第2章―会社創業編 第18話 不動産営業の1日(不動産営業side)
おれは、中途採用で同族経営されていた未上場ではあるが、50人規模の不動産会社に採用された。前職は大手不動産会社だったが、ノルマが厳しすぎた。優秀なやつばかりの中、それなりの営業成績を維持するのも休み関係なしで仕事するしかなかった。家族ができた中、家族を優先する仕事をするには、前の会社は退職するしかなかった。
新しい不動産会社に中途入社した為、同期はいないが前の会社の経験から、家族を優先しながらもそれなりの実績をこなす事ができた。会社の中では,営業メンバーの一人として、そして一家の大黒柱として頑張ってきた。新しい不動産会社は、土日出勤で平日の火曜・水曜が休みとなり、平日の休みは嫌だなと思いながらもこの業界は平日休みとなる。そこまで不満はなく仕事をこなしてきた。家族優先で適度に休みを頂くことができるし、子供とたまには土日に有給を取り遊びに行けて充実を感じていた。
しいて言うなら、50人規模の会社ということもあり運営資金の余裕があまりないので、宅地開発や大規模マンションなどの開発はないものの建売住宅の販売や中規模マンションでも規模は小さいながら、俺としてはやりがいはあって問題はなかった。
最近、「会社の資金が切羽詰まっているのではないか。または身売りするのではないか。」ときな臭い噂を同僚から聞く事があった。おれの営業の業務には関係ないので気にしていなかったが、ある日の朝、見たことない人が数人会社にきた。
上司の部長から、会議室に集まるように言われ、みんなが集まる中、全体会議にて社長が申し訳なさそうな感じで話始めた。
「みんなの努力で黒字経営はできていたが、取引先の会社の一つが倒産して手形が不渡りとなり、支払う予定だったお金が足りなくなった。そのため資金操りに支障をきたしてしまった。このタイミングを機に弊社の事業を譲渡する事にした。みんなにはいきなりの事で申し訳ない。雇用契約はもちろん新しい会社にそのまま引き継がれる事は約束しよう。そのため従来通りこの場所で働いて頂く予定だ。みんなには申し訳ないが、責任を取って私たち一族は経営から退く予定なので、今後の詳細は会社を引き継いでくれる方達からお話をしてもらいます。」
若干みんなが集まった時点でそんな気もしたが、実際社長が発表をされると衝撃だった。
会議の場で社長の隣にいた貫禄のある方が話始めた。後日この方は経営を担う投資会社の幹部の一郎さんと聞いた。
「この不動産会社を今回事業譲渡して頂く会社から来ております。この会社の従業員の皆様には、今まで通り仕事をやってもらいます。会社自体は新会社に引き継ぐ予定です。営業部長と総務部長などの役職付きの方には役職は下がって頂くこととなりますが、給与体系は同じ予定です。会社は新しい名前で立ち上げます。尚、今の会社名はブランド名として存続させる予定で、お隣の社長さんにも了解を取っております。」
業務内容を引き継いでくれることは約束してくれたが、いきなり切り出されて、俺も含めて社員みんなが動揺した。
(まじかよ。新しい会社ってブラックだったら、早く辞めないといかん。どうしよう。家族と相談しなければ。)
そんな心の声を聞こえたように、相手は一呼吸を置いて発言を続けた。
「私どもの買い取った会社は、投資会社となります。給与体系・労働時間を含めた雇用条件は、今度の3月までは現状と同じです。3月中に過去の結果を踏まえて個別に面談を設けますが、4月以降の給料は基本悪くすることは考えておりません。営業の方に対しては、歩合制の割合が変わってくるなどのコアとなる部分の話が必要と思います。一人一人と話していきますので、疑問に思ったことはその都度、私にお聞きください。」
「私の前職は、不動産会社に勤務しておりましたのでこの会社と風土が違えど、業界のお話ができると思います。今後は、名称を変えて新会社で全国展開を考えていきます。それに伴い会社規模も大きくして、採用するメンバーも増やしていきますので、社員さんを今後も増やしていく以上、皆様にも継続して勤務して頂くよう再度お願いします。」
(この会社で規模が大きくしていきたいのか。また前職の会社みたいに大変になるのかな。まぁ今後の事に関しては、面談で内容を聞いて決めるか。ブラックでなければ、どうにかなるかな。転職活動ってめんどいんだよね。そして上の一族がいなくなるって会社の雰囲気がよくなるかもしれないし。)
