SPACE ROMANCER(スペースロマンサー)

@machina_sf

第1話 ロマンの始まり

宇宙。

それは想像を絶するほどに広大で深遠な世界。


人類は常に驕りをもつ。

「宇宙の謎はほとんど解明した、未知などすぐに消え去るだろう」と。


果たして本当にそうだろうか。


答えは”否”。

人類は広大な宇宙のほんの一部に触れたに過ぎない。そう、ゆりかごから顔を出した程度のものである。


人類は、宇宙の始まりを知らず。宇宙の存在理由を知らず。生命の存在意義を知らず。知性の意味を知らず。


この宇宙には、まだ見ぬ知識がある。まだ見ぬ原理がある。まだ見ぬ神秘がある。まだ見ぬ世界がある。


人類よ、立ち止まることなかれ。

世界には無限の冒険が待っている。


人類に”ロマン”あれ。__________________________________________________________________________________


〈西暦3000年ごろ〉


天の川銀河内の太陽系からはるか遠くの宇宙空間


プシュン!


一隻の宇宙船がワームホールを抜け出現した。


太陽系の人類は宇宙を遠くまで探索するための手段として、”ワープ航行技術”を完全な形とはいえないまでも、実現させていた。

これにより光の速さでも何年もかかる旅路をかなりの時間短縮することが可能になっていた。


現れた宇宙船は、戦闘機を彷彿とさせるスタイルを基に、宇宙航行に適した設計で構築されていた。

流れるような流線型のシルエットが特徴的であり、宇宙空間を滑らかに切り裂くよう移動できるよう設計されているように思われる。

船体は長期の宇宙探査が念頭に置かれ、コクピット、居住区域、研究施設、格納庫など、複数の機能区画を備えるようなサイズを誇っていた。

前部に位置するコクピットは宇宙を広く見渡せるようになっており、船体に沿って後方に角度をつけて伸びる翼と一体となっている大型エンジンは強力な推力を生み出し、機動性とスピードを象徴している。

全体にダークな色合いを基調としており、それは製作者のデザイン意匠であると思われる。さらに、船体のラインや特徴を際立たせるためのコントラストの効いたハイライトが施されている。

太陽系文明において10人程度の中規模部隊が用いる量産型機体「スターレイ」をベースとして、よりシャープなフォルムとなるような独自のカスタマイズが施されていたものであった。





宇宙船は、数秒間宇宙空間を漂った後、ボウッと音を立てロケットを噴射し、目的の惑星に向かって推進を開始した。


一方、宇宙船の中には人の姿はなく、静けさに包まれていた。


船内はいくつかの区画に分かれており、その中の一室では、内部が2層になっている円筒上のマシンが横たわる形でフロアを占拠していた。

フロア内はシンプルすぎるといえる内装で、白色で凹凸のないなめらかな壁が四方を囲んでいた。

円筒上のマシンは、”コールドスリープマシン”である。この装置は、改良された液体窒素と特殊な化学薬品を含んだ薬液を用いて、使用者を”冷凍”することで長期間身体活動を抑制する。

使用者はその間は細胞分裂など生命活動が停止するため、老化しない。

また、本人は意識を失っているため、体感時間としては、時間の経過を感じない。

理論上は遥か未来まで一瞬で行くことができる。ただし、戻ることはできないが・・・。



そのコールドスリープマシンの内側の層にはゼリー状の液体が充満しており、中には一人の人間が眠っていた。




「目標の恒星系に到着しました。コールドスリープを解除します。」と室内のスピーカーからコンピュータ音声と思しき無機質な声が響く。




プシューッという音を立てて、コールドスリープマシンの起床プロトコルが実行され、空気が漏れる音とともに、中の液体が輩出されていく。


その後、装置の上側を覆うガラス部がスライドし、上部が開いた状態になる。


コールドスリープマシンから立ち上がるのはこの宇宙船の唯一の乗組員【ノヴァ】

「いやぁ、よく寝たぁ」


「コールドスリープ開始から5年5か月12日が経過しました。

目標惑星には7日後に到着予定です。」

とコンピュータの音声が告げる。


ノヴァはスリープ明けには毎回頭がぼーっとする感覚に陥っていた。


夢と現実のはざまにいるようで、けだるさを感じる体をどうにか奮い立たせコクピットに移動する。室内は歩き回るのに支障はない程度の広さが確保されていた。

コクピットにある椅子は一つのみであり、この船が一人での操縦を想定されることが読み取れた。コクピット席の周りには様々な機器やメーターが、機体の状態や周囲の状況を表している。


ノヴァは、コクピットに設置されている冷蔵庫から牛乳瓶状の容器に入っている白色のドリンクを取り出すと、腰に片手を当てながら、ぐびぐびと一気に半分ほど飲む。



「ぷはっ。やっぱり、スリープ明けはこれに限るね!」


再び牛乳瓶を口に当てた瞬間、ズドンッ!と船に何かが衝突した。


「ぬうっ!?」

衝撃は船内にも伝播し、牛乳瓶のドリンクがビシャリとノヴァの顔にかかる。


衝突した物体を確かめる間もなく、宇宙船はコントロールを失い、最も近い惑星。赤茶色の星に吸い込まれるように落下していった。



_________________________________________

~あとがき~

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