空が青空であるように・・・。

猫野 尻尾

第1話:男と女の心理。

一話完結。


「呼び出してごめん」


「なに?話って?」


「あのさ・・・僕、前から奈緒ちゃんのことが好きだったんだ」

「だから、よかったら僕と付き合って欲しい?・・・」


その日は空が吸い込まれそうなくらい青かった。

いいことがありそうな予感がした。


僕の名前は「大崎 修平おおさき しゅうへい」高校生男子。


僕には好きな子がいた。

同じクラスの「小坂 奈緒こさか なお


最初はいいなって、あこがれみたいに彼女を見ていた。

そのうち、彼女が心から離れなくなった。

寝ても覚めても奈緒・・・奈緒ちゃん。

奈緒とデートしてるシーンを想像してニヤニヤしてる自分がいる。


想いが募れば好きだと言葉にしなきゃいられなくなる。

だから勇気を振り絞って想いを奈緒に告白した。


彼女の答えは・・・。


毎日の下校時、僕はひとりだったけど、その日からふたりになった。


学校が休みの時も僕の横に奈緒がいた。

僕には姉妹がいないから女性ってどういうものかまったく知らない。

好きだって言ったものの、どう接したらいいのか戸惑うばかり。

でも奈緒が積極的で明るい子だから助かった。


奈緒のそばに寄ると、その柔らかな肌と温もりが心地よく僕に伝わってくる。

彼女の息遣い・・・吐息にため息、奈緒がため息をつくたび、その唇を奪い

たくなる。

その思いがすごく新鮮でクゾクする。


僕とは違う異性・・・生理的に違う僕たち・・・だから戸惑うこともある。

女の子って普段、なにを思ってなにを考えてるんだろう?


僕は女性に対して美化したがる傾向にあるようだ。

それは、たぶん僕が育った環境にあるんだろう。

母親が潔癖な人だった。


不道徳なものや不謹慎なものや、ふしだらなものを嫌った。

美しいものだけを愛でる、そう言う人だった。

そんな母親に育てられた僕も、そんな性格に準じたみたいだ。


だから女性に対しても綺麗な理想、イメージを描くようになった。

女性に不純な思いを寄せるのは罪悪だと思っていた。


だけど友人ができ、性に関して知るにつれ男である僕は異性に興味を

示し始めるようになった。

それは動物としてのオスとしての覚醒だったんだろう。


ある朝、目が覚め起きてズボンを履こうとしたらパンツが濡れていた。

なんだ、漏らしたのかって思って触ってみたらヌルヌルしていた。

恥ずかしかったけど、それを母親に言ったらなぜか喜んでくれた。


なんで?って聞いたら・・・あなたが健康な男性だからだよって

言われた。

母親としては結婚してもちゃんと子供が作れる体だよって言いたかったんだろう。


それからはもうグラビアを見ながら毎晩のように自慰にふけった。

少しの脱力とともに、その快感に溺れた。

そして少しの自己嫌悪と・・・。

だけど、それは男として普通のことなんだって、ずっと先になって分かった。

男には必要なことだって・・・。


僕に限らず男って正常な男なら好きな子で自慰するってのは普通なんだろう。

だけど僕は奈緒で、そう言うことはしたことはない。


それはたぶん僕の中で奈緒を汚したくないって思いが強いからだろう。

人に自慢げに言えないようなことに奈緒を使いたくないって思いが働く。

グラビアはあくまで架空の存在・・・汚しても自己嫌悪には陥らない。

だけど奈緒は現実に僕の前に生で存在する。


でもそんな思いの反面、奈緒を欲しい抱きたいって思ってしまうこの矛盾。

僕だけの女でしてほしい・・・独占欲が顔を出す。

束縛したい欲求・・・淫らな奈緒を味わって感じてみたい。


女性も女性の立場でエッチなことを考えるんだろうか?

好きな男のことを思って自慰なんかしたりするんだろうか?

好きな人に抱かれたいって思ってるんだろうか?

愛し合ってたら、それは普通の心理だよね・・・けっして不純じゃない。


恋人同士なら愛し合ってる仲なら、そのうちプラトニックではいられなく

なる・・・それは自然の成り行き。

最終的にセックス・・・そうなるのが自然なことなんだろう。


ある日、僕は奈緒に確かめてみた。


「奈緒・・・あのさ・・・僕、君が欲しい」


「それ、いつ言われるかなってずっと思ってた」


「え?そうなの・・・イヤかな?」


「それ聞く?」


僕は空を見上げた・・・その日も空は吸い込まれそうなくらい青かった。

いいことがありそうな予感がした。


おしまい。





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空が青空であるように・・・。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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