第18話 山の妖精と森の邪妖

「アクレイ!」


悲鳴を上げるルアンナ、アクレイは身を丸め、なんとか耐えている。


が、既に彼女もアクレイのことなど気にかけてはいられなかった。


ルアンナは槍をちらつかせて目の前の悪戯鬼ガテ・ケルツを牽制しようとするが、向こうはすでに彼女を相手ではないと判断したか、構えを解くとにやにやと笑みを浮かべてルアンナの槍が届かない位置を保ちながらも、周りの仲間たちとともに時折間合いに踏み込む素振りを見せて彼女をからかう。


「う…く…」


足蹴にされ続けるアクレイと兵士を脇に見ながらルアンナは自身の未熟さを思い知っていた。


少しでも早く自分を認めさせたい、そんな思いが先走りすぎたのか。


やはりもう少し鍛えてからにするべきだったのか。


慎重さを見せていたアクレイの言葉に耳を傾けるべきだったかもしれない。


焦り、不安、後悔でルアンナの思考は堂々巡りになるも、自分たちのもとに向かってきているであろう兵士たちの存在がかろうじて彼女の心の支えとなっていた。


皆が来てくれればきっと……


そんな中、


「何じゃ、人間の子供が悪戯子鬼ケルツ相手に戦ごっこかの?」


草木をかき分ける音とともに拍子抜けするようなのんびりとした声が聞こえた。


姿を現したのは、悪戯子鬼ケルツよりは大きいながら大人と呼ぶにはいささか小柄な、しかし、立派な体躯をした髭面の男だった。


ルアンナたちとは違い、金属質の鎧に身を包み、不釣り合いなほどに巨大な大金槌を担いでいる。


「あなたは?」


突然の登場にあっけにとられるルアンナ。悪戯鬼ガテ・ケルツらも戸惑っているのか、互いに顔を見合わせている。


そんな中、髭男は悪戯鬼ガテ・ケルツの手にしている武器に視線を移すと、


「…おっと、悪戯子鬼ケルツ悪戯子鬼ケルツでも悪戯鬼ガテ・ケルツのほうかい。ならば……話はあとじゃな、お嬢ちゃん!」


そう言うと髭男は担いでいた金槌を一振りすると、手近な悪戯鬼ガテ・ケルツめがけて駆け出す!


地を踏みしめて駆け寄ってくる新たな相手にその悪戯鬼ガテ・ケルツは慌てふためいて、手にした盾をかざそうとする。

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