第9話 召喚者の行方

 翌日。自分の作った小屋で死んだように眠りスッキリした私は、鍋をクラフトして外の焚き火でスープを作った。


 料理の知識なんて全くなかったため、ノエルが一から全て教えてくれたのであった。


 そしてオスカーは朝から槍を片手に素潜りしており、水を滴らせながら上裸で獲物を持ってくる。


「いやぁ、これなら釣りに反応しない生き物も捕れていいなぁ」

 オスカーはそう言って外のキッチン台へ魚や貝をドカッと置いた。


 その瞬間私はオスカーの方を見て、その筋肉隆々の引き締まった身体をガン見する。

「わっ……オ、オスカー!?」

 自分でもボンッと顔が一瞬で沸騰するのが分かる。


「あっ! す、すまない……! すぐに着替えてくる……!」

 オスカーもようやく女子へ上裸を晒したことの恥ずかしさを知り、小屋へと駆け込んでいった。


 そんな私たちを見てノエルはやれやれとため息をついていた。



⸺⸺


 気を取り直して朝食を終えると、ノエルは情報収集のために潜水艇で王都へと戻っていった。


『お前ら2人残していくのは不安しかねぇけど、まぁなんとか上手くやってくれ』

 とのことであった。



 オスカーと2人っきりの孤島生活。 

 私は気を紛らわすため、寝て全回復したMPを使って、どんどん便利アイテムをクラフトしていく。

 今まで焚き火で暖や灯りを取っていたのも、かまどや暖炉、照明などをクラフトして一気に快適にしていった。


 しかもこの世界には電気という概念がなく、照明などは“魔導まどう”という技術を使って空気中に大量に含まれている“マナ”を燃料に動かすことができるため、こんな孤島でもライフラインは余裕である。


 小屋の前のテーブルでホッと一息つく。すると、材料調達から帰ってきたオスカーも向かいに座り一息ついていた。


「オスカー? 昨日のことで気になってることがあって……」


「あぁ、続きを話す約束だったな」


「あ、それもそうなんだけど……。召喚されたその子って、どうなったのかなって……」


 私がそう尋ねると、オスカーは一瞬目を見開き驚きをあらわにしたが、すぐに冷静に戻り、答えてくれた。


「彼女は処刑された……はずだったのだが、どうやら王都から北の森でひっそりと生きているらしい」


「そっか……。王都を滅ぼしちゃってるからしょうがないかもしれないけど、勝手に召喚されて、もし無理やり力を使わされたんだとしたら、挙げ句の果てに処刑って……可哀想だな……」


「そうか……無理やり力を使わされた……そういう解釈もできるんだな」


「あ、でも違ったらホントに悪いことだし、被害にあったオスカーにとっては不謹慎だったかも……ごめんなさい」


「いや、もちろん当時の俺は彼女をめちゃくちゃに恨んでいた。でも今となっては、もし彼女がエマのような人格の持ち主なら、そんな大量殺戮のようなことを進んでするはずがない。だとすれば、改造されて精神を支配され、無理やり手を下した可能性だってあるな」


「そうだったら……可哀想、だよね……?」


「あぁ、お前の言うとおりだ。もし“あの時”の俺にそう言う広い視野があって、彼女への歩み寄りを見せていれば……」


「ん? 何の話?」


「あぁ、いや、そうなれば俺も彼女のことを恨まなくてすんだな、と……」

 そう答えるオスカーは少し動揺していたけど、私は不思議に思いながらもその先は聞かずにいた。


「そうだよね、恨むのも辛いもんね……」

「あぁ……」

 

「私だって、オスカーみたいに助けてくれる人がいなければ、もしかしたら兵器みたいなのいっぱい作らされて、その子と同じようなことしてたかもしれない……そう思ったら、怖いよ、すごく……」


「エマ……」


「あれ? でも待って?」

 私はあることに気付く。


「ん?」

「召喚って、禁止されてたんじゃないの?」


 オスカーはうんとうなずく。

「気付いたか。じゃぁ、昨夜の続きといこうか」

「あ、そうだ。フォーリア国王のお話」

「あぁ……」

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