緒話ですが優先的にIPO株を回しますよ。」
IPOとは、株を投資家に売り出して、証券取引所に上場し、誰でも株取引ができるようにすることである。しかしながら、新規上場の株はどうしても公開株数が絞られる為、需要と供給と一致しないのが常である。そのため買いたいと考える人たちが申し込んで抽選で手に入る株の事を指す言葉である。
しかし単純に誰でも申し込めるものではない。新規公開する会社の上場にあたって株の引受証券会社に口座があって初めて申し込める土俵に立てるってことになるので非常に複雑である。また口座があっても一般の投資家が抽選で手に入れる事ができるかは謎である。その手前で大口のお客様に対して、優先的にIPO株を渡しても一般の投資家にはわからないのが現状である。最近は透明性の意味も込めて恐らく優先権はないと信じたいものである。
証券会社の法人営業から話を聞いたところによると公開価格は、まだ応募数によって若干変動があるものの2万円前後で250万株公開公募するとのことだ。公開しない株は1550万株とのことで全体の16%が公開公募される感じでわりと狭い門の感じがする。
IPO株は、高い確率で利益が出やすいのである。上場会社も公開価格より下がるということは、世間の評価が低いと認識されてしまうので、引受証券会社も想定より少し低めに設定して、公開価格より株式の市場価格が少し上になるようにするのが一般的である。
応募開始後、コンピュータ関連の会社なので多くの一般投資家から応募があった為に想定の2万円より高く公開価格2.2万円となった。IPO株の欠点は申し込んでから上場日まで申し込んだ金額は、株を購入する金額のため、その金額分は株式購入まで買ったり売ったりができない期間が発生することとなる。
今回1万株を優先的に購入する事ができたので、2.2憶円を申し込んだ日から、上場初日の12月14日まで買ったり売ったりすることができない期間となる。
12月14日当日、I社の経営陣は、東京証券取引所で鐘を鳴らしていると思う。テレビでよくやっている鐘を鳴らしているときに多数の人がいるときは、その日に上場する会社の関係者である。まぁ気にしなければ、気づかない話でもある。
上場する会社にとっては一生に一度あるかないかの晴れ舞台である。数年間上場のために寝る間も惜しんで資料作成をした関係部署の日の目を見る場でもある。
株式市場開始直後、話題のコンピュータ関連の株のため、公開価格22,000円の公開価格から、売買が一向に成立せずに価格が上がっていく一方となる。とうとうその日は、成行買が多く売買が成立せずにストップ高となった。公開価格のストップ高は2.3倍となるので50,600円でも売買が成立がしなかったのである。
翌日も50,600円スタートとなり、54,000円を超えたあたりで成行買と成行売が拮抗して、売買が成立間際に一気に持ち株である株1万株を成行売に出した。私が売り出した株は売買が成立したが、今度は成行売が一方的に多くなった。IPO株を価格が成立した瞬間に売ろうとした投資家が狼狽売りに走った為に今度はストップ安になりそうだった。市場に上場したばかりの株は適正な価格の見極めが難しく上下変動が激しい事が多い。
前日から一転、2日目の最高値55,000円を超える瞬間に成立した後、売り浴びせたので2日目のスタート価格の50,600円を下回る価格となったが、45,000円の壁を境に売りと買いがせめぎ合う状態となったので、価格が落ち着いた格好となった。上場したばかりのIPO株は、上下変動が通常より激しいため、投資家が眼を凝らして1分1秒を株のチャートをじっと見てる状態となる。
株を1日寝かしたことによって55,000円付近で1万株売れた。一括ではなくて54,500~55,000円付近での分割売却のため、約5.4億円となった。2.2億円の投資だったため、大きく儲けたが”未来ネット”によってどの銘柄が上がるかわかる俺としては、IPO株は、公開日まで株を売買できなく効率が悪いし、それにIPO株の持っている自分の全株をどこかのタイミングで、一括売却をして価格を大幅に下げる事は、証券会社としてもマイナスにしかならないので、法人営業の担当も今後はあまり紹介してくれないかもしれない。
やり過ぎ感はあったが、IPO株の初めての売買として、とても経験になった数日であった。
ちなみに同じIPOでも時間がさかのぼる事、10月の話だが、飲食店を運営しているK社が店頭公開された。自分のお財布でこの銘柄の株を買っておいた。この会社は上場してから僕が知っている未来まで20年間、毎年年間4万円分の株主優待がもらえる為、優待分だけでも十分にプラスになる。とても投資家にとって美味しい会社のため、個人名義で優待は有意義に使いたいものである。外食はここで決まり。
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1999.3 投資会社立ち上げ
1999.3 高校卒業
1999.4 投資会社 名古屋駅前に本社移転
1999.5-7 親族や佐藤さんなど即戦力入社
1999.8 不動産会社買収
1999.9 システム部門立上 システム開発開始
1999.10 薬局/病院資本参入
1999.11 病院/専門学校買収
筆者の実体験だが、最後に記載した会社の子会社を持っており、つい先日優待の半減を発表して株価が暴落したが、優待がありがたいので株価を気にせずに持ち続けます。買った時より、現時点の株価がマイナスかプラスかは、謎です。この小説はフィクションです。株の売買は自己責任でお願いします。
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