第17話 6月30日

 そして、この後、俺と内田さんは教室でよく話すようになった。決していちゃいちゃはしていない……と思う。しかし、効果はてき面だった。姫乃は会話を邪魔してきたり、にらんできたりと。やきもちなのかは分からないが、とにかくイライラしていたようだ。


 そして、いつもなら告白を行う7月1日の前日。6月30日、事件は起こった。


 昼休み、いつものように俺と内田さんがいちゃいちゃ……じゃなかった通常の会話をしていると、取り巻き達と話していた姫乃が突然俺を呼んだ。


「圭、ちょっと来て!」


 仕方なく俺は姫乃たちの席に近づく。


「なんだよ」


「明日、忘れないでね」


 前日なのに姫乃が告白のことを言ってくるなんて初めてだ。


「なに? 明日何かあるの?」


 取り巻きの一人、中川結衣が姫乃に聞く。


「うん。明日、圭が私に告白するの」


「「「ええーー!」」」


 取り巻き達が大声を出した。彼女たちは俺が何回も告白しているのは知っていたが毎月1日に告白していることは知らなかったようだ。


「しないよ。告白はしない」


 俺は言った。作戦でしないことになっているから言ってもいいだろう、


「なんでよ。明日1日でしょ。圭はね、毎月1日に私に告白してるのよ」


「え、毎月1日? 今月もされたの?


「そうよ。断ったけどね」


「え! じゃあ、今までもずっと?」


「うん。圭は私のこと大好きだから。あきらめきれないの。ね?」


「うわー、一途……」

「姫乃ちゃん、やっぱりすごいね」


 取り巻き達が騒いでいる。それにしても、すごいのは姫乃じゃ無くて俺だと思うのだが。

 その騒ぎに負けず、俺は言った。


「でも明日はしない。もう1日には告白しない」


 俺ははっきり言った。


「え、なんで? あ、もしかして……」


 中川が言う。


「なんだよ」


「内田さんに乗り換えた?」


「!!」


 姫乃が俺をにらんできた。


「違う。そうじゃない。でも、姫乃が告白を受け入れないならしても無意味だろ」


 俺がそういうと姫乃は黙っている。


 俺は席に戻ろうとした。


「圭!」


「なんだよ」


 俺が振り向く。


「ほんとにしないの?」


「……うん、ほんとにしない」


「そう。わかった」


 姫乃は沈んだ風に言った。

 俺は構わず席に戻ろうとする。すると、後ろから取り巻き達の声が聞こえてきた。


「姫乃ちゃん、大丈夫?」

「佐原のやつ、ひどいよね」


 姫乃を慰めているようた。

 俺は構わず席に戻った。すると、内田さんが小声で言った。


「大丈夫かな。ちょっとやりすぎてない?」


「大丈夫。内田さんは気にしないで。作戦なんだから」


「そうだけど……。司令に聞いてみよう」


 内田さんがスマホでメッセージを送っている。すると、同じ教室に居る永井からメッセージが帰ってきた。


永井『作戦は順調に進行している。問題ない』


 そうだといいが・・・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る