第13話 初めての戦い

しばしの間、二人は茂みの中で石弓を構えたままでいたが、やがて二匹の悪戯子鬼ケルツの注意がこちらからそれた瞬間、意を決して引き金を引く。


仕掛けで引き絞られた弓が弾け、短い矢が風を切って木々の合間を飛ぶ。


命中!


矢が突き刺さった二匹の悪戯子鬼ケルツはそれぞれうめきながら倒れ、黒い霧になって消えていく。


やった!


思わず歓声を上げたくなるのを二人は懸命にこらえ、お互いの顔を見合う。


二人は互いにうなずき合うと手探りで腰の矢筒に手を伸ばし、矢を取り出して再び弩に装填しようとするが、初めて獲物を仕留めた高揚感からか、手が震えなかなか上手くいかない。


そうしているうちに外の異変を察知したか、住処から残りのケルツたちがぞろぞろと出てくる。


茂みの中からそれを見た二人の中に焦りが募る。


しかし、悪戯子鬼ケルツたちは、またアクレイたちに気がついていないらしく散開し、警戒しながらあたりを見渡している。


あの数を一度に仕留めるのは無理。次、撃てば間違いなくこちらの場所がわかってしまう。


弩が使えるのはあと一回。


二人は緊張で震える手でなんとか矢を装填すると、互いに目配せをしてもう一度狙いをつけ、一度、深く息を吸い込んでから引き金を引く。


放った矢は、一本は外れ、もう一本は悪戯子鬼ケルツに当たる!


うめき声を上げて倒れる悪戯子鬼ケルツ。それを見た他のケルツたちは声を上げると一斉にアクレイたちが潜んでいる茂みめがけて駆けてくる。


「行くわよアクレイ!」


「ああ!」


二人はそう言うと弩を剣と槍に持ち替え、間合いを測ってから茂みから飛び出す!


「やああっ!」


悪戯子鬼ケルツにも負けない勇ましい掛け声を上げながら二人はケルツめがけて突進する!


そのさまに、悪戯子鬼ケルツたちは驚きの表情を浮かべ、手にした棍棒を構えようとするが、アクレイたちは勢いのまま突っ込む。

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