ダンジョンを創るぞクソゴブリン!
トマトとタケノコ
第1話 魔術士とゴブリン
「ダンジョンを創るぞ!」
「急にどうしたんすかオヤビン。」
「急ではないぞクソゴブリン!私はダンジョンを創るために今まで魔術の研究を重ねてきたのだ!」
「おやそうだったんですかい?てっきりいつも遊んでいるかと思ってたでやんす。」
「貴様は今まで何を見てきたんだドアホ!色々とやってきたであろうが!例えば召喚術でスライムを…。」
「ああ、召喚術で大量のスライムを出して部屋をめちゃくちゃにしたり、丁度繁殖期で気が立っているミノタウロスを出して死ぬほど追いかけられて大変でやんしたね。」
「ドアホ!わざわざ失敗談を言うな!」
「成功なんてしましたっけ?」
「召喚できただけで成功なんだ!」
「成功判定ゆるいっすね。1流の召喚術士の話では使役まで出来て1人前とからしいでヤンスよ?」
「ふん!そんな運が良かっただけの話なぞ鵜呑みにするな!」
「そんなことないと思うでやんすけどな〜。」
「ぶつぶつ言うなクソゴブリン!それに召喚術以外にも私の土魔術の凄さと言ったら…。」
「家の土壁を脆くしちゃって大崩壊させたでヤンスよね~。あのときばかりは生き埋めで死を覚悟したでヤンス。」
「またしても失敗談を話すなドアホ!私のお陰で助かったくせに!」
「…オヤビンのせいで死にかけたでヤンスけどね。」
「何か言ったかクソゴブリン!」
「何でもないヤンスよ~。ところでオヤビンは支配系の魔術は研究しないでヤンスか?」
「支配系魔術だと?」
「そうでヤンス。オヤビンが持っているエ○本の中に出てくるダンジョンは…。」
「貴様何を勝手に私の私物を漁っているのだ!」
「あんなに堂々と机の上に置いてあったら見るに決まっているでヤンス。そんで話を戻すとダンジョン内にはモンスターがはびこっているでヤンスよね?」
「うむそうだ。ダンジョンって言ったらモンスター。これはド定番だ!」
「でもオヤビン腕っぷし弱いからモンスターを使役できないっすよね?基本おいら達は弱い相手には従わないですし。支配系の魔術とかで操らないとオヤビン殺されるでヤンス。」
「ふん。私には秘策があるから使役なぞしなくても問題ない!それに支配系の魔術は高度中の超高度の魔術だ!そんなもん研究してるだけで老いて死ぬわ!」
「そうなんでヤンスか?エ○本だとみんな普通に使ってるでヤンスけど。」
「フィクションと現実を一緒にするなドアホ!あんな風にヒョイヒョイと誰でも支配魔術を使えたらこの世が終わっとるわ!」
「それもそうでヤンスね。それで秘策とはなんでヤンス?」
「クックック教えて欲しいかゴブリンよ?」
「んじゃ結構でヤンス。まだ掃除も途中でしたし。」
「ドアホ!そこは教えを請え!そして聴きながら掃除をするのだ!」
「そんな器用なことできないでヤンス。なので掃除が終わった後に聞いてあげるでヤンスね。」
「ドアホドアホクソゴブリン!掃除を後回しにして先に聞け!」
「わかったでヤンスよ。オヤビン秘策とはなんでヤンスか?」
「クックック。どうしても聴きたいかクソゴブリン。」
「………。」
「よし分かった話してやろう!まず私は土魔術を駆使し地下洞窟ダンジョンを作ろうと思っている。」
「素人が地下掘削なんて危ないでヤンスよ?」
「うるさい黙っておれ!…それでだ。地下最奥部に召喚場作りそこでモンスターどもを召喚する。」
「ほうほう。」
「それでダンジョンの入口にはモンスター除けの香草を植えまくる。」
「え〜あれっすか。あの香草の匂い嗅ぐとめっちゃ気持ち悪くなるでヤンスから辞めてほしいでヤンス。」
「貴様の意見なぞ聞いとらんわドアホ!」
「酷いでヤンス。鼻栓でも作っとくでヤンス。それで香草植えてどうするでヤンス?」
「どうもこうもないわドアホ!これで終わりだ。」
「終わり?」
「入口に香草があればダンジョンから逃げ出すことはない。基本的にモンスターは人を見たら襲いだすから、わざわざ使役して命令しなくともダンジョンに人が侵入すれば勝手に撃退してくれるってわけだ。」
「いやいやだから先ずオイラ達が襲われるでヤンスって!召喚した瞬間にモンスター達に!」
「クックック。そこだよクソゴブリン。私は遠隔でモンスターを召喚するのだ!安全な地上からでね。さすれば襲われる心配は何もない!使役する必要は何もないのだ!これが我が秘策よ!」
「…なるほどでヤンスね。オヤビンはなかなか冴えているでヤンス!でも秘策というからもっと凄いのを期待していたでヤンスけどなんか普通でそこはガッカリでヤンス。」
「1言余計だクソゴブリン!普通のことでも気付けるか否かが天才と凡人を分けるのだ!」
