インターハイ2回戦-白岡高校-11

 第2クォーターが始まる。


 9点ビハインドなら、まだ、全然大丈夫だ。


 白岡高校のオフェンスから。


 三田がゆっくりとドリブルをしている。


 一瞬、パスを出そうとしていた。


 駆け引きをしようとしたんだ。パスを出そうとすれば、手を出すのではないかと。それで上手くいけば、ファウルを誘いだすことができるから。


 騙されるか。俺は動かなかった。


 それがわかったか、三田は長く吐いてから、姿勢を低くして、ドリブルを速く低くした。


 1対1。ドライブだ。このまま、シュートまで持っていこうとしている。


 俺はピッタリと身体を密着させて、シュートまで行かせないようにディフェンスした。


 三田はフリースローラインまでは来たものの、ここから動けなくなっていた。


 ディフェンスが良いということだ。


 その場でドリブルをし、周囲を見回す。


 パスも出させない。


 俺はずっと三田を離さなかった。


「ディフェンス強いな……」


 三田はゴールを見る。


 これはシュートするためではなく、ゴールに付属している24秒カウンターを見るためだ。


 あと10秒。時間がない。あと10秒でシュートをしなければ、相手ボール。三田はどうすることもできなくて、強引にシュートをした。


 フェイダウェイ。後ろに下がりながらシュートを打つ。


 態勢が整っていなかったので、体が傾いたまま放ってしまった。


 そのシュートが奇跡を起こした。


 ボールは、一度、リングに当たり、そのまま、リングの周りを一周して、ネットを通過した。


「これが入るのか!?」


 俺は思わず叫んでしまった。


 驚いて声を上げたのは、俺だけではない。


 白岡高校の仲間も目を丸くしている。


「これは凄いな」


 嶋田は、俺にはできないなという合図をする。


「何があった?!」


 会場でこの試合を見ていた観客も、目を大きく見開いている。


 これはあり得ないシュートだった。

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