インターハイ開幕10

 三ツ谷高校は、スリーポイントを決めた城伯高校に対し、仕返ししてやろうと吉村がスリーポイントを放つ。


 そのスリーポイントは外れてしまい、市村と吉村は、他のメンバーにリバウンドを任せ、ディフェンスの準備を始めた。


 リバウンドを取ったのは、立川だった。


 立川は、快のディフェンスをよく見ていた。


 シュートをする態勢を作って、快に手を伸ばさせる。


 立川の狙い通りだった。


 快の左脇が空いている。


 快の左脇をくぐって、ボールをゴールに置いてきた。


 そのボールはリングの周りをグルグル回って、リングの中に入った。


「おぉ! ナイシュー!! 渉!」


 吉村が立川に親指を立てて声をかけた。


 市村は拍手を送っている。


「甘かった」


 悔しそうにしていたのは、快だ。


 簡単に立川に抜かれたことで、得点を奪われた。


 悔しい気持ちをプレーでぶつけることができるか。


「快、返そうぜ」


 俺はニヤリと笑って、快を和ませた。


「はい、このままでは終わらないですよ」


 快は俺の言葉に火をつけたようだ。


 俺はボールを持ちながら、様子を見る。


 直接、快にパスをするとき、俺は目で合図した。


 豪快なダンクを見せろと。


 快は、俺の意図が理解できたようで、パスをもらうと、迷うことなく、豪快にダンクシュートをして見せた。


 両手でボールをリングに叩きつけ、試合を観ている人、全員を魅了した。


 ゴールが揺れるほど、迫力のあるダンクシュート。


「おぉぉ、パワーがあるな」


 観客からそんな声が聞こえてくる。


 このダンクで、中山ディーノス快という城伯高校の選手を印象付けた。


「良い選手が揃ってるな」


 ジェームズは城伯高校のメンバーを見ながら、何かを探っているように見えた。


「とりあえず、俺たちのプレーに集中するぞ」


 金田に促され、ジェームズは頷く。


 市村はパスができる状況ではないと読み、自分でゴール下まで切り込もうとした。


 俺は市村のドリブルを止めようと、スティールを試みる。


 そんなに簡単にスティールができるわけではない。


 それは市村もわかっているから、俺の隙を狙っている。


 ところが、市村も城伯高校のプレーに圧倒されたのか、心理的に冷静さを失っていた。


 手が滑り、ボールが手から離れそうになる。


 そこを俺は見逃さなかった。


 その瞬間で、俺はボールを奪い取る。そして、ドリブルで一気に走っていき、ボールをリングにそっと置いてくる。


 レインアップシュート。バスケの基本ともいえるレインアップシュートは、一番、プレーでも使うシュートだ。


 そのボールはリングの中へ吸い込まれていく。


「悪い、何やってるんだ、俺」


 三ツ谷高校のメンバーに謝ると同時に、市村は不甲斐なさを感じている様子だ。

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