インターセプト

インターハイ予選9

　ハーフタイムは10分。

　この10分の間に動きを確認する。

「確実に俺たちのほうがスピードはない。すぐに走らされる。だから、それを阻止するためにオールコートディフェンスでいこう」

　慧の声に全員が頷く。

　オールコートディフェンスは、自分の陣地コートからディフェンスをする。

　通常は、ハーフコートディフェンスといって、相手の陣地コートから始めて、セットプレイをする。

　セットプレーはハーフコートで行うプレー。

　ケースバイケースでオールコートディフェンスにすることもある。

　俺は、なかなかプレーを支配することができなくて、もどかしい気持ちになった。

　もっと、はっきりとしたプレーをするということを示さなければ、仲間はどうしたらいいかわからない。

　ポイントガードはそういう役割だ。

　相手に読まれないようにするにはどうすればいいのか。

「樹、相手の動きも大事だけど、目を見ろ。目で見えてくるものもある」

　高宮コーチが俺の肩を叩いて、ニヤリと笑う。

「目……」

　そうか、相手の動きは、細かいところまで観察しないと読むことはできないんだな。よく考えたら目までは見てないな。

　瞬時にどれだけ観察して見極められるか。ここが大事だ。

「よし！行くぞ！」

　円陣を組んで慧が声をかけると、全員で活を入れる。

「オー！！」

　後半が始まるぞ。

　3クォーター10分。

　城伯高校のオフェンスからだ。

　達也がコート内にボールを入れる。

　俺は、達也からボールをもらって、周囲を見渡す。

　まだ、徳丸高校のディフェンスが整わない間にパスを出したいため、慧と貴に走れと合図を出す。

「早く戻れ！」

　河田が吉本と滝に、大きな声で伝えていた。

　そのとき、俺は、既に慧にパスを送る。

　慧は高くジャンプしてキャッチをして、吉本のほうを見ている。

　これだとシュートブロックをされるな。どうするんだ、慧。

　慧は、同時に走ってきた貴にパスを出した。

　おぉ、滞空（たいくう）時間が長い。

　キャッチしてからも、着地をせず、そのまま貴にパスを出すとは。

　貴は右足を踏み切った。

　キャッチしてそのままシュートをする気だ。

　まだ、滝が追いついていない。

　これはシュートができる。

　きっと貴もそう判断する。

「うぉぉぉぉしっ！」

　貴は雄叫びを上げた。

　まだ、入るかどうかわからない状態なのに、確信している。

　良い感覚があったのかな。

　貴はボールをゴールに叩き込んだ。

　おぉ。アリウープ。

「ナイスシュー、貴！」

　慧が貴に声をかけて、拳を突き出した。

　貴も慧に答えるように拳を突き出して、フッと笑う。

「よしっ、ディフェンス！」

　俺は手を叩いて、全員に声をかけた。

「今のはやられたな、滝。次、1本取り返そうぜ」

　河田が滝に声をかけている。

　滝は悔しそうだった。

「あぁ、1本取り返すぞ」

　滝は河田に言葉を返した。

　河田はドリブルを細かく上下左右にして、更に左右の手を入れ替えてドリブルをしながら、様子を見ている。

　さて、どう来るかな。

　じっと観察しようと思ったとき、ふと、あることに気がつく。

　俺らもそうだけどドリブルが多い。ドリブルは本来、いざというときにしかやらない。普通、バスケはパスで回していく。それが基本だ。

　だけど、俺らは無駄にドリブルをしている。この無駄なドリブルを止めれば、もっとスピードは速くなるはず。

　河田もドリブルが多い。どこかで、このドリブルを止めることはできないか。

　俺はそう考えた時、河田のドリブルを取ることができるという感覚が急にきた。正確にいうと降りてきた。

　なんといっていいのか、わからない。でも、感覚が言っている。

　今だ！

　俺は河田の横から、スーッとボールを奪って、そのまま、ドリブルでひとりでゴールまでいき、そのまま、ゴールにボールを置いてきた。

　レインアップシュート。

　ノーマークだったため、確実に丁寧にシュートができたため、しっかりと、リングの中へ。

「よっし！」

　不思議な感覚だ。とにかく感覚が行けと体に教えてくれた。言葉では表せない。何故、こんな感覚になったのかも全くわからない。

　感覚は毎日違う。同じ感覚をキープすることは難しい。自分でもビックリだ。こんな感覚があるとは。

「スチール……」

　河田は、俺がスチールするとは思っていなかったみたいで呆然としていた。

「おぉ、よくやった！」

　灯が拍手をしている。

　なんだか恥ずかしいな。

「さぁ、また、ディフェンスだ」

　俺は声をかけて誤魔化した。

　河田は悔しかったのか、俺を睨みつけていた。

　次は何をしてくるのか。細かく観察して見極めろ。