第21話 聖女アオノ
先ほどアオちゃんの無事が確認できたら気が抜けてしまい、吸い込まれるように目を閉じたことまでは覚えている。気がついたら、この平原だ。
アオちゃんはどこだ? 私だけこんな場所に来てしまったのか? まさか死んだなんてことはあるまい。
「聖女様!」
「ああ、なんとお美しい……」
どこかのライトノベルの魔術師みたいな人が私を取り囲んでいる。
「貴羽……?」
すぐ後ろから怯えたようなアオちゃんの声がした。近くにいたようでホッとする。寝ていたのかは知らないが、この状況の理解度は私と同レベルのようだ。
運が良いのか、悪いのか。アオちゃんが一緒のようだ。きっと夢であってくれ、と思うものの、夢だろうがなんだろうが、姿形がアオちゃんである以上、不安にさせるわけにはいかない。
「あなたたちはどちら様でしょうか。私たちに何をしたのですか」
私が、アオちゃんを守らなくては。そう思い前髪を撫で付ける。分厚いメガネも安心感を与えてくれた。
「あなたに用はないよ。僕らは聖女様に用があるんだ」
一番身なりの良い金髪碧眼の男性がこちらにやってくる。
聖女。そう呼ばれるあたり、悪いことは起きない気もするが、ここでの聖女がどう言う役回りかわからない以上、アオちゃんを差し出すわけにはいかない。金髪碧眼の言葉から考えるに、私が聖女であることは無さそうだ。アオちゃんを差し置いて私が聖女なんて呼ばれる状況は許容できない。
「説明を」
気を強く持って、金髪碧眼にいう。後ろからアオちゃんがそっと出てきた。
「アオちゃん危険です!」
「聖女とは、なんですか? 私が聖女、なのですか?」
潤んだ瞳はどこか喜色をはらんでいる。
――アオちゃん?
金髪碧眼は、アオちゃんに目を止めると、ハッと息を飲む。そして先ほどの私への対応とはかけ離れた、優しい声音と微笑みで説明を始める。
「失礼いたしました聖女様。我々はこの世界の均衡を保つヒストリア王国の者です」
説明を要約すると。
この世界にはいくつかの国があり、聖獣の住む森や海、そしてそのどこかにエルフやドワーフといった魔人の住む場所がある。
ヒストリア王国はそんな人間、聖獣、魔人の関係を保つ役割がある。
近年、魔王が現れ、魔物を生み出し、引き連れて人間から聖獣や魔人まで。世界中で被害を出しているそうだ。そのため、各国から助けを求める声が上がってきているらしい。
予言書によると、魔王が現れると異世界から特別な能力を持った人間、勇者や聖女が、このヒストリア王国のどこかに現れるとある。そこで国中探し回ること半年。ようやくアオちゃんと私が現れた。
と言うことだ。
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