第15話 ベース作製

「おまえらが踏み潰したこの草は、穀物の苗だ」

 翌日の昼。田んぼの前で起こった訓告事件。


 直立不動で、だらだらと冷や汗を垂らす、アデラ達。

 各艦の代表である部隊長も一緒だ。


 第一艦ヨアヒム=エッフェン=ベルク。男。身長百八十二センチの苦強壮な体躯。 

 髪はブラウンで目もブラウン。だが、今盛大に泳いでいる。


 第二艦アロイス=ベンヤミン=ガルバー。男。髪は赤で、目はブルー。身長一七五センチ。同じく屈強そうな体躯。


 第三艦ルイゾン=マクシム=バンジャマン=ジョズエ=ギユー。男。一七八センチ。髪は銀で目はブルー。少し痩せ型で、研究大好き。


 第四艦マーリア=ヴェーラ=イソニエミ。女。身長一五八センチ。髪は亜麻色。瞳はブラウン。目尻が少したれ、顔はかわいい系だが、制服を押し上げる何かが少し目立つ。


 第五艦クラーラ=メルツェーデス=テレーゼ=エルツェ。女。身長一六二センチほっそり美人。銀髪で瞳はブラウン。お嬢さんらしい。


 全員直立不動。

 今、田んぼの稲に対して、ごめんなさいの最中。

 じりじりと、五月の太陽が焼け付く。


「まあ、他の田もあるから、当座困らないが、船を移動した後、植え直して貰う。良いな」

 じいちゃんから言葉が発せられるたびに、何か圧がやって来る。

 ただの人には、地味にきつい。


「あそこの山全体が、うちの土地だ。あそこを削り駐機場にしよう。来るたびに畑や田を潰されてはかなわん」

 そう言うと、前でにまにましていた、シーヴのしっぽが膨らむ。

 キャベツの一件。


「では、整地するため主砲を……」

 アデラがそう言ったとき、じいちゃんのアイアンクローが、アデラのこめかみに食い込む。


「ポチの眷属ぅ。バカだろお前。吹っ飛ばすんじゃない。削るんだ。土はまた何かで使えるだろうし勿体ないだろう」

「そっ、それでは時間が」

 それを聞いて、じいちゃんは整然と並ぶ宇宙船を眺める。


「人数がいるじゃあないか。各艦百人ほど居るんだろ」

「ですが…… 今回、土木系の工作機械は数が少なくて」

「魔法と手だ。掘っては亜空間へ放り込め」

「承知しました」

 手が離れると、ぺたりと地面に座り込む。


「お話は伺ったな。各員。行動開始」

 やっと終わったと各員が動き始める。


「あそこの山は、山菜の宝庫だが仕方ない」

 この辺にはめずらしい、こんもりとした山。 

 古墳ではないかとか、言われていたが、今のご時世良いだろう。

 監督省庁は無くなったし。


 そして山からは、地下二十メートルにトランスファーチューブという五人乗りの乗り物で繋ぐことにした。電車みたいなものだが、高速走行モードでチューブ内のエアを抜くと、時速一千二百二十五キロメートル。つまり音速を超える。

 まあ今回は、ゆっくり。だが基本原理はリニアで、浮上は魔導具。

 つまり、移動のみ引力と斥力を使用する。


 制御においては、魔導具より電気が簡単。

 初期型では、魔導具で浮かせ、一気に推進を掛けて動かしたことがあったが、移動時の加速Gが半端なく諦めたようだ。

 話を聞いてじいちゃんから「バカだろ」と一言頂いたようだ。


 意外と、ファジェーエヴァの工作機械は優秀で、残土を亜空間に放り込むこともあって、二日で整地までが終わる。

 全体に、カムフラージュを施し、ぱっと見は山のままである。

 地上設備の設置と、トランスファーチューブ用の穴掘りとチューブの埋設。そして推進用システムと、ガイドレールまで一気に工事。おおよそ五キロを一週間で終了。


 その間に、大穴が開いた田んぼの修復と田植え。

 田植え時の残り苗を、田んぼの端に置いていたので間に合った。


 そう、機械が回れないから植えるなと言っても、四隅まで植えるし、余り苗も捨てないし。困ったものだ。

 稲刈り時に、あわてて四隅を鎌で刈る羽目になるのだよ。


 

 その間、学校は平和で、試験もあった。

 習っていないと、年を取っても勝手に賢くはならないようだ。

 ただ、明らかに疲れた。


 試験後、カラオケに行く? とか言っていたのが、おう一杯行くかに変わったくらい。皆二十歳を超えているし。

 たかが三年だが、以外と差が大きいようだ。


 今の小学校一年生は大変らしい。

 四学年分が一年生をしているからな。


 さて、そんなアダルトな高校生は、部屋で酒盛り。

 一人増えたのは、アデラ。

「あんな草が、穀物の苗なんて知りませんよぉと、愚痴っていた」

 話を聞くと、麦は普通にある様だ。


 野菜もあるが、二人とも、軍属になるために一生懸命勉強して、よく知らないようだ。

 稲については、データーベースによると、一部地域で、原種のまま陸稲が育てられているようだ。


 酔っ払うと二人ともかわいいし、しっぽももふもふだが、正面から見つめる杏の目が徐々に怖くなる。


 また増えたー。とか思っているのだろう。


 思っていた。

 何よ。もふもふだし、二人ともかわいいし、息吹はデレデレだし。


 特に息吹は、でれでれしているつもりはない。

 だが、その不満な欲求は、素直に息吹へと向かう。

 徐々に慣れたせいもあり、テレがなくなり大胆な駆動になってくる。


 内緒だが、アデラから杏が発情中と言われた。

 獣人からすると、なんか匂うらしい。


「息吹ぃ。息吹ぃ」

 そう言いながら、じゃれついてくる。

 母さんからは、学生なんだから子供は駄目よと言われている。

 俺もそっちの欲求はある方だし、このハーレム状態は結構キツい。


「手を出せば、絶対歯止めがきかなくなるよなぁ」

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