俺は君に再戦を求めている
柊オレオン
第1話 魔王を討伐した六英雄と残った勇者たち
魔王とは、人類の敵である。
故に討伐せずして、人類に平穏は訪れない。
そう結論を出した人類は勇者召喚を行い、魔王を討伐するための秘密兵器を用意した。
総勢30人の勇者。これをきっかけに人類は一丸となって魔王討伐に乗り出した。
魔王は魔族を束ね、人類は全種族と協力して
その中で住民たちの声から英雄と呼ばれる勇者が現れるようになった。
閃撃の英雄、アカネ・シジョウ
豊穣の英雄、サオリ・タチバナ
陰影の英雄、タクミ・カゲムラ
守護の英雄、ナナオ・タテミ
そして、大英雄、シン・アキミヤ。
大英雄シン・アキミヤを筆頭にこの6人の勇者を六英雄と世界が呼称した。
それから早1年、遂に魔王討伐の計画が本格的に始まり、人類の総攻撃が始まった。
結果は大きな犠牲のもと、六英雄たちを魔王のもとへと送り届けることに成功し、後は朗報を待つのみとなった。
そして、ついに。
『お伝えします!本作戦、六英雄たちにより、魔王討伐に成功!我々、人類の勝利です!!』
この朗報によって人類は長い戦いに終止符を打ち、勝利したのだった。
「とまあ、こんなお話。ストーリー性もキャラの魅力も何もない。つまらない話だったでしょ?」
物語を語り終えると本を閉じ、机に置いた。
「そんなことはありません、ミツバ様。六英雄の皆様、そして勇者様たちの活躍で、今我々はこうして生きているのですから。このお話も立派な歴史です」
「…………また噓をついた。そんなこと、一回も思ったことないでしょ?」
「ミツバ様、私は常に周りからよく見られたいのです」
「素直でよろしい。それでこそ、私の護衛だね」
魔王討伐から132年、人類はひと時の平穏を手に入れたがその後、すぐに魔族との争いが始まった。
だがその時にはすでに、六英雄と呼ばれた勇者たちは原因不明の消息を絶ち、現在まで争いは続いている。
「…………ホント、どこでほっつき歩いているのやら」
街中を懐かしむように覗き見るミツバはポロッと。
「茜、沙織、たくみ、天梨、七雄…………シンくん」
かつての仲間の名前をこぼした。
「外で少し散歩してみてはどうですか?少しは気分が晴れるかと」
「ありがと。でも私が外に出たら、王都中が大変になるでしょ?なんてったって、私は勇者ミツバだからね。だから、やめておく」
「たしかにミツバ様は勇者ですが、人であることに変わりありません。ですから…………」
「ありがとね。でも、大丈夫。こう見えて、もう100年生きているから。大の大人を心配するより、まず、自分のことを心配するんだね」
残された勇者24名は魔王討伐後、元の世界に戻るか、この世界に残るかの選択に迫られ、12名が元の世界に帰還し、残りの勇者は残ることを選択した。
そして、残ることを選択した勇者は魔王討伐の褒美として神から1000年も生きられる体を授かった。
その後の勇者の人生は人それぞれ、ミツバのように勇者として国に仕える者もいれば、普通の家庭を持ち生活する者など各々の人生を送っている。
とはいえ、国に仕えることを選択しなかったのは正解だ。なにせ、今は魔族との争いが絶えず、いつ駆り出されるかわからないから。
ミツバは両手で頬を叩き、心を切り替えたのか、椅子から立ち上がったときだった。
「ミツバ様!」
勇者ミツバの部屋に一人の兵士が入ってきた。
「ここは勇者ミツバ様のお部屋だぞ!声をかけず無断に入ってくるとは何事か!!」
「す、すいません!ガーラ聖騎士殿!」
「それでミツバ様に何の用だ」
「国王陛下のお言葉を伝えます。南東方向から王都サンドリアズに進軍している魔族軍を殲滅せよとのことです!!」
「南東方向だと…………しかも、魔族軍」
「わかった。すぐに向かうよ。教えてくれてありがとね」
伝令兵が部屋から去ると、ガーラ聖騎士はミツバ様へと顔を向けた。
「ミツバ様、おそらくですが」
「南東方向って王都サンドリアズを挟んで二つ、防衛線があったよね。つまり」
「ミツバ様のお考え通り、その一つが突破されたのかと」
防衛戦、それはカルノア王国の王都サンドリアズを守るために張られた防衛ライン。全方角にそれはひかれており、第一防衛線、第二防衛線が存在する。
それは魔王討伐後、突破されたことは一度もない。
「いいじゃない。久しぶりに燃えてきた。ガーラくん、すぐに準備して」
「…………わかりました。全兵力を集めておきます」
「ふっ久々の前線、相手に不足なし!見せてあげる、閃撃の英雄アカネちゃんに並ぶといわれた私の実力!!」
ミツバは両こぶしを重ね、勇者の証であるローブをまとって部屋を後にしたのだった。
その後、正式に勇者ミツバの出陣が決まり、戦況は大きく変わるだろうと思われていた傍ら、王都サンドリアズ内ではとある噂が囁かれていた。
【魔王が復活した】と。
この噂は南東方向にある防衛線の一つ、第一防衛線が突破されたことにより信憑性が増し、一瞬にして王都サンドリアズ外にまで広がり、ついにその噂が一人の青年の耳にまで届いたのだった。
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