第32話 最後の作戦会議
家に戻るとまだ香織が居た。
「姫乃に会ったの?」
「うん。全て思い出したから」
「そう……で、どうするの?」
「約束通り、大学生になってから付き合うよ」
「そっか。圭はそれでいいの?」
「うん」
「そう。あんたがそれでいいなら、いいけど。でも、姫乃は大事にしなよ」
「分かってる。浮気とかしないから」
「頑張って。じゃあ、帰るね」
香織は帰って行った。
◇◇◇
翌日は体育祭の代休で休日だった。その日の夕方、俺は告白作戦会議のメンバーを例のファミレスに呼び出した。会議の解散を告げるためだ。
参加者はもちろん、司令の永井巧、副司令の福原里美、参謀長の内田真理、それに一等兵の俺だ。
俺は昨日思い出したこと。そして、告白はもう辞めることを説明した。
「そっか。姫乃ちゃんは子どもの頃の約束にこだわってるんだねえ」
「ああ、それだけのことだったみたいだ」
「じゃあ、仕方ないね」
「うん。あ、それと内田さんに彼氏が居ること、姫乃に言ったから。安心させたくて」
「そっか。別にいいけど……私、別れちゃったんだ」
「「「えー!?」」」
内田さんの告白に全員が驚いた。
「えっと、俺のせいじゃないよね?」
「違うよ。もう、少し前から一緒に居ても楽しくなくなってたし。別れるしかなかったと思う。この作戦の影響は全然無いから」
「そうか、なら良かった……のかな」
「でも、今度は真理ちゃんが別れたことを秘密にしなきゃ。それを知ったら姫乃ちゃんが……」
福原が言いたいことは分かった。
「確かに。めっちゃ嫉妬してきそうだよな。うん、これはトップシークレットにしよう」
「でも、前にも言ったけど、姫乃ちゃん、告白されなくなってきっと悲しむと思う」
「あー、そういうことは言ってたな」
「でしょ?」
「うん。俺たちはただの幼馴染みに戻るわけだからな。特別では無くなる」
「二宮さんのよりどころがなくなるよね。心配……」
内田さんも姫乃のことを心配してくれていた。
「そうだな、だが、それを解決するいい考えがある」
「「「司令!」」」
永井司令の言葉に全員が声をそろえた。
「おそらく、最後の作戦になるだろう」
「まだ、作戦やるのかよ」
「うむ。問題は解決していないだろ」
「そうだけど……」
「安心しろ。だが、この作戦を行うには資金が必要だ」
「資金か。どれぐらいだ?」
「そうだな、一般に給料の三ヶ月分と言われている」
「給料? 高校生だから無いぞ」
「だからここから来月1日までに全力で稼ぐんだ」
「誰が?」
「佐原に決まってるだろ。他人の金で買おうとするなよ」
「何をだよ」
「指輪だ」
「はあ?」
「もちろん、ちゃんとしたものは社会人になってからで良いだろう。今、自分に出来る全力で用意するんだ。そして、最後の作戦を11月1日に発動する」
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