葵祭
===== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、祇園交番に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。チエを「お嬢」と呼んだり、「小町」と呼んだりしている。
=====================================
※葵祭
薫風が心地良い5月。下鴨神社と上賀茂神社の例祭である葵祭が行われます。葵祭と祇園祭、時代祭の三つを「京都三大祭」といいます。正式には「賀茂祭」といわれる葵祭は、平安時代の優雅な王朝装束に葵の葉を飾った行列で知られています。京都御所から下鴨神社を経て上賀茂神社へと向かいます。斎王代の腰輿(およよ)を含む行列は総勢500人を超え、長さは1キロにも及びます。また、行列当日までには下鴨神社・上賀茂神社両社にてさまざまな前儀が行われます。2023年は5月16日に行われましたが、2024年は5月15日に行われました。他の地方のお祭りと違って、雨天順延が基本です。
2023年5月16日。午前11時40分。下鴨神社近く。
『暴れん坊小町』ことチエは、葵祭警護の応援で、行列に随行していた。
このお祭りの斎王代を勤めたことがあるので、『小町』、乱暴者なので、その前に『暴れん坊』のあだ名がついたチエは、『後輩』の警備に2つ返事で引き受けた。
突然、群衆の中から外国人が飛び出した。リュックを背負った青年は、何かを携帯していて、足早に腰輿に近づいた。
女性警察官の姿ではあっても、チエは駿足だ。一気に走って行って、若者の前に立ちはだかった。
タックルして来た若者をラリアートで倒したチエは送襟絞めで、落した。
観衆の中から拍手が起った。
午後4時半。東山署。
「そやから、乱暴はイカンって、日頃から言うてるやろ?そんなことやから、『暴れん坊小町』言われるんや。少しは自覚があるんか?」
「緊急事態やないか。何年署長やってんねん!はげ親父!」
「なんやとう!!」「まあまあ。」
署内に罵声が轟いていた。
署長室。
壁際のテーブルの上に立ち、壁に向かって罵声を投げている、署長とチエ(小町)。
小町は、さっき切った爪を研いでいる。
後方から、茂原刑事と船越副署長が腕を組んで見守っている。
「署員には、見せられんなあ。」「芝居に磨きがかかって来たね、バラさん。」
小町がラリアートしたことに、不審者の外国人が呼んだ弁護士が追求したので、『アリバイ作り』をしているのだ。
「墨汁持ってたしなあ。それ位しかお嬢にケチつけるとこ無かったんやな。」と、船越が言った。
「まあ、無事に終って良かったですわ。斎王代さんに墨かけて、何を主張したかったんやろ。宗教の自由って知らんのかな?」
2人がひそひそ話していると、ドアの外から女性警察官が声をかけた。
「あのう。マスコミさんが取材したいって、言うテはりますけど。」
副署長は、嫌な顔を茂原に向けた後、「はいはい、只今。」と言って、出て行った。
「もうええんチャイます?パトロール、行ってきますわ。」と、小町を横目に見ながら、茂原も出て行った。
「チエ。今夜、湯豆腐にしょうか?」「うん。」
のどかな一日。それが、神代署長の願いだった。誰にも言わないが、署長は今でもチエを溺愛している為、一緒にお風呂に入って、一緒の布団で寝ている。
―完―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます