インターハイ開幕24

 城伯高校が得点を重ねていって、4クォーターは、城伯高校のゲームとなった。その後も城伯高校の攻撃が続いた。


 そして、ついに、4クォーター終了のブザーが鳴った。


 結果は……


 116-110


 城伯高校の勝利。


 俺たちは抱き合って、勝利を喜んだ。


 両チームが整列して、一例する。


 その後で、市村が俺のところにやってきた。


「面白い試合だった。ありがとう。スリーも打てるし、ドライブもできる。もっと自信もってやれば、もっと良いものになると思うぞ。もっと自信持て」


 市村が俺の背中をポンッと叩いて、笑顔を見せる。


 試合が終わって、リラックスムードになったのか、市村の顔は柔らかい。


「こっちこそ、ありがとう。いい勉強になったよ」


 俺も笑顔で答える。


 俺と市村は握手をして健闘をたたえ合った。


「優勝しろよ! 俺たちの分まで」


 立川が慧に声をかけた。慧はその声に振り返ると、笑みを浮かべて拳で胸を叩いた。


「おう! 優勝する!!」


 その言葉を聞いた立川は、慧と抱き合った。


「ありがとな、良い試合だったよ」


 立川は感謝の気持ちを述べた後、一粒の涙がこぼれ落ちた。悔しかったのか、自分の中ではベストなプレーができて嬉しかったのか、それは本人にしかわからない。


 でも、立川の気持ちを感じとった慧。背中をポンポンと叩いて、立川の気持ちを受け止めた。


 一粒、涙がこぼれると止まらない。立川は号泣していた。


「ウインターカップでまた会おうぜ」


 慧は立川に言って、市村のところに連れていく。


 市村は号泣している立川を見て驚いていた。


わたる、珍しいな」


 市村でさえも泣いている立川を見たことがないようで。


 今回の試合で、立川の中で相当な思いがあったのだろう。


 市村も立川の思いを受け止めた。


 このやりとりに、会場からも拍手喝采。


 これぞ、スポーツマンシップというもの。


 観客にも感動を与えた。


 接戦が繰り広げられた、このコートは、次の試合でも使う。ひと段落ついたところで、素早く荷物をまとめる。


 荷物をまとめて、コートを後にした両チーム。


 それぞれ、試合後はミーティングだ。


 城伯高校もミーティングだ。


「よくやった、この試合の中でも成長しているな。だんだん、チームは強くなっていく。学ぶ姿勢を忘れずに、次の試合に臨もう」


 高宮コーチの声は穏やかだった。数秒、間を置いてから口を開く。


「今日は解散。明日も試合があるから、今日はゆっくり休んで明日に備えよう」


 ミーティングらしいミーティングではない。でも、高宮コーチなりに気を遣っているのだと思う。というより、高宮コーチは自分たちで考えさせるやり方なので、あまりあれこれと口を出さない。


 ミーティングも軽いものだ。でも、きちんと、研究もしていて、いざというときにはアドバイスをする。


「解散! じゃ、また、明日な」


 高宮コーチは足早に去っていく。これから、審判という仕事が残っているためだ。


 俺たちは解散ということで、体育館を後にした。


 楽しい試合だったけど、疲れた。今日は帰ってすぐ寝よう。


 明日は2回戦だ。

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