第二章 接近遭遇、そして、いきなりコンタクト

第5話 初めまして?

 その日、裏の畑で猫を拾った。


 おかしな感じだが、本人が言っているから、猫らしい。

『バカみたいなエネルギーを持った人が居た。だからここに来た』

 そんな事を言っている。


 猫と、飼い主? 五人ほど。

 マラートヴナ星系。惑星ファジェーエヴァ。

 中央政府マグナコーキ特任大使、シーヴ=マリア=リナ=ヘイディーン。

 そして、そのお付きの人達。


 せっかく復活をさせた裏の畑。

 接地用の足の下で、キャベツが、都合三畳分粉砕された。


 じいちゃんが怒り狂いそうな案件だが……

「おい客だ、行って来い」

 なぜか、母さんにでもなく、俺に命令がくる。


「何で俺?」

「お前なら死ぬこともない」

 そんな物騒な言葉で、家から送り出された。


 裏の畑には、全長二十メートルはありそうな、流線型を持った船。昔一時期話題になった、アメリカのブラックバード。

 あれのエンジンがなく、翼がもっと肉厚になった三角形な形。

 表面に何か、シールドが働いていて、虹色にたまに変化をする。


「魔法が働いているな」

 そう思って見ているとその謎の物体から、タラップが降りてきて、さらに半畳分のキャベツが粉砕される。


「本当に大丈夫だろうな?」

「ええ。検疫は行いました」

 おかしなことに日本語をしゃべっているが、口とずれがあるが、魔力の動きがある。


 そして、俺とその生き物は目が合う。


 身長百六十七くらい。

 含む耳。

 しっぽあり。

 革鎧っぽいが、妙な力を感じる。

 顔は普通の人間ぽい。

 目がくりっとして、結構かわいいタイプ。


 そして、目が合ったことに、向こうは驚いている。

「あれは、原住民だろうが、こっちを見ていないか?」

 後ろの、詰め襟の服を着ている人たちに、猫っぽい人が問いかける。


 ああ、幻視系の魔法のことか。

 そんなの、ダンジョンの三層で攻略をしたよ。


「なんか、飛んできた」

「ああ、毒針だ。周りに、不可視の魔法を纏った虫がいる。目を合わせろ」

「どうやって?」

「そんなもの、見えるようにだ」

 あれは辛かった。初めて目がこるという体験をしたが、目力ではなく、魔力で見ればすぐ出来た。


 おかげで、真っ暗でも目が見える。

 ついでに、集中すれば薄い服なら透過する。

 色がないのが残念だ。


 面倒だし声をかける。

「あんたら、断りもなく、こんなものを駐めて。キャベツが潰れたじゃないかどうしてくれる」


「なっ。通じたぞ。リングーラの魔法具成功だ」

「良かったな。それでさっきの話だ。あんたらが潰したのは野菜だ」

「ぬっ。草原ではないのか? 食う。これを」

「馬鹿野郎。今時貴重なんだぞ。草原じゃない」

「それはすまない。中で時々入るWの連続は何だ?」

「しらん。魔導具がおかしいんだろ。どっからデータをひっぱったんたんだ?」

「えーと、情報掲示板? 何とかちゃんねる」

 そう言って小首をかしげる。


「まあいい。来いよ。キャベツも食わしてやる」

 そう言って移動する間に、バカみたいなエネルギーを持っているという話を聞いた。じいちゃんの事だろう。


「じいちゃん、キャベツを潰されたぞ」

 そう報告をすると、その時一瞬だけ、その辺りの魔力が上昇した。


「おお、じいちゃんも大人になったな」

 中に入ろうとすると、外国人さんあるあるだな。

 靴を履いたまま上がろうとした。


「ちょっと待て、そこで靴を脱げ」

 そこで脱がしたが、ブーツを履きっぱなしだったのか、足がくせえ。

 なけなしの消臭剤を振りまく。


「こっちだ」

 じいちゃん達の控える、茶の間へ連れて行く。


 金髪青目の外国人一行と猫が一人。違和感がすごい。

 そして、彼らをじいちゃんに渡して、その間に、キャベツを洗い、ざく切りでポン酢をかける。

 好みで七味を振る。


 そいつを、どんぶりに入れて、お茶請けとして持っていく。

 当然お茶も入れた。茶葉は自家製。

 生け垣にしている。だが毛虫がなあ……


 茶の間に戻ると、じいちゃんに向かい、泣きながら土下座をしているご一同。


「何これ?」

「うん? まあ昔。少し世話をした連中だったようだ」


 じいちゃんは、神谷 光希かみや こうきと言う結構痛い名前。

 じいちゃんは電気屋みたいだろと言っていたが、そのたびに機械屋だろと父さんに突っ込まれていた。


 ファジェーエヴァという惑星に、五年ほど勇者召喚で行っていたらしい。

 家族もそんな話は初めて聞く。


「行って戻ったら、時間も体も戻っていた、精神だけが送られて向こうで体が創られたんじゃないかな」

 そう言っている。


「やってもやっても、子供が出来なかったし」

 その晩の、日課の最中に教えてくれた。


「ばあちゃんに言って良い?」

「バカお前、殺されるからやめろ」

 さっき、ドラゴンの不意打ちを食らっても、痛えなコイツだけで済ませたじいちゃんが、恐れるばあちゃん。どれだけ強いんだ?



「光希様にお会いでき、ご存命であることは伝えた。あとは、見事に政治的中枢をマザーが破壊し、混乱の最中というお話。ご本人はお怒りではない様だったが、これからの舵取りをどうすべきか」

 人が真面目に語っているのに、周りの行政官達はにまにましている。


「なんだ?」

「良かったなあ、シーヴ。光希様に頭をなでられて」

「ばっ。それは、そう言う命令だったし」

 一緒に来たのは、異常現象対策課の面々。

 業務の関連だし、見知ったものが付いてきた。


「それは、それ。お孫さんも、お前達の種族を好きそうだったじゃないか。年も丁度良さそうだし。まんざらでもないだろう」

「バカども、そんな事より、検査結果を出せ。光希様は、世界で一人のハイヒューマンだったのだ」


 検出器の記録を出す。

「あの中で、光希様と御孫様の息吹様が、ハイヒューマンだな。遺伝する因子なのかもしれん。朗報だ」

 彼らは、勘違いをした。


 他の家族は、ヒト族の平均とあまり変わらない数値。

 筋力などを数値化する装置。成人の平均を十で示す。

 だが、二人だけ計測不能。


 そう、遺伝ではなく、ドーピング。

 その事は教えられることなく、今後、神谷家の一子相伝となっていく。

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