第16話 高まる欲求
ノエルは美味しそうな動物のお肉を大量に持ってきてくれたため、私とオスカーは久々にお肉を堪能した。
残りも燻製や冷凍など日持ちのする処理をして保存しておいた。これでしばらくはお肉にも困らなさそうだ。
そしてノエルは休憩の様に数日滞在すると、またフォーリア王国へと戻っていった。
オスカー2人で海岸で彼を見送りながら、私は口を開く。
「ノエルはただ情報屋って訳じゃないんだね」
「あぁ、ノエルは、俺の王族時代の騎士団長の家系、ガルディウス公爵の御子息だったんだ。ノエルのお父上、つまりガルディウス公爵が当時の騎士団長であり、お母上が副騎士団長だった」
「すごい、ご両親で……」
「あぁ、でもあの日、彼のご両親は王都を守るため出陣し、殉職なされた」
「石に……?」
「あぁ……」
「そっか……」
私はノエルに対してはあまりその話をしないようにしようと思った。
「それから彼は、俺の弟らが当初いた孤児院で育ち、弟らの貴族復帰の際にノエルにも打診があったが、彼はそれを辞退して俺を裏から支えてくれる道を選んだんだ」
「そうだったんだ……通りで、お互い信頼し合ってるなぁって」
私はその関係を少し羨ましく思った。私には、そういう人がいなかったから……。
「おっ、妬いたか?」
「えっ!? ……うん、少し……」
「……っ! そうか……」
私はオスカーの思ってもいない問いに戸惑ったけど、正直に自分の気持ちを打ち明けた。
オスカーもそう返ってくるとは思っていなかったようで驚いていたけど、彼は辺りをキョロキョロとして何かを探していた。
「どうしたの?」
「ここにはないな……エマ、別荘に戻ろう」
「? うん」
オスカーは別荘に入るとキッチンで鍋つかみを右手にはめていた。
「何……してるの?」
「これなら……触れられるかと思って……」
「え、私を!? まさか触ってみようとか思ってる!?」
「あぁ……ダメか?」
オスカーはそう言いながら鍋つかみをパクパクさせて私へと詰め寄ってくる。
「だ、ダメだよ! 呪いが発動しちゃったらどうするの!?」
「その時は……ノエルを頼む」
「ダメ! 絶対ダメ!」
私はそう言って猛ダッシュで部屋の隅へと逃げる。
「ははっ、今はお前が男性恐怖症みたいになってしまっているな」
オスカーはそう言いながら逃げる私へと迫ってくる。
「いやだ……オスカーが石になっちゃったら嫌だよ……」
私はこらえ切れずにその場にうずくまり大泣きする。
そんな私を見てオスカーもようやく諦めてくれたようだ。
「エマ……すまん……俺が悪かった……」
オスカーは鍋つかみを外すと私の前であぐらをかき、もどかしそうに私が泣き止むのを見守ってくれた。
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