主人公

波多野古風

主人公

 私はこの物語の主人公だ。だってそうだろう。君はこの話を読んでいるし、私は思ってもない言葉を口に出すことがある。今だってそうだ。全て作者の手の上で踊らされている。でも私はそれでいい。普段は自由で、時々言動が制限されるだけ。基本、周りの人は私が思った通り、言った通りに動いてくれる。主人公補正というものだろう。

 この話の中で私は皇太子だ。今日は周辺の領地から貴族が来た。ほとんどの人は私が一言話せば全て信じ、あるいは賞賛していた。一部よく思ってなさそうな者がいたが、どうとでもなるだろう。それが主人公というものなのだから。

 私の意見にいつも反対してくる貴族の領地を攻めた。圧倒的だった。私が命令した大砲は家々を粉々にし、騎士達は次々と民を切り殺していった。やりすぎではないだろうか。

 私は死んだ。独裁政治を進めすぎて反乱が起きた。判断を誤ったのか。それとも最初からそういった運命だったのだろうか。まぁいい、どれだけ考えても私は死んだのだから。


 転生、というものだろうか。反乱が起こる前に戻っている。やり直せということか。なら次は意見を全て聞いてやろう。

 また反乱が起きた。少しこの世界は私に厳しすぎではないだろうか。今や誰も私の言葉に耳を傾けない。

 また反乱が起きた。

 また反乱が起きた。

 また反乱が起きた。


 ああ、やっと分かった。私は主人公では無いのだ。私は必ず死ぬ運命なのだ。私は悪役だったのだ。私はそれを知った上で死を繰り返している。私の意思ではない。もう止めてくれ。


 ああ、もう読まないでくれ

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主人公 波多野古風 @hatako-74

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