天使がゴーレムになって戻って来ました〜虐げてきた家族とは決別し、私は幸せになります〜

仲村 嘉高

第0話:プロローグ




 可もなく不可もなく。

 それが世間が評価するファビウス伯爵家である。


 そこの長女はピンクゴールドの巻き髪が自慢の、常に笑顔の社交的で華やかな令嬢である。

 対して次女は、真っ直ぐな銀髪で表情が乏しく、美人ではあるがどこか影のある内向的な令嬢だ。


 どちらを婚約者にしたいかと問われれば、十人中十人が長女と答えるであろう。

 それなのになぜか長女には婚約者がおらず、次女には伯爵家三男の婚約者がいた。

 この婚約は幼い頃に決められたもので、当然本人達の意思は介入していなかった。


 ファビウス伯爵家には男児がおらず、姉妹のどちらかが婿をとる事に決まっている。

 華やかで社交的な長女は高位の婚姻相手が望めるからか、次女が婿をとって伯爵家を継ぐらしい。


 そう同年代の者達は納得していた。


 それがくつがえされたのは、学年が変わる前の終業式の日に行われるパーティーの場だった。

 長女と次女の婚約者は現在2年生。次女は1年生であり、長期休暇の後はそれぞれが学年を一つ上げる事になる。


 長女を伴って会場に姿を現した次女の婚約者は、自身の婚約者の前に立った。

 普通の婚約者同士よりも距離が近い長女と次女の婚約者。

 婚約者というよりも、既に夫婦のような距離感である。


 それを冷めた目で見つめる次女。

 これが本日のみならず、常に行われている事なのだと周りの生徒達の眉間に皺が寄った。



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