第21話 森に閉じ込められた真実
ユカリは当時の様子を彼女なりに鮮明に語る。
「あたしはバルドおじちゃんに召喚された」
「何っ、フォーリア国王が召喚したんじゃねぇのか!?」
いきなりど肝を抜かれるノエル。
「すぐに国王さまがお部屋にはいってきて、これは一体どういうことだーって、バルドおじちゃんとけんかしてた」
「つまり黒幕はバルド宰相という訳ですね……」
と、エド。私もそう思う。
「でも、バルドおじちゃんは、おとなりの“ろーろんす”?」
「ローレンツな」
ノエルが即座にツッコむ。
「そうそう、ろーれんつが意地悪しようとしてるから、さきにこっちが意地悪するんだってゆってた」
「そんな馬鹿な……うちの王国が戦争を仕掛けようとしてたなんてそんなはずありません」
と、エド。
「でも……バルドおじちゃんはそういってたもん……ユカリうそついてないもん……」
ユカリはそう言って涙目になる。
「あぁっ、ごめんなさいユカリ。あなたが嘘をついているとは思っていませんよ。バルド宰相が嘘ついてたんだなぁって話です」
エドは必死に言い訳をして、ユカリの頭をヨシヨシしていた。
彼に頭を撫でられたのが嬉しかったのか、ユカリはすぐに泣きやんでまた話し出す。
「国王さまとバルドおじちゃんは仲直りして、ユカリの石にしちゃう力のはなしになった。ユカリが身体の中の“ぱわー”を“えいっ”てすると目の前のイスが石になっちゃった」
「ユカリのスキルは魔力を使うのが発動条件なのですね」
と、エド。
「バルドおじちゃんは意地悪するおじさんとおばさんをみんな石にしちゃえって言ってたけど、ユカリは人が石になっちゃうの、怖かった。だからイヤだって言ったら、バルドおじちゃんにぐるぐる巻にされてうごけなくなって、それから痛いこといっぱいされた」
「まさか……改造……!」
私は血の気がサーッと引いていくのを感じた。
「くっ、バルド……ヤツには人の心がないのか……!?」
エドは悔しそうに拳を握りしめる。
「それからはユカリ、イヤだって思ってるのに勝手にぱわーが飛び出てきて、みんな、みんな石になっちゃった……! ノエルのパパとママも……ユカリが石にしちゃった……ごめんなさい……ごめ……なさっ……うぅっ、ひっく、ひっく……」
「ユカリ……!」
私が彼女を抱きしめようとすると、先に彼女を引き寄せたのはエドの方だった。
「ユカリ……大丈夫ですよ……ノエルは怒っていませんよ……」
エドはそう言って彼女をキツく抱きしめる。
ノエルはそんな彼女を見て、ただただ涙を流していた。
私は彼の涙は初めて見たので、彼の中でも色々葛藤があり、悩んできたことが伺えた。
それから皆で涙を流し、エドはユカリが落ち着くまでずっと抱きしめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。