第3章―会社発展編 第23話 薬局/病院資本参入 【1999年10月】
毎日の株式取引の売買も問題なく進み、資金も順調に増えており、会社の運用資金は潤沢になりつつあった。そんな時に元銀行員であった次郎さんから新たな話を銀行から頂いてきてくれた。
「前職の銀行さんから、2案件分の会社に資金を導入しませんかと話を頂きましたが、どうされます?」
「おっ、いいですね。どんな会社ですか?」
「一件目がSS薬局ですね。SS薬局さんは店舗を一気に広げすぎたんですが、内部の不祥事が警察にばれて、刑事事件が起こり、銀行が手のひら返して資金の回収に回り始めて、銀行とは険悪な関係になってるらしいんですよ。」
(え、SS薬局って、前世では全国区の薬局やん。20年経過した時に全国上位を争う位置にいる会社だったはず。ここで問題になってもうまく取引銀行を切り替えて乗り越えていくのかな。あんまり知らないが、これは先方が資金を確保する前に動く必要があるな。主要銀行を取り替える前にうちの会社が引き取れば、めちゃお得な案件ではないか。)
次郎さんは、懐のメモ帳を取り出し読み始めた。
「ここも前回買収できた不動産会社と同様に同族経営ですが、前回買収した不動産会社と今後の方針は異なっており、経営陣は、引き続き薬局の経営をしたいって聞いています。借金分の資金を融資してくれるような会社を探しております。」
私はどんな条件なら先方が受けてくれるか考えながら答えた。
「銀行が回収する資金を銀行に代わって融資するのとSS薬局の株の50%を先方から買い取りって条件でどうでしょうか。
半分の株式を買い取った後も、経営陣の入れ替えなどの人事権に口出しをしない約束と私ともう1名を非常勤の取締役にして、他一名監査役として入れてもらうのを条件にしましょうか。
もちろん、私を含めた非常勤で入る方の給料は無給でいいと、ただ不祥事を起こしているので会社の名前だけは変更する必要があると伝えてください。」
私は、次郎さんがメモ書きをしている中、弊社から出せる条件を立て続けに出していった。
薬局の企業買取は案件があまり少ないので慎重に進める必要があったが、融資先の銀行が見つかる前に傘下に入れたいと考えた。
「分かりました。それぐらいの条件であれば話をしてみる価値があると思います。」
メモを書き終わった後、私の方に顔を上げて答えた。
続けて次郎さんはメモ帳の前のページを読み返しながら話し続けた。
「2件目は、病院です。赤字経営の中、2000年問題を先延ばししており、システムの改修を放置した事によって、すべてのシステムを切替しないといけなくなった会社です。その費用が工面できなく、また建物が老朽化しており近いうちに建て替えが必須となっている病院です。建て替えに2億程度を想定してます。またシステム切替費用1億の病院です。場所は駅前なので資金さえあれば、運用は問題ないとは思います。」
「駅前で赤字経営って、どんぶり勘定過ぎるのでは?それとも横領でもしている人でもいるのか?経営にしっかりした人を入れて挽回できると思うのでこれも買い取る方向で進めてください。後赤字になっている原因を確認しておいてください。」
私は、駅前の一等地の病院の話を吃驚しながら答えた。
「了解しました。しかしうちの会社に病院は必要なのでしょうか。」
「当面は相乗効果が見込めない無理な投資かもしれませんが、今後の展開次第で必要となってくるはずです。病院には資金提供で経営にタッチできるように手配をお願いします。」
「分かりました。とりあえず2案件とも進めますね。」
すぐに薬局の経営陣とアポイントを取ることができたため、会社内で俺と次郎さんでSS薬局の経営陣に来てもらい打ち合わせを行った。
SS薬局の社長が打ち合わせ始めから、投資をしようとするうちの会社相手に釘をさすような発言をしてきた。
「今回資金援助を考えて頂きありがとう。ただ私は資金援助して頂くとはいえ、あなたたちに弊社の経営をタッチはしてほしくないと考えていますが、それでもよろしいですか。」
「経営にタッチとは、どこまでの部分を言うかわかりませんが、弊社が口を出した時には、いやならきっぱりと断ってくれれば結構です。それに対して私どもは納得して頂けるよう根気よく提案をしますし、お互いに妥協できる部分を探していきます。また弊社の不動産部門から出店場所の提案をさせてほしい。一緒に全国展開して業界1位を目指してほしい。」
「業界1位までは考えませんが、全国展開は中期計画で考えており、5年後には県外に多数出店ができるよう目指しておりました。そのためにも今回三河地区に新たな物流センターを完成させたからね。物流センターを人任せにした結果、ケチがついてしまったんですけどね。」
先方は驚いた顔をしながら、先ほどまでとは違い少し悔しそうな口調で返答をくれた。
「でしたら全国展開の資金援助をしたく、資金面の援助を積極的に進めたい。できれば不祥事によってマイナスイメージもありますので薬局名の名前を弊社の名前であるAtoB薬局にして頂けないでしょうか。」
厳しい話が続くと思ったが支援内容の大筋を合意する事ができた。
SS薬局は名前をAtoB薬局として前世の流れよりさらに発展していけるよう手助けできれば業界1位も目指せると思う。
同時期に依頼があった病院に関しては逆に経営に参画してほしいとの依頼で、経理も含めて数人送り込めるよう手配を行った。
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1999.3 投資会社立ち上げ
1999.3 高校卒業
1999.4 投資会社 名古屋駅前に本社移転
1999.5-7 親族や佐藤さんなど即戦力入社
1999.8 不動産会社買収
1999.9 システム部門立上 システム開発開始
1999.10 薬局/病院資本参入
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