今日来た人は話の中で労働待遇は悪くならないと言っているので、個別面談までは気軽に考える事にした。
数週間が過ぎても特に問題なく今まで通り仕事を進める事ができた。経営陣に一族が消えた事も逆に風通しを良くしたと今では思っている。
それに今までは資金に余裕がなかった為に宅地開発や大規模マンション設計などができそうな土地は、大手に土地を売却していたが、それも自前で開発できるぐらいの運営資金があるもしくは銀行からの貸し出し資金の上限が大きく変わったとのことだ。今まで考えてこなかった大規模の宅地建設をやってみたいと思えてしまい、やる気をさらに出せるようになった。
売却前の会社では、営業の勤務給与は固定7の歩合3だった。結局比率は変わらなかったが、歩合分の給料の上限が無くなった。去年と同じ業績を今年に充てると1.2倍の給与となる見込みだ。ただ、全国展開するとのことで転勤が可能とする場合は、もう少し給与に色を付けてくれるといいことづくめだった。家族もいるので転勤は考えてないが、若手のみんなは転勤を含めた給与体系にすると聞いている。
売却される前は会社でのんびりやっていくつもりだったが、売却後給料の上限が撤廃される以上、家族のためにやる気がみなぎってきた。忘れていた新入社員当時の気持ちとなりまた頑張ってみるかと昔の意気込みがよみがえってきた。
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1999.3 投資会社立ち上げ
1999.3 高校卒業
1999.4 投資会社 名古屋駅前に本社移転
1999.5-7 親族や佐藤さんなど入社
1999.8 不動産会社買収
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第2章完となります。ここまでお付き合いして頂きありがとうございます。
また感想もありがとうございます。
引き続き 第3章 お楽しみいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
幕間 【1997年夏】
人物-
梅田和久:この物語の主人公。前回の人生ではブラック企業から抜け出せず、過労により見たことない世界で助言を頂き、2回目の人生に挑戦中
おじいちゃん:県庁の元職員で出向にて、研修センターにてセンター長として働いていたが退職後、家で畑仕事するなり時間をつぶしていた。前回の人生ではセンター長退職後、仕事燃え尽き症候群により、晩年アルツハイマーを発生し亡くなった。今回の人生では孫を応援しながら仕事を手伝っている。
梅田俊和:主人公のお父さん。大手電気通信メーカーにて勤務。前回の人生では、派閥争いに敗れ子会社に出向後退職し、のんびり趣味の旅行を行き老後を楽しんでいた。今回の人生では、息子の会社に転職し働くことになる。
松田一郎:伯父さん。お母さんの一番上のお兄さん。大手不動産会社に親の代から2代続けて就職しており、支社長を務め退職。前回の人生では、悠々自適な畑などを耕して、老後を生活していた。今回の人生では、退職後甥っ子の会社に入社、主人公の番頭の立ち位置になり、仕事をする。大の野球好きで息子二人とも高校球児。
竹田次郎:伯父さん。お母さんのすぐ2番目の兄。地方銀行の支店長。今回の人生では、退職後甥っ子の会社に入社。
佐藤部長:Y証券名古屋支店で支店長をしていたが倒産後、2年間別業態で働いてみたが株関連が好きだったらしく同じような仕事を探していた時にうちの会社を見つけて転職をした。
-AtoB投資会社役職-
会長:おじいちゃん
社長:梅田和久
専務:松田一郎(伯父) 不動産事業担当
常務:竹田次郎(伯父) 管理部門担当
平 :梅田俊和(父)
-会社-
AtoB投資会社立ち上げ1999年3月15日設立
・投資部門-国内投資課(運用資産40億円)
・管理部門-(自社と不動産会社管理)
傘下:AtoB不動産会社【担当:伯父の一郎さん】
・不動産部門
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