行き倒れ
======= この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。チエを「お嬢」と呼んだり、「小町」と呼んだりしている。
楠田幸子巡査・・・チエの相棒の巡査。
堂本剛志・・・堂本クリニック院長。
衣笠温子・・・堂本クリニック看護師。
=====================================
午後4時。河原町丸太町。和菓子屋の『やまみち屋』。
「いつもお世話になってますさかいに・・・。」と、店の主人から、そばぼーろを受け取るチエは、出てきたところを後輩の楠田がフリーズしてるのを発見した。
ミニパトの前に、男が倒れていた。「何、してんの?」
チエは、しゃがんで素早く男の脈と熱を計った。「救急車。あ、堂本さんとこが近い。楠田、手伝って。」
チエは、ミニパトの後部座席に男を押し込むと、3軒先の堂本クリニックに移動した。
「オッチャン、オッチャン。急患!」と、駆け込んだ。
看護師が驚いて言った。「チエちゃん、どうしたん?」
「3軒先で倒れてた。熱中症かもしれん。」
騒ぎを聞きつけた院長が出てきて、他の患者にソファを譲らせ、男を寝かした。
「脈も熱も正常やないな。衣笠。すぐに、点滴の準備や。あ、それと、蜂に刺された後がある。それも処置せんとアカン。蜂の毒と熱中症のダブルパンチか。」
奥から出てきた看護師と衣笠看護師はストレッチャーに男を乗せた。チエと楠田も手伝った。
1時間後。茂原が、他の警察官を伴って、クリニックにやって来た。
「お嬢。持ちモンは?」茂原はチエに運転免許証と財布を渡した。
更に1時間後。つまり、午後6時。
クリニックに、警察から報せを受けた、西陣温子がやって来た。
西陣温子は、元祖西陣屋の社長だ。元祖西陣屋は、西陣織で有名な店だ。
「裏の川で作業した後、得意先回るって聞いてました。そこの、やまみち屋さんで、よう、そばぼーろ買ってました。」
「やまみち屋さんの前で倒れたのは、偶然やなかったんや。買いに来て、蜂の毒が回ったんやな。」
「ばらさん、この辺にライトバンあるんとちゃうかな?ちょっと探してくる。」と言って、チエが出ようとすると、楠田から警察無線が入った。
「駐車場の近くの電信柱にライトバンが追突しています。車検証の名前が、西陣さんです。」
鑑識が到着し、ライトバンから、蜂の死骸が見つかった。
ミツバチだった。堂本医師は、「スズメバチでなくて良かった。ミツバチみたいやから、アナフィラキシーショックも起る可能性無いやろ。」と言った。
午後7時。神代家。
「メシの前に、そばぼーろばっかり食べたら、へえ出るで。」
「へえ、さよか。なあ、ちゃん。堂本のオッチャンな。彼氏出来たら報告しいや、って言うてた。ウチの許嫁のこと知らんの?」「知ってて言うてるな。」
「好かん、たこ焼き。」「なんや、それ。」
チエは、今でも父と小学生ごっこ出来るのが嬉しかった。
―完―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます