第1章―会社設立編 第9話 口座資金第1目標達成        【1999年2月】


 昨日のストップ高で成立しなかった俺の購入銘柄。本日も株式市場が開いても230円から310円にストップ高になってもやはり買いが多く取引が成立しない状態が続いた。昨日よりも成行買いが若干少なくなっていたが、まだ成行売りよりも成行買いが多い状況となっている。


このまま株を持っていれば、売却した時に口座残高は増加するが、少しでも早く以前から目標にしていた500万円まで口座残高の資金を増やしたいと感じた。


(そうだ、信用取引だ。それで当分の間、俺の口座残高を増やして、目標まで貯めたら信用取引から現物取引に戻せばいいんだ。目標金額への到達を早めに目指すなら、空売りも織り交ぜながら進めるか。)



さっそくパソコンを覗いてN証券の信用取引を調べ始めた。

保証金が30%だったので今の株を元手に毎日頑張って信用取引で売買すれば、残高が増えていけるのではと考えた。保証金30万円を元手に100万円まで借りる事ができ、その借りた100万円で株取引ができる内容だ。

残高500万円を第1目標定めているので、達成後は親に相談しながら今後の展開を考えていくことに決めた。



翌日、ストップ高が続いて連日のストップ高で390円となった。ストップ高のまま取引は成立しない状態だったが、持ち株の1,000株を売却した。4日間で39万円になったが、今回儲かった元手を全額信用取引の保証金に切り替えた。そのため130万分までの株が購入できるようになった。


土日を挟んで月曜日にストップ高になる中で1株170円の銘柄に眼をつけ、170円付近でまとめて7,000株を購入してみた。

170円でストップ高は、1日50円だから。1日で株価が220円となり、持ち株の残高が35万も増える見込みだ。口座残高が少ない間は、購入株数も少ないので、どんどん買ったり売ったりしながら資金を増やしていくしかないな。


同じような感じで翌日にストップ高になる銘柄を購入して、翌日にストップ高で売却するを繰り返すことによって1カ月もしたら口座残高が500万円となった。この口座残高は以前から決めていた第1目標だった。

口座残高が500万円に到達した次の日に、夕食を食べているときに家族に向かって話を切り出した。


「父さん、おじいちゃん、明後日の土曜日の夕食後って時間ある?」

「空いてるから、いいぞ。」

「お前からの話とは珍しいな。わかった。」

それぞれから返事が返ってきた。


「夕食を食べた後に、おじいちゃんの部屋にて話すので集合ね。」

すぐに返事が返ってきて拍子抜けしながら、時間の約束をした。


土曜日までの間にさらに株の売買を進めて資金を増やしておくことに成功した。また今後の必要経費として証券口座から100万程を銀行口座に振り替えておいた。

土曜日当日、夜の打ち合わせの前に、もう一つ確かめたかったことがあった。株以外のギャンブルもうまくいくか確かめねばと思った。




土曜日の早朝から銀行に行き、銀行口座から100万円を卸して場外馬券場がある場所に到着した。雨が降ってなく晴天の絶好のお散歩日和であった。

煙草をふかした賭け事が好きなおじいちゃんが大勢、地下鉄の駅前から場外馬券場に向かって歩いていた。

俺はその中に紛れて馬券を買おうと列に並んだ。明日の競馬の10レースを各10万円を単勝・複勝に分けて購入をしようと並んでみた。もちろん事前にアイパッドの“未来ネット”で結果をメモってきた。並んでいた中、30分ほど時間がたって列の先頭付近になったときに、ふと壁際のチラシに気づいた。

チラシには「20歳未満の購入は禁止」と書かれていた。


「マジか。俺って馬鹿だ。俺の時間返せ。」


並んでいた俺は、並ぶのを辞めてショックで立ち尽くした。今度は父さんと一緒に来るか。いや、20歳まで我慢するか。さすがに当たり馬券を父さんに説明して納得させるには、無理があるな。

調べもせずに場外馬券場に来てしまった。自分の愚かさ加減を呪いながら帰宅の途についた。そういえば前世でも馬券買ったことなかったのでそこまで気が回らなかったなと思った。


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