第12話 デートで知った私と彼の関係
「セリーナ、どんな服を着て行けばいいかしら」
「どんな服でもお似合いですよ。お嬢様」
「一番いい服を準備してね」
「お任せください。お嬢様」
時間前の私は、相変わらず、服選びであたふたしていた。初めてのデート?だし、できるだけ恥ずかしくない格好で行きたいと思ったのだ。第一印象は大事でしょ。
「ルーク・デライト様が、ご到着しました」
時間通り9時になったら、玄関の使用人から連絡が来た。
「こんにちは、サリー様。お迎えに上がりました」
「こんにちは、ルーク様。今日はお世話になります」
白い上着を着て、余裕の笑みをたたえたルーク様が玄関ホールにいらっしゃった。
うらら時代を含めて男性と二人だけで食事をするのが初めてな私は、少し胸がドキドキしていた。
馬車に乗るときは、エスコートされた。初めてだから、あやうくズッコケそうになったけれど、ルーク様が支えてくれた。
馬車に乗っても話題が見つからず、ルーク様を正面から見る事も出来ないので、街並みを見ていた。今日の街はとても明るく感じた。たくさんの人びとが元気に行き来していて王都はやはり活発な街だ。
そうだ、無難に騎士団の事を聞いてみようと思って声を掛けた。
「先日は討伐隊おつかれさまでした。ルーク様の騎士団はどこになるのですか?」
「第三騎士団に所属しています。団長をしています」
「全部でいくつ騎士団があるのですか?」
「第一から第三まであります」
「違いはあるのですか?」
「第一騎士団は王都防衛が主な任務です。第二騎士団は魔法が主体の部隊です。私の所属する第三騎士団は何でも屋です」
「何でも屋ですか?」
「今回のようにゴブリンが出ればそれにかりだされますし、他国の侵入があったら第一第二と協力して防衛します。他にも、結構気楽な団で、冒険者と一緒に活動することもあるんですよ。機動力が求められるので、全員馬に乗れる騎馬軍団なのが特徴ですかね。敵に突っ込む重装騎兵が主体ですね」
「勇気のある騎士団ですね。ところで、騎士団は貴族だけなのですか?」
「そんなことはありません。平民でも騎士団に入れますよ。特に第三騎士団には、平民出身者が多いですよ。一応、実力主義と言われています」
「それで、冒険者ギルドにいらっしゃったんですね」
「ああそうです。あの時は助かりました。一緒に討伐へ行った冒険者が、かなりケガをしまして、回復薬も不足しているため、困り果てていました」
話をしているうちに、お店に着いた。
明るく少ししゃれた落ち着いたカフェといった雰囲気の店で、私も入りやすい店だった。気を配ってくれたらしい。
奥の個室に通された。
食事は、よくわからないので、お任せした。
前菜が3品。どれも新鮮でおいしかった。スープはカボチャのようだった。メインは肉の煮込みでシチューのような感じだった。柔らかくておいしかった。食後にお茶とケーキが出た。お茶を飲みながら「いろいろ」な事を話してくれた。
「いろいろな事をお話してくれるとおっしゃいましたけれど、どんな事なのですか」
「そうですね。まずひとつめは派閥の話です。わが国には大きな派閥がふたつあります。貴族派と国王派です。それが対立しています」
「なるほど、国を二分しているのですね」
「そうです。貴族派は、貴族の力で魔物と対応するという考え方です。教皇様が聖女学院を創設して貴族出身の聖女を増やし回復魔法を習得させています」
「では国王派はどう違うんですか」
「国王派は、国王のもと全国民で魔物に対応するという考え方です。国王が統率した騎士団と平民の冒険者が協力して動きます。全国民が通える王国学院はこちらの派閥です」
「私の家は貴族派ですか?」
「はい。サリー様は、グレアム伯爵様は貴族派の有力者の一人です。一方私は国王派ですね」
「貴族派は、政教一体をめざしていて、国王派は政教分離しているわけですか」
「おお、なかなか難しい事を知っていらっしゃいますね。その通りです。貴族派のトップは教会の教皇様になりますね」
「もしかすると、薬師ギルドと冒険者ギルドも派閥争いに関係しているのですか?」
「またも鋭いですね。薬師ギルドは貴族派、私がいた冒険者ギルドは国王派ですね」
そうか、薬師ギルドの魔法薬作成キットがとても高くても、貴族に売れればいいと考えているのか。もともと貴族の薬師が少ないから、回復薬も少ししか出回らず、冒険者や第三騎士団が苦労していたのか。
「ところで、本当にサリー様は、記憶を無くされたようですね。ここまでの様子からもよくわかりました」
さすがの洞察力だけれど、本当の事は言えない。私は心の中で謝った。
「はい。全く記憶がないのです」
「だとすると、なぜ私があなたを助けに行ったのかも知らないのでしょう」
「え! どういうことですか」
「私とあなたは『幼なじみ』ですから、子どもの頃からの知り合いなのですよ」
「えええ!」
衝撃の事実に、驚きすぎて大声を出して、口をパクパクさせてしまった。
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