インターハイ開幕8

 三ツ谷はタイムアウトをとった。


 円陣を組み、市村がメンバーに話しかけている。


 俺のところまでは聞こえないが、三ツ谷の様子を見ると。


「あいつ、今、乗ってる。ここで阻止しないと、ガンガンやられるぞ」


 と、言っているようにも見える。


 市村と目が合う。


 市村は俺に気がつくと、ニヤリと笑う。


 まだ、負けないぞと訴えているかのようだ。


 俺は軽く踵を返して、ディフェンスに備える。


 城伯高校はコートに立っていたメンバーは、ベンチに座って、高宮コーチの言葉を聞いている。


「城伯のバスケをしよう。城伯のバスケはスピードだ。チャンスがあれば、樹のようにスリーポイント、どんどん狙っていいぞ」


 1分のタイムアウトが終わり、試合が再開。


 ここでのメンバー交代はなし。


 三ツ谷高校のオフェンス。


 市村から吉村、吉村から立川、立川から野崎へとパスが渡っていく。


 そして、最後はジェームズ。


 貴のディフェンスを鮮やかにかわす。


 パスをすると見せかけ、ドリブル。


 貴が抜かれて、フォローしたのは慧。


 慧とジェームズのマッチアップ。


 ジェームズは慧の脇の下をくぐり、ボールをリングに置いてこようとする。


 レインアップか。


 慧がジェームズのタイミングを見て、同時に手を出して、シュートブロックした。


 同時にジェームズと接触し、ジェームズを倒してしまった。


 慧のファウル。


 慧はファウル2。まだ、2クォーターで、ファウル2は結構厳しい。


 また、シュートをする動作をしてのファウルだったため、ジェームズには、フリースローが2本、与えられる。


 立川がジェームズを立たせると、背中をポンポンと叩く。


 ジェームズの興奮を落ち着かせて、フリースローに臨めるように。


 ジェームズは立川に小声で何かを言っていた。


 ありがとうと言っていたのかもしれない。


 意外と緊張しいなんだな。俺と同じ。それでも、俺からしてみれば、ジェームズは平常心だと感じた。


 フリースローの前に笛が鳴る。


 メンバー交代を告げる合図だ。


 城伯高校は慧をベンチに下げて、快をコートに。


 三ツ谷高校は、野崎を下げて、金田久人かねだひさとをコートに入れた。


 交代した快と金田がコートに入り、準備が整うと、フリースローから試合が再開。


 ジェームズはフーッとゆっくり息を吐くと、何回かボールをドリブルして、もう一度息を吐く。


 膝を柔らかく曲げ、手首も力を抜き、フワッとスナップをきかせた。


 ボールはリングにあたり、弾き返される。


 ジェームズはまた息を吐く。


 もう一度、心を落ち着かせて、フリースロー2本目。


 シュッ


 2本目はリングの中を通過した。


 これで城伯高校のオフェンス。


 城伯高校はすぐにオフェンスへと切り替える。

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