ちっぱい先輩VS

スミンズ

新入社員は私の上をゆく

 私は危うく舌を噛むところだった。


 オフィスに現れた今年の新入社員達。私を含めて15人くらいのそこまで大きく無いこの支店にどうやら今年は3人も入社するそうだ。人手不足と言われる昨今にしては上出来だと謎の達観をする(私は去年入社したが、その時は一人だけだったからなあ)。


 そんな3人は全員女性のようだ。私はその各人を見て、思わずショックを受けた。


 間違いなく、全員私よりも胸が大きい。しかも一人は俗に言う巨乳ってやつだぞ!!


 私は去年の入社式を思い出す。禿げた上司に言われた一言を思い出す。


 「君、胸が無いようだけれども、女装でもしているのかね」


 私は思わず頭を抱える。なんでなんだ。なんで私の胸はまな板なんだ!!


 「どうしたの、大杉さん。頭痛がするなら一回休んでててもいいよ」


 隣のディスクにいる1つ歳上の先輩、櫻井春輝が囁く。


 「あ、いえ。違うんですよ……。去年の入社式を思い出してですね」


 私がそう言うと櫻井先輩は苦い顔をした。そしてふと新入社員の方を見ると、そのまま呟いた。


 「ん……。まあ気にすることは無いよ」


 「先輩、気を使わなくても良いんですよ?なにか言いたいことがあれば言ってみて下さい」軽く圧をかけるように言う。すると櫻井先輩は意を決するようにつばを飲み込むと、ポツリと呟いた。


 「……ちっぱいでしか得られない栄養もあると思う」


 「死にたいんですか?」私は笑みを浮かべながら櫻井さんの脇腹をつねった。


 「気を使わず素直なこと言ったのに!?」理不尽だと言いたげな顔で櫻井さんは目を泳がせる。


 「こらそこ!入社式中だぞ!イチャイチャするな!!」部長の剣浜夏つるぎ はまかが私達を指さして叫ぶ。


 私と櫻井さんはいつもこんなことばっかりしてるので、いつの間にか支店内でカップルだと思われている。が、別に付き合っている訳でない。実際、ご飯の誘いも誘われもしたことがないからね。


 と、そんなことはどうでもいい。


 そんなこんなで、私よりもある意味で上の存在が入社してきたのである。

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