第21話 ダンジョンのお宝

 猪のおかげで騒ぎになって、自由時間となった。


 山の中。

 町までほんの四十キロ。


 一番近い店は、山を下り。現れた橋で川を渡り、もっと上流側に確か五キロほど歩けばあった気がする。

 そのため、自由時間と言っても寝るしかない。


 おれは、周辺を探査する。

 宿泊所は、廃校となった小学校。

 そこから、魔素濃度を頼りに周囲を散策。

 だが反応は薄い。そう、未だにじいちゃんがダンジョンを見つけているの判らない。

 聞いても、匂うとしか教えてくれない。


 仕方が無いので、猪の移動した痕跡を追いかける。

 意外とうろうろと歩き回り、谷やら畑やら。

 体がでかくなった影響だろうか? 鹿が殺されて食われていた。


 そうしてうろうろして、結局学校の裏側。その少し上に、少し大きな防空壕なのか何かの穴があった。

 未だに、どういう基準で、魔素が溜まるのかも判らない。


 中へ入ると、何かを抜けた感じがする。


 一気に走り始める。

 洞穴型。

 罠だらけの、遺跡型の方が階層が少なくて楽なんだが……

 そう、罠など、最初にぶっ壊す。


 踏んだらトラップが動作?

 動作する前に、破壊すりゃ良いんだよ。

 動かなければそれで良い。


 だが洞窟型は、地道に走らなければいけない。


 モンスターは、シールドを張って走れば勝手に死んでいく。


 走るだけの簡単なお仕事です。


「馬鹿野郎。走るのがしんどいんだよぉ」

 自分でぼけ、自分で突っ込む。

 これが出来ないと、ダンジョン攻略は退屈で死んでしまう。


 このダンジョン若いらしく、一層のゴブリン達から、二層のオーガさんへ行ってしまった。

 オークさんは今回居ない。

 昼下がりのオークさんは忙しいらしい。


 オーガさんはすぐに消え、ワンちゃん達へ。二階が終わる頃には、ヘルハウンドへ。

 流石に、シールドが押し返されるが、気合いで押し返す。


 三階も、ワンちゃんだらけ。頭が一個だったり、二個だったり、三個だったり。

 ケルベロスって、一部の人の間で人気が無いよね。

 スロットマシンで外れだったらしい。


 そして四階。

 ヒュドラが三連チャンでやって来て、毒を吐く。

「お前この辺じゃ、見ん顔やなって?」

 うねうねとして、各頭が毒性違いで、さらに魔法の属性も違う。


 とりあえず面倒。適当にあたりをつけて、空間事切る。

 魔石を破壊。

 前は頭を落として、苦労していたが、もうそんなミスはしない。

 一気に切る。


「四階でヒュドラだったら、五階はウロボロスとか大きさだけならベヒーモス?」

 だが、ヒュドラの三連アタックで、首の数が判らなくなったあと、何処にも下に下る階段がなかった。


 うろうろしてると、木の根っこ? 

「ミイラ化した何かのしっぽだ」

 消えずに残っているから、とりあえず持って帰る

 ダンジョンを閉じるため、クリスタルは奪う。


 その後も農業実習を行う。


 その後、二十歳は越えているから良いやとなって、宴会になった。

 地元の酒蔵が、最近地ビールも作っているらしい。


 猪の、串焼きとか、とんかつとか。

 冷しゃぶとか。急遽始まった宴会で、メニューは少ないが、味が濃厚で脂が甘い良い肉だった。

 結構盛り上がる。


 そしてよく見ると、付き合っているっぽい奴らが幾人か居るな。

 素っ気なくしていても、ふとした動きが夫婦のそれだ。


「結構、付き合っているような感じだな」

「えっうん。どうこう言っても、基本皆仕事もしているし」

 そう、結構普通の会社員も兼業で農家を始めた。


 食糧増産。地産地消。

 そう言って、旗を振ったのが基本俺達だから、うまく行っているようで良かった。


 そして、気が付けば人が減っていく。


 一応周りの山の中にいるようだが、でかい猪を見たばかりなのに皆すごいな。

 危ないから、気を使って見ておこう。

 定期的に探査を撃っておく。


 その事に気が付いたのか、杏が聞いてくる。

「皆いる?」

「ああ、面白い感じで、距離を置いてやってるな」

「まだ明るいのに」

「今の世界、暗くなると何が出てくるのか判らん。それにお互い、見ながらだと燃えるんじゃないか?」

「そうなのかしら? でもなんだかヤダ。集中できない」

 そう言って、変な顔をする。


「まあ、人それぞれだ」

 そう言いながら、俺達はゆっくりと飲みながら、バラ肉を塩胡椒で炙りレタスで巻いて食べる。たまにレモン汁。


 そうしていると、また人が集まってくる。


 結局その後、本来の夜食が始まるようで、バーベキューが始まるという悲しさ。

 牛肉は、黒毛和牛だそうで、腹一杯なのに、皆必死で食っていた。

 先生の、飯を食えという声は完全無視だ。

 配達用トラックには、ご飯の保温容器が五つほど並んでいたようだ。


 研修から帰り、シーヴにダンジョンで拾ったものを見て貰う。

 船には、鑑定システムがあるらしい。

「結果が出ました。ヒュドラの尾だそうです。こちらで言うかんぽう薬ですね。治療用で、後、化粧人にも使えるようです」


「必要ないな」

 そう思って、放っておいたら、じいちゃんが見つけて、喜んで持っていったようだ。


 その数ヶ月後、俺達はとんでもないものを、目撃することになる……

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