第8話 魔法を使ってみた
「えい」
「やあ」
「とう」
「まだまだ」
次の日の早朝から、私は格闘術の訓練を始めた。師匠はもちろんスーパーメイドのセリーナ。
残念ながら回復薬づくりはまだできない。研究所が出来るのはまだ数日先だ。
「お嬢様は、なかなか筋が良いですね」
「そう言われてもセリーナには全然当たらないじゃない」
「当たり前でございます。今日始めたばかりのお嬢様に一本取られるわけにはまいりませんから」
「でもくやしいじゃない」
「まだまだこれからですよお嬢様」
「全然当たらないけれどやっぱり格闘術でいいのよね? 剣とかカッコイイけどどうなんだろう」
「そうですね。お嬢様は普段何も武器を持っていませんから、間違いなく格闘術がいいと思いますよ」
「なるほど、そういうことね。それから、私、身体強化も使えるみたいなんだけど、格闘術にも応用できるのかな」
「もちろん使えます。格闘術が生きますよ。身体強化すれば魔物も狩れます。やって見せますか?」
「おおすごい! 魔物も狩れるのね。ぜひ身体強化の仕方も教えて」
「私の場合は、魔力を全身に行き渡らせてから全身を包み込むようなイメージをしています。こんな感じです。まず集中します。そして『身体強化』」
セリーナが『身体強化』と声を発した瞬間、なんとなく体が硬くなったように見えた。体の周りにはかすかな光が見える。まるで光をまとっているようでかっこいい。
「私もできるかな。 魔法はイメージが大事なわけね」
「そうです。そうです。イメージが大事です。それから集中も大事です」
私は、体の中の筋肉繊維一本一本が強くなるイメージをする。すると、体の中にある魔力を感じたので、全身にめぐらせて身体を強化していく。次に、皮膚から魔力を出して、ラップみたいに体を包んでいくイメージをする。
「お嬢様、なにか金色のベールみたいなものに包まれているような気がします。成功していますよ」
よし、じゃあ、テーブルをコツンとたたいてみるかな。
こぶしを握って、隣にあったテーブルをコツンとたたいてみる。
――ドガン――
「ごめんなさい。壊す気はなかったのよ……」
「……お、お嬢様、テーブルが壊れたのは仕方ありません。ですが、力の加減はだんだん覚えましょう……。それより、最初からできたのはすごいです!」
ほめてくれるセリーナだけど、またやらかしてしまった事に冷汗が出た。
「えへへ」と笑ってごまかした。
ここは、命の危険がすぐそばにある世界だ。できるだけ自分の身は自分で守りたい。毎朝、訓練を欠かさないようにしようと心に誓った。
朝食後は生活魔法を教えてもらうことにした。
「生活魔法を全部教えてくれないかしら」
「お任せください、お嬢様。私の使える魔法は、クリーン、ウオーター、ファイア、ライトです。まず、見て覚えてください」
次々と繰り出される魔法がとても美しく、思わず目を見張ってしまう。しばらく見ていると、水が出たりするのは、両手からだと気づいた。これはイメージと関係しているのか気になった。
「セリーナが見て覚えてって言ったのは、やっぱり、魔法はイメージが大事だからでしょ。だったら、魔力ってどこからどう出て来るイメージをしているか教えてくれる?」
「私は体全体の魔力がどんどん両手に向かって集まって出て来て、両手の手の平から出てくる感じをイメージしています」
なるほどとうなずいてクリーンを汚れた布にかけてみる。
イメージは洗濯機の中の汚れが繊維から取れていくイメージと、漂白剤の酸素が菌にや汚れにとりついて壊していくイメージを重ねる。
(きれいになれ)と願うと、金色の光が手のひらからボワンと出て、きれいになった。
これは、女神さまの加護が大きいと思ったが、それは黙っておくことにした。
「お嬢様、最初からできるのはすごいです。それに金色の光ってなんですか? 私とは全然違う魔法なのに、それでもきれいになっているからクリーンができているようです」
セリーナの感想を聞きながら、次はウオーターをやってみる。
水素と酸素の結合した分子レベルの水のイメージして、それがとてもたくさん集まるイメージをする。
(水よ出ろ)と願うと、金色に光る水がちょろちょろと出た。
「水が金色に輝いて見えます……?。お嬢様、これも私とは違う水ですが、もっと神聖な気がします」
セリーナの話は聞き流して、次はファイアをやってみる。
空気中の酸素がたくさん集まってゴーっと燃えるガスバーナーをイメージする。青い炎の方が高い温度だからだ。
(炎よもえろ)と願うと、青くて外側が金色に輝く炎が手の平から先に出た。キャンプのガストーチみたいだ。
「青い炎は不思議です。その外側に金色の炎がとりまいて見えるのはもっと不思議に思いますがファイアですね」
最後にライトもやってみた。
これは、白色発光ダイオードの強烈な光をイメージしてみた。
(光れ)と強く願うと、強い金色の光を出す玉が空中に現れて輝いたがすぐ消えてしまった。
「とても強い光ですが、これもライトですね。長く光るといいですね」
あまりに強い光に、アハハ……と乾いた笑いをしてから、今日は疲れたからこれくらいにすると言って終わった。
実はもっと魔法を練習してみたかったのだが、あきらかにセリーナと違う結果にあせったのだ。
研究所が出来る前に、狩りと採集に行って素材集めをしておこうかな。そう考えた。
――――――――――――
名前:サリー・グレアム
スキル:基礎魔法
スキル:聖魔法Lv99(身体強化、バインド、バリア)
スキル:格闘術Lv10(新)
スキル:調合Lv99(初級回復薬)
スキル:科学魔法Lv99(未)
スキル:探知Lv99
ギフト:女神フリーディアの加護(空間収納、科学魔法創造、スキル習得率大幅増加)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます