第16話 ジローの生態

「ふぃ~。お腹一杯デス。非常にへんな食べ物でしたがありがたくいただいたデス。」

 腹が膨らんで、寝転がりながらすこし苦しそうにつぶやくジロー。そのお腹は大きな風船をスーツの下に仕込んだのかと思うほど膨れていた。


「ごちそうになっておいて、相変わらず失礼だな」


 ジローのヘルメットの中身に興味深々のノヴァだったが、食事をするために前面のガラス部分が収納されて、その中身があらわになったときには驚いた。

 なんと、その中身もヘルメットに映っていた髑髏顔そのままだったのである。

 どうやらダミーの頭部を写すホログラムを展開することで素顔が隠されているようだった。


 どうして髑髏のホログラムで素顔を隠すのかジローに尋ねたところ恥ずかしいからという理由しか返ってこなかった。


「3日分の食料が一度に消費されました。」

 思わず「え!?」と愕然とするノヴァ

「私の体はエネルギーの消費が激しいのでい~っぱい食べなくてはいけないんデス」

 まったく悪びれる様子のないジロー

「お前、食いすぎで故郷から追い出されただけなんじゃないのか?」

 宇宙活動において食料の確保はなによりも重要な事柄である。

 もしこのままのペースでジローが食料を消費し続けたら、すぐに底をついてしまう。


「いや~、そんな風にほめられると照れるデス!」

 まったく意に介す様子がないジロー


「ほめてない。」

 飽きれるノヴァ


「そんな量を一度に食べられるなんてほんとにお前人間か?スーツを脱いだら、タコ型生物でしたなんてことないだろうな?」

 以前、そんな内容の映画を見たことが頭をよぎる。


「おかしな質問デスねぇ。これでも私は正真正銘の人間デス。ただ、体が少し、・・・そう、半分くらいがサイボーグなだけデス。」


「サイボーグ?じゃあ、体の半分が鉄でできてたりするの?」


「チッチッチ、そんなちゃちな物ではないデスよ。”バイオメトリックメタル”、有機物と金属の中間的な素材を使っているデス!」


「聞いたことない素材だ」

 名前から察するに金属の強靭さと有機物の柔軟性を併せ持つような素材だろうかと想像する。



 エンジニアとしてじっくりと調べてみたい気持ちが湧いてくる。


「そんなわけで、肉体労働なら任せるデス!」


「当然だ!食べた分はしっかり働いてもらうぞ!」

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