「オヤビンは自分のことを天才とでも?」
「ドアホ!私が凡人であってたまるか!」
「わりと抜けていると思うでヤンスけど。」
「ゴブリンにはわかるまい。人の才ってやつが。」
「そうでヤンスかね?…ところで何でオヤビンはダンジョンを作りたいのでヤンスか?」
「そんなのこの世界にダンジョンが無いからに決まっとるわ!」
「?。ダンジョンはあるでヤンスよ?」
「あるにはある!しかしそれらは深い森とか高い山々とかだ!私の求めるダンジョンではない!」
「地下ダンジョンが好みヤンス?」
「別にそういう訳では無い。しかしだ。せっかく魔法やらモンスターやらがいる世界に転生したのに、魔王みたいな世界の脅威は無いし、古の神々が眠る古代遺跡もない。あるのは未開拓の森と山だけで全くもってつまらん!」
「そういやオヤビンは転生者ってやつでやんしたね。つまらんからダンジョンを創るってオイラにはよく分からないでヤンス。」
「この気持ちはゴブリンでも人間でも転生者にしかわかるまい。」
「そうでヤンスか。」
「という訳でだ!早速ダンジョンを創り始めるぞ!」
「ちょっと待つでヤンス。2人でやる気でヤンス?」
「ドアホ!当たり前だ!他に誰がいる!」
「流石に2人はキツイでヤンス!そろそろ仲間を増やすべきだと思うでヤンス!」
「…わかった。ダンジョン製作中は掃除は免除してやろう。」
「そんなの微々たるもんでヤンス!オイラと同じゴブリンでいいから召喚するでヤンス!」
「ええいうるさい!クソ低能ゴブリンなんぞ増えたところで使い物にならないではないか!」
「オイラと同じく知能向上の魔術を掛けてやればいいでヤンス。オイラはオヤビンの魔術の中でこれだけは手放しで称賛できる魔術だと思うでヤンス。この魔術のおかげ喰って寝ることだけが楽しみだったオイラが話せるようになるし、手先も器用になるしで色々な楽しみを得ることができるようになったでヤンス。オイラはオヤビンにめちゃんこ感謝してるでヤンス!」
「ええい感謝しているなら行動で表せ!ダンジョンを作りをつべこべ言わずに手伝うのだ!」
「それとこれとは話が別でヤンス!過重労働で死ぬでヤンス!さっさと新しい人手を召喚するでヤンス」
「ドアホ!知能向上魔術はそうやすやすとできる魔術ではないのだ!私が長年の研究で編み出した魔術を称賛したことは褒めてやる!だかあの魔術は値の張る薬草を準備しなければならんし、手間も掛かりすぎるのだ!実験で無ければお前のようなゴブリンになぞ使用せんかったわ!」
「酷い言われようでヤンス!…あの魔術ってそんなに大変でヤンス?」
「そうだ。だがその分効果はてきめんだ。ゴブリンではなく人間に使えばその時代を席巻できるような大天才を生み出すことができよう。」
「そんなに凄いでヤンスか!…でも何でオヤビンは自分自身に使わないでヤンス?」
「くっ痛いところクソゴブリン!あの魔術は被対象者の意識を閉じてから行うから自分自身では行えんのだ。自身にやるには他人にこの魔術を教えてやって貰うしか無い。しかしこの魔術を他人に教えれば私の研究成果を横取りされるに違いない。故に私自身には知能向上魔術を使えんのだ!」
「そういう事情があったでヤンスね。てっきり気が付いていないアンポンタンかと思ってたでヤンス。」
「ドアホ!そんな訳があるか!」
「でもどうして強いモンスターに使わないでヤンス?」
「貴様我が説明を聞いてないのか?魔術を掛けるには被対象を眠らせねばならん。」
「あっ。殺さずに眠らせられる程の力量差があればそもそも使役ができるのか。」
「それもあるがそういうわけではなく、使役できたとしても知能を上げれば、ポンコツなゴブリンならともかく元よりある程度知能があるモンスターなら強い上に賢くなって手におえなくなる。」
「オヤビン抜けてるところがあるから、いつ使役を越えて反逆されるかわかったもんじゃないでヤンスね。あっオイラは知能を上げてくれたことに感謝してるでヤンスから反逆とかしないでヤンスよ?」
「ドアホ!いくら戦闘が苦手な私でもクソゴブリンになぞ遅れをとるか!」
「そうでヤンスかね?今まで過ごしてきていくらでも命を穫れるチャンスはあったでヤンスよ。」
「よし今から貴様を殺す。」
「だからそんなことはしないって言ってるでヤンスよ!チャンスがあったけどしなかったことが証明でヤンス!」
「まぁいい。そんなことよりもダンジョン製作だ!やるぞクソゴブリン。」
「へ〜い。程々に頑張るでヤンス。」
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