3話 エクウスの結婚歴①

 エクウス・シエルバ伯爵は三度結婚しているが、どの妻とも子どもは授かっていない。

 貴族の嫡男として跡取りを残すことは大切なことだった。

 男女どちらでもいい。跡継ぎが欲しい。

 領地経営も順調で裕福な筆頭伯爵家。シエルバ伯爵家の血筋を跡絶えさせないためには実子が必要不可欠であった。

 エクウスは伯爵家の一人っ子として重圧を感じていた。


 最初の妻のアンジェリカは家格が同じ伯爵家の長女で、大人しく儚げで美しい女性だった。

 政略結婚とはいえ、エクウスは妻をとても愛していた。

 一年を過ぎた頃からアンジェリカは不妊に悩み、必要以上に自分を責めていた。

 エクウスは愛している妻には子どものことは気長に考えるように言っていたが、妻は重圧を感じ精神を病んでしまった。


 医者には療養が必要だと言われ、エクウスは渋々アンジェリカを実家に帰し静養させることにした。

 だが、妻は二度とシエルバ伯爵家に帰って来ることはなかった。

 アンジェリカや妻の両親と話し合い半年の別居生活を経て離婚をすることになった。

 エクウスの両親はすでに他界しており、父にも兄弟がいなかったので、シエルバ伯爵家では相談する相手がいなかった。


 数年後アンジェリカは幼馴染みの子爵家の嫡男と結婚し、三人の子どもを儲けていた。

 儚げな妻だと思っていたが実は活発で、馬を乗りこなし、野山を駆け回るのが好きだったようだ。

 エクウスの前では淑やかな妻を演じていたようだった。


 エクウスは失意の中新たな妻を迎えることにした。

 二番目の妻のメリアは伯爵家の次女で小柄で派手な印象の女性だった。

 とにかく金遣いが荒く、着飾ることが大好きな妻だった。

 裕福なシエルバ伯爵家では些細な出費であったため、メリアを咎めることはしなかったが、伯爵家の女主人としての仕事を全くしなかった。


 女主人の仕事を使用人たちに全てやらせていたので、投げやりになった経理担当者が多額の横領に手を染めていた。

 しかもあろうことか最近はメリアと一緒になって横領をしていたことがわかった。

 ドレスや宝石などを買いあさり散財していたため、夫人の月々の手当では足りず、経理担当者と一緒に横領していたようだった。


 しかもメリアは経理担当者や使用人たち数人と浮気をしていた。

 エクウスは呆れ果て、浮気や横領の証拠を集めメリアの実家の伯爵家に賠償金と離婚を申し出た。

 メリアの実家は深く謝罪し、婚姻の継続を願ったが、エクウスは他の男と情を交わした女性を受け入れることはできなかった。

 メリアは実家にも帰れず、連絡は途絶えている。

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