糸は絡まる

おくとりょう

ほどける線

 言葉が上手くまとまらない。

 説明したいのに、上手く話せなくて、僕の舌はクルクルほどけた。口からスゥーッと垂れた黒い糸。

 びっくりして引っ張ると、切れずに伸びて、頭の中がぐるぐる回った。視界というより脳みそが回ってるみたい。

 両手で抱えるほどまでほどいたあとで、頭の中まで糸になっているのだと気づいた僕は、慌ててそれを口に押し込む。半分ほど残った舌の上をゴワゴワにほぐれた糸の塊が撫でていく。のどちんこに引っかかり、オエッとなりながらも飲み込んだ。

 すると、頭の奥がピーンとなって、背骨が飛び上がるみたいに背筋が伸びる。チカチカする視界の中で、糸を飲み込んでも脳みそは元に戻らないことにようやく気づく。

 どうしようもなくて、手のひらを見ると、手首がほどけて、ボトンっと落ちた。クルクルほどけていく黒い糸は思ったよりも、リズミカルで綺麗だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

糸は絡まる おくとりょう @n8osoeuta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説